まさかの結果
【ログイン7日目】
錬金室に着いた。
まあ着いたと言っても、ちょっと歩いただけだ。
両手に持った石を、台の上に置く。
石は全部で三つ。
錬金するのに必要な数がいくつかってのも、検証したい。
なので、まずは三つから。
これで成功したら二つに、失敗したら四つにする。
成功すると思うけどね。
じゃあ、錬金しますか。
心を落ち着ける。
心を落ち着ける。
三つの石、全てを同時に錬金する意識で……。
錬金っ!!
手元の石が光った。
するとそこには――
――錬金する前よりも一回り大きい石が有った。
……
………成功?
分かりにくいな。
でも、蹉跌灰にはなっていない。
最悪は免れたようだ。
しかし、一応《鑑定》をしてみる。
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名称 岩石 レア度2
通常の石よりも硬度が高い石。地下の浅い場所に点在しているため、価値はそこまで高くない。不純物を取り除くことで金属になる。
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石から岩になっていた。
これは上位互換なのか……?
いや。
上位互換なんだろう。
硬度が上がってるとあるし。
不純物を取り除くことで金属などにもなる。
石ではあり得なかった事だもんな。
あ、ちなみに《錬金》のスキルレベルはあがってません。
1レベルも上がってません。
うん。どうやら、素材とするアイテムのレア度によって《錬金》の上がり幅が変わるようだね。
妖精の粉で失敗した時は11に上がってたのに、石で成功したら1も上がらない。
絶対にレア度の差だよねー。
レア度8とレア度1の差。
難易度と経験値は比例してそうだ。
レア度1で成功するよりも、レア度8で失敗した方が経験値が大きい。まあ、そういう事だな。
そうなると。
石で錬金するよりも、妖精の粉で錬金した方が効率は遥かに良いということだ。
だが、普通はそんな事できない。
レア度8なんて、滅多に無いからだ。
もし失敗したら、取り返しがつかない。
真っ黒な灰になって終わりだ。
地道にスキルレベルを上げてから、挑戦するだろう。
しかし……。
俺にそんな事をする必要は無い。
マーナさんが用意してくれたと思われる倉庫には、妖精の粉を始めとしたアイテムが、数え切れないほどあるのだ。
これを使ってレベリングした方が良くない?
好きに使って良い、って言われてるし。
しかも、さっきの錬金で、素材が三つでも錬金が成功する事が分かった。これでアイテムの消費量も抑えられる筈だ。
もし、二つで錬金できたら素材アイテムの消費量をもっと抑える事ができる。
効率の極みまで、追求してやろうじゃ無いか。
そういう訳で、《錬金》のレベリングにレア度8のアイテムを使う事は決定。
あとは、素材が二つでも錬金が成功するかの検証だ。
これには石を使う。
失敗する可能性が大きいからな。
流石の俺でも、レア度8を使う気にはなれない。
という訳で。
石二つで錬金をやってみよう。
また炭鉱から石を持ってきた。
錬金室の台の上に置く。
あとは錬金するだけだ。
心を落ち着け、錬金。
手元の石が光った。
そして次の瞬間、そこには灰があった。
……失敗だ。
いや、もう一回やってみよう。
たまたま失敗しただけかもしれないからな。
炭鉱から、石を二つ……いや十個持ってこよう。
次も失敗するかもしれないし、数を重ねて検証しないと。
《錬金》のスキルレベルも上げないといけない。
炭鉱から石を十つ持ってくる。
しかし、炭鉱が近いのは普通に便利だな。
とても有難い。マーニさんに感謝だ。
錬金室に入る。
そして、台の上に石を十つ並べる。
一回の錬金で二つ消費するわけだから……計五回も錬金ができることになる。
で、そのうちの何回が成功するか問題だな。
では早速。
心を落ち着け、錬金っ!
一回目。
…………失敗。
二回目。
…………成功。
三回目。
…………失敗。
四回目。
…………失敗。
五回目。
…………成功。
このような結果となりました。
なんとも微妙な結果だ。
確率は五分の二。
いや、最初の失敗も入れると三分の一か。
三回に一回は失敗する。
しかも、レア度1でだ。
これが、レア度8の妖精の粉になったら……。
どんな確率になるのだろうか。
単純に8倍とすると、二十四分の一だ。
さらに、錬金するためには妖精の粉を二つ消費するので、24を2倍して48個……も必要になる。
そしてこれ以上、必要になる可能性もある。
恐ろしいコスパだろ?
俺はそれをやろうとしているのだ。
いつか本当に、天から罰が降りそうだ。
しかし。こんな使い方が出来るのも、マーニさんが妖精の粉を大量に用意していたから出来ることなのだ。
普通はこんなこと出来ない。
出来るはずが無い。
物理的にも精神的にもな。
だけど……やっちゃいましょう。
人間、思い切りが大切。
まあ、いまの俺は魔物なんだけど。
関係ないよねー。
では、手始めに倉庫から妖精の粉を持ってくる。
数は……とりあえず10ほど。
もう感覚が麻痺ってくるなぁ。
二つ消費して、錬金しよう。
結局、いくつ消費しても失敗するんだし……。
台の上に妖精の粉を二つ置く。
手取り早く、錬金してしまおう。
心を落ち着けて……錬金っ!
一回目。
…………失敗。
二回目。
…………失敗。
三回目。
…………失敗。
四回目。
…………失敗。
五回目。
…………失敗。
はい。全て失敗です。
結果はわかってましたよ。
でもね。
今ので、《錬金》のスキルレベルが15も上がりました。
俺の《錬金》はレベル26になりました。
いやー。
凄いでしょ!
石を五回も錬金して、一つも上がんなかったのに妖精の粉を錬金したら一気に上がったよ。
妖精の粉、ハンパないって!!
そして、《錬金》の新しい技能も解放された。
本当に良いこと尽くめ。
犠牲となった妖精の粉に感謝だな。
そして、新しい技能の名は合成。
違うアイテム同士を合成することで、全く別のアイテムを作り出す事ができる技能だ。
成功率は置いておくとして、普通に便利そうな技能だよな。
例えば、倉庫の中にあったヒメ草。
これを水と合成する事によって、高品質のHP回復ポーションになるかもしれないのだ。
凄い便利だろ?
まあ、成功率は置いておくとしてな。
だが、回復ポーションが作れるようになるのは凄いことじゃないか? 単純に考えて、MP回復ポーションも作れるって事だ。
そしてそれだけじゃない。
回復が出来るって事は、攻撃も出来るという事。
毒ポーションが作れてしまうかもしれないのだ。
そうなったらだ……。
俺の場合、毒を掛けて《隠密》で待機していれば、直接的に勝てない相手にも楽に勝ててしまう。
完全なイージーゲームになるのだ。
プレイヤーキルも楽になると思う。
まあ、簡単に毒が作れたらの話だがな。
意地の悪い、このゲームの事だ。
なんかしらの制限は必ずあると思う。
しかし、仮にそうだとしても……。
回復ってだけでも、十分に有難い。
なので、毒ポーションについては一旦、生産を見送ろうと思う。
もっと《錬金》のレベルを上げてから挑戦しよう。
そんな訳で。
さらに《錬金》のレベリングを急ぐ必要ができた。
なので、一気に上限まで押し上げてしまおうと思う。
隣の倉庫から、妖精の粉を80個ほど持ってくる。
台の上に妖精の粉を二つ置く。
これで、計40回ほど錬金できるな!
これで、どれだけ《錬金》のレベルが上がるか……。
とりあえず試してみないと何とも言えない。
では早速やってみる。
錬金が一回でも成功すれば良いがな。
成功しない確率の方が高そうだ。
心を落ち着ける。
錬金っ!
一回目。
…………失敗。
二回目。
…………失敗。
三回目。
…………失敗。
四回目。
…………失敗。
五回目。
…………失敗。
六回目。
…………失敗。
七回目。
…………失敗。
八回目。
…………失敗。
九回目。
…………失敗。
十回目。
…………失敗。
ふう。
全て失敗か……。
だが、これは予想通り。
気を取り直して、もう十回ほど錬金してみる。
再度、心を落ち着ける。
錬金っ!
十一回目。
…………失敗。
十二回目。
…………失敗。
十三回目。
…………失敗。
十四回目。
…………失敗。
十五回目。
…………失敗。
十六回目。
…………失敗。
十七回目。
…………失敗。
十八回目。
…………失敗。
十九回目。
…………失敗。
二十回目。
…………失敗。
はあ。
これで妖精の粉が四十個も無駄になった。
まあ、《錬金》のスキルレベルは上がっているはず。
上がっていれば、妖精の粉なんて無駄になっても良いのだ。
ふう。
もう十回、錬金しますか。
心を落ち着け、錬金っ!
二十一回目。
…………失敗。
二十二回目。
…………失敗。
二十三回目。
…………失敗。
二十四回目。
…………失敗。
二十五回目。
…………失敗。
二十六回目。
…………失敗。
二十七回目。
…………失敗。
二十八回目。
…………失敗。
二十九回目。
…………失敗。
三十回目。
…………失敗。
はーい。六十個を無駄にしました。
もう蹉跌灰の量が凄いことになってます。
これが最後の十連ガチャ。
一回は成功して欲しい!
《錬金》のレベルも上がったんだし、可能性はそんなに低くない筈だ。
成功しますように祈る。
心を研ぎ澄まし、いざ。
錬金っ!
三十一回目。
…………失敗。
三十二回目。
…………失敗。
三十三回目。
…………失敗。
三十四回目。
…………失敗。
三十五回目。
…………失敗。
三十六回目。
…………失敗。
三十七回目。
…………失敗。
三十八回目。
…………失敗。
三十九回目。
…………失敗。
これが最後。
俺はこの一回に全力を注いだ。
自分のMPを出し切るつもりで。
力を込めまくった。
四十回目――
その瞬間。
妖精の粉が発光した気がした。
俺は錬金に確かな手応えを感じた。
思わず息を呑む。
そして。
手元を見た。
結果は。
――――成功。
いっきに肩の力が抜けた。
三十九回分の錬金よりも疲れた。
俺の精神力が全部持ってかれたみたいだ。
その全部がこの粉に捧げられた。
ハハハ。
やってやった。
見事、錬金に成功したぜ。
レア度8の妖精の粉をな。
代償は大きかったが、その見返りは大きい。
多くの経験値、スキルのレベルアップ。
そしてアイテムの生産。
十分な成果だと思う。
……おっと。
出来たアイテムの《鑑定》を忘れていた。
妖精の粉の上位互換は何なんだろう?
さあ《鑑定》してみよう。
…………いや、やめとくか。
今日はもう疲れた。
精神的に、物凄く疲れたのだ。
それに、今の達成感と喜びを抱えたままベッドに入って眠りたい、と体が求めているような気がする。
時間はまだまだ早いが、そういうのも偶には良いだろう。
今日はログアウトする事にした。
《鑑定》の楽しみは、また明日に取っておこうかな。
俺は、ログアウトボタンを押したのだった。
……今日はよく眠れそうだ。




