想定外の重なり合い
【ログイン10日目】
「まず、お前は自分の使ってる透明な力を理解しているか?」
透明な力……おそらく《念力》のことだろうか。
《念力》を理解しているか、か。
正直なところ理解していないよな。
使い方はわかるが、何をどうやってこれが出来ているのかは分からない。俺はヒルに正直に伝える。
「いや、理解してない」
「じゃあ、魔法というものを理解しているか?」
魔法か。
これも根本的な理屈は全く分からないな。
今まで当たり前のように使っていたが……よく考えてみれば不思議だな。ゲームだから、と言ったら簡単だがそれだとしても何らかの要因と過程がある。
「いや、それも理解してない」
「ふむ、俺の使った白い力は?」
それは本当に知らない。
断片的な情報すらなく、全くの初見だ。
見当すらつかない。
一体、どんな力なのか……。
「いや、知らないな」
「そうか、なるほど」
「では、基礎の基礎から話していくとしよう」
基礎の基礎から、か。
俺がどれほど無知なのか気付かされる。
だが、とても重要な話な気がするので集中して聞くことにする。
「まず、空気中に含まれる要素は大きく分けて二つある。一般的にそれぞれを " 気 " と " 魔 " と呼ぶんだ。体内でのこれの割合は一対一。で、これらの要素に働きかける力を " 念 " という。この " 念 " という力については一般的に知られていない。 " 気 " も多くはないが " 念 " に比べれば遥かに多い。そして、一番身近なのが " 魔 " だ」
ふむふむ。なるほど。
ちょっと話が見えてきた。
念、気、魔の順で知名度が低く、一番知られていないはずの念を俺が《念力》という形で使っていたのが異質という訳なのだろう。
「で、だ。それぞれの要素で干渉できるものに違いがある。 " 気 " が物質、 " 魔 " が現象、 " 念 " が精神だ。俺は " 気 " に関しては熟練しているが、他の二つはさっぱりだ。これから俺が教えるのは " 気 " の扱いに関しての技術と応用、そしてその派生までだ」
「ああ、分かった」
個人的には " 魔 " の方が気になる。
が、 " 気 " の方も面白そうなので問題なかった。
いつか、俺もヒルみたいに手から気団みたいなものを出せる日が来るのだろうか。
ふふ、ワクワクしてきた。
「じゃあ、このまま " 気 " の修行をやるか」
「まずは自分の中の " 気 " を感知出来るようになれ」
む、難しそうなことを。
" 気 " を感知って全く分からないのだが。
「何かコツとかないのか?」
「全くわからないのだが……」
「そうか、じゃあ俺がお前の " 気 " を操作するから。その感覚を掴んで慣れろ」
絶対、そのやり方は正攻法じゃないだろ。
と言いたいが、俺にとって有難いので何も言えない。
事実、本当に " 気 " という概念が分からないからな。
そもそも初見の要素なんだから分かるはずない。
もし、これを直ぐに理解できるやつがいたら……そいつは天才だな。
異世界系の主人公の凄さが少し分かった気がした。
……ほんの少しだけな。
「よし、じゃあ操作するぞ」
ヒルは手を出した。
薄く白い膜はない。
が、何かを感じた。
身体がふわっと浮き上がるような。
喩えるとしたら。
これは……血液?
いや、もっと漠然とした何かな気がする。
体の中の熱が動いているような。
不思議な感覚。
「感覚を掴んだら、自分で操作してみろ」
「何となくでいい。感覚が大事だ」
ヒルに言われた通り感覚で動かそうとしてみる。
が、上手くいかない。
穴の空いたスプーンで水を掬おうとしているような。
動かそうとしても上手く動かせない。
掴んだそばから空き抜けていく感触。
しばらく俺は悪戦苦闘していた。
ここまで難易度が高いとは……。
正直、舐めていた。
「目を閉じ、慣れろ。流れをつかめ。その流れはお前の一部だ。まだお前の意識と繋がっていないだけだ」
ヒルのアドバイスを元に試行錯誤。
さらに時間が経過する。
だんだん " 気 " の流れというのが分かってきた。
俺の身体を満たし、廻っているのが分かる。
しかし、それを操作するのが難しい。
それはそれは凄く難しい。
ヒルはこれを平然とやっているのかと思うと、やはり凄いなと素直に感心する。
エリアボスなんて伊達な名前をしているわけだ。
「大事なのはイメージと発想だ。それだけで変わる」
イメージ……。
感覚的には、この " 気 " というのは血液に近い気がする。
しかし、血液は俺の意思で動かすことが出来ない。
よって、動かすことも出来ない。
ならば。
" 気 " と血液を俺のイメージで結びつける。
廻る " 気 " と巡る血液を強く意識する。
血液の流れに " 気 " を合わせるように……神経を繋ぐ。
身体の細胞と " 気 " が結びつく。
血液と " 気 " が同調する。
身体の中枢から末端へ、末端から中枢へ。
「いいぞ…………その調子だ」
" 気 " は身体の一部。
その事を強く意識しながら、身体に循環させる。
また時間が経った。
初めは何となくだったが、今では流れが鮮明に分かる。
俺は廻し続けた。
すると。
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称号、〈気を修めし者〉を獲得。
消費SP 0で《気力》スキルを取得可能。
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ついに称号を獲得した。
そして、《気力》というスキルも取得できるらしい。
恐らく、字面から見て《念力》の " 気 " バージョンだと思われる。
出来ることは違うのだと思うが、《念力》に並ぶほど強力なスキルには違いないだろう。
今すぐ《鑑定》でスキルの詳細を見たい気持ちもあるが、正気なところ眠い。
メニューを開き、時間を確認したら現在の時刻は朝の6時。
まるまる1日もログインしていたことになる。
まあ、殆どは " 気 " の修行のせいだと思うが。
" 気 " の修行が終わったことで気が緩み、一気に眠気が襲ってきたようだ。気だけに。
……今のギャグも眠気のせいだ。
「よし、修行はここまでとしよう。後は好きにするといい。もし、気が向いたらまた来るんだな」
「ああ、ありがとう」
「俺は大体、この洞窟にいるから来れば直ぐに会える。まあ、その時までに " 気 " の扱いが上達してるのを期待しとこう」
俺は停止しかけた頭でヒルに礼を言ったが、その後のヒルの発言によって目が覚めた。
ヒルは何で、これで終わりみたいに言うんだ?
マーナさんの修行もまだ終わってないし。
" 気 " の扱い方もまだまだ基礎の基礎だ。
スキルを入手しただけ。
修行はこれからも当然あるよな?
俺が朧げな頭で考えていると。
いつの間にか。
目の前にいるはずのヒルが消えていた。
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ワールドクエスト
《黒の試練 》をクリアしました。
クリア報酬
・称号、〈黒の先駆者〉を獲得。
消費SP 0で《武闘》スキルを取得可能。
・装備、 ' 封印の指輪 ' を獲得。
・装備、 ' 封印の仮面 ' を獲得。
・アイテム、 ' 気心の書 ' を獲得。
・アイテム、 ' 気魔の書 ' を獲得。
・???、 ' 世界の門鍵 ' を獲得。
・???、 " ????? " を取得。
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ログがうるせぇ。
頭の中でガンガンと声が響く。
こんなんじゃ、ログを確認することも出来ないじゃないか。
と、眠気でイライラしていた俺は心の中で思った。
だが、落ち着いて。
メニューからログの詳細を見返してみた。
すると眠気は吹っ飛び、代わりに疲労が俺を襲った。
身体的な疲労では無い。
精神的な疲労だ。
意味分かんないけど、ヒルの試練をクリアしたらしく。
ワールドクエストをその日のうちにクリアしてしまった。
報酬は見るからに凄そうだ。
称号もなんかカッコいいし、取得できるスキルも強そう。
装備に至っては、封印の何ちゃらと明らかにヤバそうな臭いがプンプンしている。
装備した瞬間に封印されちゃうのかな? どこぞの仙人の壺かよ。
アイテムも謎が多く、よく分からない本が二冊も貰えた。
しかもこの二冊、意外と分厚いので読むのは相当な苦労を伴うと思われる。
何故ゲームで読書しなきゃいけないのかは本当に謎だ。
だが、一番の謎は " ??? " とついた二つだ。
一つ目は……鍵だな。
それも特大の鍵だ。全長2メートルくらいはあるな。
何に使うのかは分からない。
今後、必要になるのかも分からない。
正直なところ置き場所に困るので、処分するのが良いと思うが、一応 ' ??? ' なので処分はやめた。
二つ目は……うん、謎!
見たところそれらしき物はない。
全部 " ????? " だし、情報が一切ない。
ちなみに《鑑定》は弾かれた。
' 世界の門鍵 ' も同様だ。
《鑑定》をそれらに向けて発動した瞬間、消し飛ばされた。
強制的に視線を逸らされ、《鑑定》も何かに上書きされたような感じだ。
考察はここまで。
もう眠すぎて頭がまわらない。
細かい《鑑定》は明日やることにする。
今すぐログアウトしたいが……俺の足元に出現したアイテム達をどうにかしなければならない。
どこか良い置き場所は……。
あ、あった。
よく見たら、すぐそこに洞窟があった。
草に隠れて見えづらかったが、確かにある。
ここなら誰も来ないな。
とりあえずここに預けさせて貰おう。
俺はアイテム達を持って行った。
この時だけ、人間が良かったと思ったのは内緒だ。
運びづらい事この上ない。
洞窟に着いた。
とりあえずアイテムをその場に置いて。
念の為に《偽造》で岩のコーティングを……あ、《偽装》に戻ってたわ。
《耐久》のことをうっかり忘れていた。
うーん、端に寄せておけば……。
まあ大丈夫かな。
良し、ではさらば。
おやすみと言っておこう。
俺はメニューからログアウトを選択した。
視界がブラックアウトするのは予測済みだ。
☆☆☆☆☆
【ログイン10日目】
side:とあるプレイヤー
「ど、どうなってるんだ!?」
今のプレイヤー達の心の中はこうだろう。
何故なら俺もこうだからだ。
ん? 何でそんなに冷静なのかって?
簡単な話だ。人は自分より慌てている奴が周りにいると冷静になれるものだからだ。
そもそも人間っていうのは、いつも自分と他人を比べたがる。自分より劣っていたら優越感に浸り、自分より優れていたら嫉妬する。
根本的にはそういう生き物だと俺は思う。
だからこそ競争が生まれ、努力が生まれる。
だが、それは良い方向にも悪い方向にも転ぶ。
代表例がゲームだ。
自分が勝てる相手には余裕を見せ、勝者の貫禄を見せつけたがる。だが一転して自分が勝てない相手には、早々に諦めて回線切断をする。
少し偏見が混じっているかもしれないが、概ねこんなものだろう。
たまに、尊敬する人物に近づく為に頑張るという人もいる。
しかしそれでは、その尊敬する人物の劣化になるだけなのだ。
どう頑張ってもそれ以上にはなれない。
すなわち、人間は嫉妬で成長する生き物なのである。
結局、何が言いたいのか?
俺はこう言っているのだ。
「これからこのゲームは激戦になるぞ」
☆☆☆☆☆
【ログイン10日目】
side:とあるプレイヤー
「これからこのゲームは激戦になるぞ」
隣のプレイヤーが何かを呟いた。
周りの声でよく聞こえなかったが、その言葉には何故か重い力を感じた。
気になって隣を見ると、そこには年寄の爺さんがいた。
珍しい。
恐らくプレイヤーだが、爺さんのキャラとは中々いない。
いや、中身も爺さんの可能性はあるな。
このゲームの初期キャラは、本人の年齢に近くなる。
このゲームのことを調べている俺からすれば、常識の範疇だ。
……それにしてもうるさい。
これだから最近のやつらは。マナーってものを分かっていない。
なんて事は言わない。
現在の状況を見れば、そんな場合でないことは分かる。
――数十分前。
街の中で、とある情報について調べていたら。
突然、アナウンスがかかった。
========================================
【世界通知】
ただいま、草原エリアがプレイヤー " サクヤ " によって解放されました。
よって、草原エリアの魔物は減少、弱体化します。
15分後、街の中央にて " 異界の大門 " が出現します。
プレイヤーの皆様はお集まり下さい。
プレイヤー " サクヤ " 様は鍵を持ってお集まり下さい。
繰り返します――
========================================
繰り返しかかる声にフリーズし、何回目かのアナウンスで意味を理解すると俺はすぐさま草原へと向かった。
一本道を全速力で走る。
草原に着くと、俺と同じことを考えたプレイヤー達がすでに何人かいた。
俺は結果を聞くような事はせず、自分で検証を始めた。
ボアの群生地に向かい、単身で突撃する。
結果、俺は死亡しリスポーンした。
しかし、今までなら数秒でHPを全損していたが、あと少しのところまでボア達を追い込めることが出来た。
やはり変わってる。ボアの強さが変わっている。
ということは、あのアナウンスは嘘じゃない。
俺は確信を得ると、次にある知り合いのもとへと向かう。
プレイヤーの間でスラムと呼ばれる複雑な道を迷いなく進む。
右、左、下、上へと道のりを走る。
目的の場所を発見した。
外見はかなり古びた小屋だが、内装は綺麗。
看板には、初見お断りと薄っすら文字が書いてある。
それには気もくれずに入る。
「よう、来ると思ってたよあんたは、ね」
と発したのはノウズという女性プレイヤー。
このゲームの情報を漁っているやつだ。
それと同時に、こんな小屋で料理人という職業に就いている変人でもある。
俺とその変人が知り合いというのには理由がある。
しかし、それはここで詳しく言えない。
俺とは何かと縁があり最近知り合った、とだけ言っておく。
軽い返事だけして、本題に入る。
「時間がないんだ。お前の意見を聞かせてくれ」
「内容は察せるね。で正直、一言で言うなら異常、ね。自慢じゃないけど、私だって毎日欠かさずログインして魔物を倒してる。それなのにプレイヤーランキングは6位なの。レベルは28でそれなりに強いと思ってる。正直、不正を疑うやつが出てきてもおかしくないよ」
「だが、そのサクヤってやつは随分前からプレイヤーランキングは1位を独占していた。……それでもか?」
「それでもよ。エリアボスを倒そうってんなら、複数パーティを組むのが当然だね? なら何で6位の私に声が掛からないの。おかしいだろ?」
「少数精鋭だった可能性は無いか……」
「だね。3位のあんたにも声が掛かってないよね?」
概ね、俺の見解と一致している。
こいつは、頭はキレる女なのだ。
俺と違うのは、ノウズは笑いながら言っているという点だ。
全く笑い事じゃない。
「いいか。俺はここ4日でトッププレイヤーを調べ上げてきた。ランキング上位者は勿論、生産職もだ。その中で唯一、情報を全く拾えなかったやつがいる」
「それがそのサクヤってわけだね」
俺が答えを言う前にノウズが呟く。
俺はその言葉に首を縦へ振る。
ノウズはまだ笑っている。
全く何が楽しいのか。
時折り見せるこの笑みが、この女の闇を表している。
というのが、俺の勝手な推測だ。
地頭はいいのだが、こういう不気味なところがな。
「おっと、もう時間がないね。早く街の中央に行こうよ」
メニューを見ると、残り5分で街の中央に行かなくては間に合わない時間になっていた。
だが、俺は問題ない。
「一緒に行くとこを見られたらマズい。先にお前が行け。俺は後からでも追いつく」
「さっすが " 蒼の人 " ! じゃ、お先に」
俺はノウズが行ってから数秒待ち、駆けた。
しかし、ノウズはどこで知ったのだ。
俺のあの呼び名を。
やはり、不気味な女だ。
一つ、言い忘れていたが。
俺が全く情報を拾えなかった奴がもう一人いる。
それが、あの料理人。
" 奇人 " と呼ばれるノウズだ。
俺はふと、あの老人の言葉を思い出した。
激戦……か。
俺は広場へ向かう脚を速めた。
☆☆☆☆☆
【ログイン10日目】
side:メル&リリ
「いいねぇー! 最近ついてるねぇ!」
リリのはしゃぎ声が周りに響く。
それを聞いたうちの何人かがこちらを凄い目で見ている。
私は咄嗟に目が合わないように逸らした。
こ、怖いよ。あの人たちの眼力が……。
私は慌ててリリに言う。
「ちょっとリリ! 周りの人の迷惑になるから叫ばないの!」
「はーい。分かった大人しくしますよー」
全然、反省してなさそうな返事をするリリをジト目で見つめながら、メニューで時間を確認する。
あのアナウンスがあってから早くも10分経過していた。
あと5分でここに何かが出現する、と掲示板では推測されている。
多分、今頃の掲示板はお祭り騒ぎだね。
私が見たときでさえ大騒ぎだったのだから。
あの時は、みんなリリちゃんになったのかと思ったほど。
「いやー、サクヤって人には感謝だねー。リリのためにありがとー!」
「別にリリのためじゃないと思うけど……」
リリの見当違いな感謝に、私は苦笑しながら言う。
でも、こんなイベントを起こしてくれたサクヤさんに感謝する、という気持ちは分からなくはないね。
ゲームなんだから、こういうワクワクするような事はあって欲しいと私も思う。
ここは不本意ながらリリに同意できるところ。
黒猫ちゃんと会ってから、私達はかなり頑張った。
草原にボアを倒しに行ったし、クエストだってたくさん受けた。
リリが大人しく付き合ってくれたというのもあり、私達のレベルは16にまで上がっている。
これなら、また黒猫と出会っても戦う事はできるね!
まあ、出来るだけ戦いたくはないんだけど。
「ねーねー、メルちゃんは何が起きると思う?」
リリが聞いてきた。
何が起こるかな? 私達に被害が起きない事なら何でもいいっていうのが本音だけど。
ありそうなのは……。
「エリアボスを倒したっていう " サクヤ " さんをみんなでお祝いする、みたいな」
ここにいるプレイヤー全員が目標にしていた事を成し遂げた人なんだから、そういうのはありそうだなと思った。
普通はそうじゃないかな?
リリにも聞いてみる。
「リリはどう?」
「私はねー、新しい世界への扉が開く! と思うの。あのアナウンスでも、それっぽいこと言ってたしね」
世界への扉、ね。
本当にそうなったら面白いけど。
流石に無いんじゃないかな、って私は思う。
あったとしても何か別の物の比喩として使われただけかな。
少し気になって掲示板を覗いてみたら、リリが言ったことが起きる起きないの論争が始まっていた。
みんな楽しそうだね。
あ、あとちょっとで15分経つ。
「メルちゃん、あと15秒だよ!」
リリが興奮した様子で言う。
よっぽど楽しみらしい。
だが、私も例外じゃないので強くは言えない。
冷静な振りをしているだけだからね、実は。
「10ー!」
「9ー!」
「「「8ー!」」」
「「「「「7ー!」」」」」
「「「「「6ー!」」」」」
「「「「「5!」」」」」
「「「「4ー!」」」」
「「「3ー!」」」
「「「2ー!」」」
「「「1ー!」」」
「0ーーー!」
リリの声が高く響いた。
その瞬間。
中央の黒い柱が輝く。
眩い閃光を放ち、誰もが目を瞑る。
まるで世界が発光したかのような白世界が続く。
数秒経ち、体感で光が収まった事が分かる。
満を持して目を開ける。
すると。
中央に大門が出現していた。
門の色は黒。
隅から隅まで漆黒だ。
「うひょー! あの門なにー!?」
静寂の第一声はリリ。
何とも言えない、メルの心情。
そして、それに続くように次々とプレイヤーが騒ぎ出す。
あるものは門に近づき、あるものは警戒して離れる、あるものは撮影機能で写真を撮っている。
そんな混沌と化した広間で。
ある声がよく響いた。
「待て!! 門に鍵が掛かっているぞ!!」
その声を聞き、その場にいたプレイヤーが門を見る。
すると。
門には厳格な南京錠が取り付けられていた。
サクヤは試練をクリアしたあと直ぐにログアウトしたため、アナウンスを聞いていません。気づくのは何時になるか……。




