表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遊戯開始  作者: 羽ぐいす
1.出会いと成長
46/106

蹂躙


 【ログイン26日目】※ゲーム内時間換算(19日)



 それは草原エリアに入った時だった。

 俺は《念力》で街を飛び越え、外壁を廻ろうとしていた。


 掲示板にはレイクさんからの救援要請もあり、急いでいたのだ。

 

 そんな緊急時だった。

 マーナさんから驚くべき内容の《念話》が届いたのは。


 

 『森エリアに多くのプレイヤーが来るようなのだが、私はいま手が離せない。サクヤに対処を任せるからよろしく頼む。ちなみに数は三十人くらいだろう』


 

 あなた、エリアボスの仕事サボりすぎじゃない?

 つい、《念話》で言いそうになる。

 ……危ねぇ。


 マーナさんにも事情があるのだろう、と思うことにする。

 それよりも対処がどうこうの話だ。


 森エリアに三十人のプレイヤーが来る、らしい。

 そして。なぜ俺がやらなければいけないのか分からないが、対処をしなければいけない。


 こんな時に……。


 しかも、まだ修行が終わって何十分も経っていないのだ。

 もう少し休憩がほしい。


 せめて、1日くらいは自由にさせて。

 俺はそう思った。しかし、直接言えないのが悲しい。


 そう思っていると、《気力操作》と《魔力操作》に反応があった。

 もう直ぐで到着するようだ。


 レイクさんともう一人の魔物プレイヤーの安全を確保しなければ。

 助けてほしい、と書いていたことから緊急なのが伺える。


 なので、俺は常時《魔力操作》《気力操作》を発動させていた。

 それぞれの周囲を感知することで、人がいるかいないか判別していたのだ。


 いくら俺の速力が高くなったと言っても、草原エリアは広い。

 こういう方法じゃないと見つけること自体が難しいのだ。


 俺は速力を全力にしている。

 まだ、自分の身体で走るには慣れが必要だが、《念力》を使っての浮遊ならば問題ない。


 例えるなら、乗り物に乗っているみたいな感じだ。

 ハンドルを切るだけで操作ができるのに似ている。


 目的の場所に着いた。

 しかし、そこにはプレイヤーがいた。

 

 なんと、スライムが攻撃されようとしている。

 俺はすぐに、プレイヤーとスライムの間に入った。


 速度調整をミスって、凄い音が出たのは許して。

 俺もかなり焦っていたのだ。仕方ないだろ。


 しかし、そのおかげでプレイヤー達の動きが完全に止まったので結果オーライだ。


 俺の後ろには魔物プレイヤーが二人いる。

 一人はスライムで、もう一人が……なんだこれ。


 それは色が付いた霧みたいだった。

 しかし、何故か魔物だと確信させられる何かがある。


 ……幽霊の類か?

 それを確かめるためにも軽く《鑑定》する。


 結果は予想通り。

 種族はゴースト。中々、癖のある種族だ。


 ちなみに名前はレイク。

 まぁ、それは知っている。


 もう一人の種族はスライム。

 名前は、マカというようだ。


 ネームセンス的に女の人だな。

 男でこの名前はいないだろう、多分。


 予想をつけた俺は、二人に話しかける。

 コミュニケーションは大切だ。


 

 「大丈夫ですか? 俺はサクヤって名前です」



 「私がレイクです。サクヤさん、言葉遣いは普段のにしてください。スライムの子はマカという名前です」



 「さ、サクヤ……さん?」



 「サクヤ、でいいよ。で、レイクさん。この状況は……」



 「私達が襲われる寸前でした。助けてもらい感謝です。この6人は倒してもらって構いませんよ」



 なるほど、把握した。

 このプレイヤー達は敵らしい。


 レイクさんに言われた通り、言葉遣いは直した。

 何となく、そっちの方がいいと思ったからだ。


 マカち……さんは未だに混乱している。

 まあ、逆に冷静なレイクさんがちょっとおかしいくらいだ。


 その証拠に、目の前のプレイヤーは完全にパニックだ。

 会話を聞くだけでわかる。


 これが演技だったら凄いけど。

 そんなことする意味もない。



 「お、おい! どーすんだよ! ヤバいぞ!」


 

 「と、とにかくやるしかない! 魔法をかけ直してくれ!」



 「き、聞いてねぇよこんなの!」


 

 「早く魔法をかけろ! 俺たちで仕留めるんだ!」



 リーダーらしき男が声をかけ、パーティが機能してきた。

 やっぱり、こういう役割の人がいないとなぁ。


 うん、素晴らしいパーティだな。

 どこ目線で評価してんだ、というツッコミはいらない。


 だって、素晴らしいパーティであることに変わりはないからだ。

 今も、後衛の魔法使いが前衛の剣士に魔法をかけている。


 見た感じ、俺も使っている《付与魔法》だ。

 それがあるだけでもう優秀だろ?


 剣士も、持っている剣はなんかカッコいいし。

 パーティ全体の装備はかなり良いな。


 《鑑定》でステータスを見た。

 まあ、レベル23、24、25が並んでいる。


 パラメータはそうでもなかった。

 一番高いのでも、俺のパラメータの10分の1だ。


 正直、俺が負ける要素はない。

 6人相手だが圧勝だろう。


 ここで、このプレイヤー達を粉砕するのは簡単だ。

 だが、そんな事はしない。


 何故なら。この後、森エリアのプレイヤー達の対処があるからだ。

 そして、俺は良いことを思いついた。


 レイクさんとマカさんを森エリアに連れて行く。

 そこで、試したいことを試す。

 ……危ないことはしないので安心して欲しい。


 これが上手くいけば戦力として、俺の助けになるかもしれない。

 そうなれば、俺の負担も減る。


 最悪、俺より強いプレイヤーがいる可能性もある。

 保険というか……仲間がいるだけで心強いのだ。


 そのために、だ。

 俺はわざと攻撃を受けて、HPを減らす。


 HPの3割を下回れば《耐久》が発動する。

 そうすれば《念力》が《念動力》になり、複数の操作が可能になる。


 なんで《念力操作》じゃないのか不思議なんだけどな。

 まあ、それは気にしない。


 《念動力》でレイクさんマカさんを、森エリアの洞窟まで運ぶ。

 これがやりたいことの一つ。


 プレイヤー達には茶番に付き合ってもらう。

 悪く思わないでね!


 俺は《鑑定》があるし、気をつけていれば死にはしない。

 もし間違って死んでしまうと、カッコ悪すぎて精神的にも死ぬと思う。


 それは万が一でも避けなければ。

 流石に起きないと思うけどね……。


 

 「はあっ!」



 前衛のプレイヤーが斬りかかってくる。

 プレイヤーと正面から戦うのは初めてなので、緊張していたが……遅い。


 走りが歩きに見えるほどに遅い。

 本人は真面目なのが哀れに感じるな。


 しかし、これを敢えて受けるのだ。


 剣の刃が向かってくる。普通に怖い。

 だが、俺は動かない。


 

 キンッッ!!



 剣は俺の毛とぶつかり、金属音を鳴らした。

 なんで金属音なの? 


 斬りかかってきたプレイヤーは一瞬目を見開いたものの、直ぐにまた斬りかかる。

 頑張れー。



 「ファイヤアロー。ファイヤウェーブ」



 お、魔法使いが魔法を打ってきた。

 俺の知らない魔法もあるな。


 少しワクワクしながら、魔法の発動を見る。

 

 まず、ファイヤアローが俺に当たる。

 速度が速いこの魔法は使いやすいのだろう。


 斬りかかっていた剣士はいつのまにか引いている。

 良い連携だなぁ。


 もちろん、ファイヤアローが当たっても直ぐに霧散した。

 ダメージは……ちょっと入ったな。

 少なくとも剣より良いぞ。


 HP354まで、あと824だよ!

 頑張ってー!


 俺の煽りとも捉えられる応援が届いたのか否か。

 ファイヤアローに遅れて、ファイヤウェーブがきた。


 範囲はわりと大きい。

 俺が入るくらいの大きさだな。


 ちなみに俺はプレイヤーが二人分か三人分くらいだ。

 速度は遅いが、まぁまぁ使えそうな魔法だな。


 俺は火の波に呑まれる。

 後ろのマカさんにも当たりそうだったので、《念力》で横にズラす。


 俺のHPは……結構減ったな。

 あと814だ。


 

 「はあ!? 俺の現状最大魔法くらって焦げ跡すらないの?」



 「いや待て、何故かあいつ動かないぞ。俺らが時間を稼ぐから " アレ " をやってくれ」



 お、作戦会議は終了ですかねー。

 HPの自動回復が始まる前に攻撃してほしいんだが。


 今度は三人できた。

 それぞれの武器は、剣、槍、盾だ。

 

 盾が武器なのか怪しいが、まあ武器だろう。

 鈍器としての性能は高そうだし。


 後ろの方では魔法使い達が、何やら準備をしている。

 一体何をするのか気になる。


 《魔力操作》で魔法の発動を邪魔できるか試したかったがやめた。ここは我慢が必要だ。純粋に楽しみたい。


 前衛の三人は、俺が動かない方に賭けたのか?

 連携なんて関係なしに攻撃している。


 微量だがHPが減ってきた。

 効率が全く良くない。

 まあ、自分のHP減らすのに効率もないか、と思い直す。



 「な、何よあいつ!? カッコ良く登場してあの様なの? レイク、本当にあのサクヤって強いの?」



 え、マカさん??

 今のは幻聴だと思いたい。


 えげつないコメントを頂いた。

 彼女には " ちゃん " 付けは勿体ないな。マカ、で良いや。


 見た目は可愛いスライムなのに、言葉は辛辣。

 これにはレイクさんも苦笑いだ。


 

 「ええ、強いです。その証拠に、火の波を受けても全く倒れないでしょう? ここは私を信じてください」



 その言葉に、マカも渋々ながら頷いた。

 レイクさん様々である。


 しかし、これでプレッシャーが余計に加わった。

 レイクさんのフォローを無駄には出来ない!

 

 と、息巻いてはいても、する事がない。

 あるとしたら、動かないでいる事くらいだ。


 仕事をください。

 

 高校生らしからぬ願望が出てしまう。

 大人しくジッとしていよう。

 ……同じことを二回言った気がするけど俺は知らない。


 そうだ、歌でも歌うか。

 もちろん心の中でだ。


 残りHPは……799か。

 前衛の三人は頑張ったみたいだな。


 じゃあ、あと800くらい頑張ろうか。

 なーに……直ぐ終わるさ。


 何処ぞのブラック企業の上司みたいなことを思う。

 将来俺はこんなこと言われたくないなぁ。


 

 「よし、準備できた! 離れていろよぉ!」


 

 おお!

 どんな魔法を見せてくれるのか。


 せめて、100くらいのダメージが欲しい。

 このままじゃあ、時間がかかりすぎるからな。


 範囲が広いかもしれないので。

 一応、《念力》《気力操作》をレイクさんとマカに発動する準備をしておく。


 俺はどうなっても良い。

 死にそうだったら、《魔力操作》で逃げるしな。


 

 「「合体魔法!! ラーヴァウォール!!」」


 

 名前、カッコよ。

 恥ずかしげもなく叫べるとこもポイントが高い。


 さて。

 肝心の魔法はどうだろうか?


 俺の目の前に岩の壁が迫り上がる。

 横6メートル、縦3メートルくらいだな。


 ま、まさか……これ単体じゃないよね?

 これでは唯のウォールだ。


 カッコいいラーヴァの部分は何だよ。

 

 そう思うが……それは杞憂だった。

 

 壁が壊れたのだ。

 しかも、俺の方向目掛けて。


 壊したのは……盾を装備したプレイヤー。

 確かに、物を壊すの得意そうな武器だな。

 ……別に馬鹿にしたわけじゃないぞ。


 だが、これは何をしたかったんだ?

 ブロック状に分解された岩が俺に当たる。


 しかし、ダメージになりうる攻撃力は皆無だ。

 

 と、思った。

 その瞬間。


 ファイヤウェーブが俺を襲った。


 レイクさんとマカを退避させる。

 

 範囲が大きい火は、地面の岩や俺に付いた細かい岩を溶かす。

 すなわち溶岩になった。


 赤々と液体状になった岩は、俺のHPを容赦なく削った。


 手始めに100持っていった。

 全体の3割のHPまで、あと699。


 だが、ここで終わりではなかった。

 

 火属性は厄介。

 持続ダメージが存在するのだ。


 毎秒50のペースでHPが減る。


 649……599……549……499……449。



 「う、嘘だろ……? あれに耐えてやがるのか……」



 399……349……299……249……199。



 「これは驚きました。いや、流石というべきでしょうか」



 149……99……49……0。


 

 残りHPは353。

 3割を下回った。


 《耐久》が発動している。

 ステータスが二倍になっている。


 よし、達成した。

 もう、このプレイヤーに用は無い。


 《魔力操作》で、溶岩に籠もっている " 魔 " を無理やり引き剥がす。

 すると。魔法は崩壊し、溶岩が消滅した。

 

 魔法で生み出された壁から出来た溶岩なのだ。

 《魔力操作》できると思っていたが、本当にできたな。

 

 では、見せてやろう。

 俺の編み出した魔法をな。


 まあ、魔法ではないような気もする魔法だが。

 

 まず、《気力操作》だ。

 竜巻を意識して " 気 " を廻す。


 以前と同じ範囲だと、レイクさんとマカを巻き込んでしまうので、プレイヤー達だけが受ける範囲に調節する。


 《気力操作》のレベルが上がったのか、様々なことが出来る。

 こういうのって楽しい。


 次に。

 竜巻として、廻り始めた " 気 " に《付加魔法》だ。

 《付与魔法》が《付加魔法》になった。


 そして。この " 気 " は明らかに物質としての特性を持っている。

 ならば、魔法をかけることは出来るはずだ。


 《耐久》のおかげで重複付与ができるので、竜巻に全属性を付与する。

 オーバーキルになりそうだが、実験だから仕方ない。


 よし。出来てしまった。

 これで、凶悪な竜巻の完成。


 回転速度を増して、プレイヤーを巻き込む。

 周囲の " 魔 " を感知したが、反応がない。


 一瞬で消し飛んだようだな。

 やはりオーバーキルだ。


 

 「「…………」」



 「あの。時間ないんで、聞くだけ聞きます」



 「……あっ、はい。何でしょうか?」



 「今から森エリアに行くんですけど、一緒に来ますか?」



 「行くわよ!! 連れてって頂戴!!」


 

 意外な喰いつきを見せたマカ。

 そんなに行きたいのか。


 森が大好きなのかな?

 いや、自分で考えたが有り得ないと気づく。

 

 それより、レイクさんだ。

 


 「はい。私も同行させていただきます」



 俺の視線で意図を読んだのか、そう言う。

 

 なるほど。

 それは良かった。


 俺は《念動力》を発動させた。

 

 本当に大変なのはここからだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ