錬金
【ログイン7日目】
はい。ログインしました。
それにしても、昨日は精神的にすごく疲れたな。
ほぼほぼマーナさんの所為なんだけど。
今日は、EPを稼がないといけない。
……のだが。
倉庫の中身を、ちょっと把握しておきたい。
気になってEP稼ぎに支障をきたす可能性もあるし。
なにより、単純に見てみたいのだ。
どんなアイテムが入ってるのかな?
じゃあ、覗いていこう!
――――1時間後。
頭痛い。頭痛が痛いよぉ。
日本語おかしいよぉ。
想像以上に酷い有り様だった。
レア度8なんかがポンポン出てくる。
たまにレア度10なんてのもあるし。
本当に勘弁してほしい。
何処から持ってきたんだよマーナさんは。
しかも、こんな数を揃えて。
例えば、レア度8のアイテムだと……。
妖精の粉、妖精の羽、世界樹の葉、世界樹の枝、世界樹の花、竜の爪、竜の翼、竜の目、竜の鱗、月の欠片、太陽の欠片、魔石、火結晶、水結晶、風結晶、土結晶、アラクネの糸、グリフォンの口ばし、フェンリルの爪、ミスリルゴーレムの魔核、キングポイズンスネークの毒、ハメ草、エンペラーグリズリーの毛皮、クリスタルシープの羊毛、などなど……。
そしてレア度9のアイテム。
精霊の鱗粉、精霊の翅、世界樹の雫、世界樹の蜜、龍の爪、龍の鱗、龍の眼、星の欠片、闇結晶、光結晶、オリハルコンゴーレムの魔核、リバァイアサンの牙、レインボーラビットの耳、純魔銀全身鎧、などなど……。
最後にレア度10のアイテム!
世界樹の結晶、龍王の宝玉、銀河の欠片、大賢者のローブ、大勇者の指輪、大魔王のペンダント、などなど……。
もちろん、もっと種類は豊富だ。
個人的に凄い! と思ったものを並べただけだからな。
ちなみに、レア度7以下は無かった。
全てレア度8以上のアイテムだ。
本当にぶっ飛んでる。
これをどうしろと言うのだ?
……はあ。
うすうす気付いてはいたけど……。
これは、マーナさんが遠回しに《錬金》を使え! と言っているって事かな……?
じゃなきゃ、こんなのは無いと思う。
…………なので。
レベル上げをやろうと思っていたのだが急遽、《錬金》をやってみることにした。
今まで一度も使ってないけど、大丈夫かな?
今すぐやってみたいが、まだ試すときじゃない。
実は、まだ開けていないドアが二つある。
先にそれを開けてみるのが、良いだろう。
何事も把握することが大事だ。
俺は、寒い倉庫から出て真ん中のドアに向かう。
ドアは全部で三つ。
そのうち、左のドアが倉庫だ。
右のドアは真ん中のドアを開けてから確認しようと思う。
そして、恐る恐る部屋の中を確認した。
ドアノブに触れたら、電気が流れる……みたいな事がなくて、安心した。これが実際にありそうで怖いんだよ。
そんな葛藤のなか開けたが、懸念に終わったようで良かった。
まあ、中は別の意味で凄い部屋だったんだけど……。
うん……中は明らかに、錬金室!
って雰囲気の部屋になっていた。
なんか怪しげなフラスコや、怪しげな台、よく分かんない天秤なんかが、いっぱい置いてあるのだ。
だが、部屋自体はそんな大きくはない。
大体……十二畳くらいかな?
これは目安なので信用しないで欲しい。
まあ、普通の大きさの部屋ってことだ。
いろいろな器具は置いておくとしてね。
そして、この部屋は《錬金》を使うための部屋っぽい。
ひと目見ただけでも分かるが、一応《鑑定》でも見てみた。
その結果は予想通り。
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名称 上質なフラスコ レア度5
上質な硝子から作られた、上質なフラスコ。《錬金》を行う過程で使うことが多い。使い切りでなく、洗うことで再度使用することが出来る。
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うん。準備がいいね。
しかもレア度5って以外と高いし。
マーナさんに直接、《錬金》をやれって言われたようなもんだな。
他の道具も一応、見ておいたが……。
全て同じようなものだった。
そして、レア度は全部5。
無駄に統一されていたよ。
でも、意外と俺はこういう雰囲気の所は嫌いじゃ無い。
実験室みたいなのが、ちょっと好き。
まあ。
有効活用していきたいと思う。
では、最後のドアを開けてみますか。
よく見てみると、俺が開けようとしているドアは他のドアよりも頑丈に作られてるような気がする。
俺はそれに気づいて、余計に開けにくくなった。
意を決して開ける。
…………わあお。
中は部屋では無かった。
そして、倉庫でも無かった。
んんー?
これは………………炭鉱?
テレビで見たことがあるような、ちゃんと整備されてる炭鉱じゃなくて、整備がされていない不安定そうな炭鉱だ。
そして、入り口から見ただけでも、沢山の道がある。
まるで、迷路みたいだな。
右に行ったり左に行ったり、下ったり上ったり、これは地図が必須! と思うくらいの場所だ。
まあ、俺には《地図》があるから安心なのだけど。
持ってなかったら速攻で迷子になる自信がある。
というか、もはや自信しかないよ。
それほどの場所だ。
しかし、その役割は迷路だけではないらしい。
俺が今いる通路。すなわち岩石だな。
ここは洞窟だ。しかも山の地下に存在している。
よって鉱石みたいな塊が所々に見えるのだ。
もちろん、《鑑定》した。
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名称 火鉱石 レア度3
火の魔力が微量に封じられた鉱石。生産スキルで加工・生成すれば、より純度の高い鉱石にすることが出来る。微量に熱を発する特長がある。
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こんな感じだった。
まさかの鉱石。しかも属性まであったし。
しばらく探すと、他にも沢山の鉱石があった。
水、風、土はもちろん。光、闇の属性もあったのだ。
そして、この石拾いが意外と楽しく、三十分も時間を使ってこの炭鉱を探検したりした。
初めは、石拾いをしながら適当に走っていたのだが、どれだけ走っても行き止まりにならない事に気付いた。
それが二十分前くらいのことだ。
俺は、この炭鉱の果てを突き止めるために全力で走った。あ、迷子の心配はしなくていい。俺には《地図》スキルがあるからな。
そして、それから十分後。
潔く諦めて戻ってきました。
だって……全く終わりが見えないんだもん。
分かれ道が増えるだけで、道が途切れる気配がなかった。
いや、もしかしたら終わりなんて無いのかもしれない。
だが、何の意味もなく走っただけでは無い。
成果はきちんとあるのだ。
それが、こちら!
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名称 魔銀鉱石 レア度4
魔力を保有している銀鉱石。上手く精製する事によって、強靭な金属へと変わる。しかし、その精製難易度は非常に高く、高い生産スキルと技術を要求される。
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ほら。凄そうでしょ?
魔銀だよ、魔銀。
これにルビを振ってみると…………?
ミスリルっっ!
いや〜〜〜。
レアモノを発見しちゃったんじゃ無い?
これを使って、いろいろ作ってみたいねー……。
うん。まあ、こんな風に盛り上がってるんだけどさ。
実は、倉庫にあったんだよね。
魔銀と、火鉱石。
しかも、倉庫の中には上位互換みたいな感じの純魔銀鉱石ってのもあったし。
多分ここの意味って、倉庫の鉱石がなくなった時に補充するための場所なんじゃないかな? それか迷路。
俺にはそれくらいしか思い浮かばない。
まあ、しばらくはここに用はないだろう。
鉱石が無くなることなんか、もっと先のことだし。
今は、《錬金》をやってみることが優先だ。
俺は炭鉱を出た。
ふう、これで全部のドアを確認した。
それにしても、かなり時間が経ったなぁ。
早く《錬金》をしないと、また時間が遅くなってしまう。それは避けないと。
ただでさえ睡眠時間が少ないのに、これ以上はヤバいぞ。
って訳で、ちょっと急ぎでやる。
まずは何を《錬金》しようかなー?
ちなみに、レベル4で使える《錬金》の技能は錬金だけだ。本当に名前がそのまんまだよな。
俺が《鑑定》で色々と見たところ、《錬金》はスキルレベルが上がるにつれて技能が解放されていく仕組みになっていた。
その技能が多くなればなるほど、アイテムを様々な手法で《錬金》する事が出来るようになるらしい。
そして、俺が使える技能は一つ。それが錬金だ。
まあ、スキルレベルが4だし仕方ない。
で……肝心な錬金の効果は、下位アイテムを複数消費する事で上位アイテムを生成するというものだ。
錬金っぽいな。
イメージのまんまって感じ。
じゃあ、早速やってみるか。
まずは下位アイテムをいくつか集めないとな。
幸い、素材となりそうなアイテムは倉庫に山ほどある。
その中のどれかを拝借するとしよう。
マーナさんも好きに使っていい、って言ってたし。
遠慮なく使うとしよう。
さーて。
どれにしようかなー?
……
…………
………あっ、これにしよ。
妖精の粉。
これに決めた!
ちなみに決めた理由は、数が沢山あったからだ。
小さな小瓶に詰められた粉が、数百個から数千個ほど近く並べてあった。
5つくらい貰いました。
マーナさん、ありがとうございます。
それを、落とさないよう慎重に隣の部屋に運ぶ。
もちろん、一つずつだ。
たくさん器具があり過ぎて、どの器具でやればいいか迷ったが、一番安全そうな台の上でやる事にした。
姿がウルフなので、人間用に作られている器具は難しいのでは? と思ったが、スキルを発動するだけで錬金できるらしいので安心した。
これは《鑑定》を使って確かめた。
《鑑定》からの情報なら大丈夫なはずだ。
万一にも錬金できないって事はないと思う。
そして、一応いつでも防御できるように準備しておく。
錬金した途端に爆発! なんて事が起こるかもしれない。
ふう。
心を落ち着ける。
では!
いきます!
《錬金》っ!!
手元にある、妖精の粉が一瞬光った。
俺は爆発かと思い、目を瞑った。
……しかし。
いつまで経っても爆発はやってこない。
俺は安心して、目を開けた。
するとそこには――
――精霊の鱗粉。
では無く、真っ黒な灰が有った。
どう見ても精霊の鱗粉には見えない。
というか、ただの灰。
誰がどう見ても失敗したと思うな。
《錬金》に失敗があったか……。
まあ、考えてみれば当たり前か。
だが、とりあえず錬金の結果を見てみる。
もしかしたら価値のあるものかもしれないよ?
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名称 蹉跌灰 レア度0
《錬金》で失敗した時に生成される灰。この灰から元のアイテムに戻す事は不可能に近い。使い道もなく、捨てるしか出来ない物。
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あ、はい。
わかってました。
そりゃそうですよねー。
このゲームが、そんなに甘いはずが無い。
そして妖精の粉、計5つが無駄になった訳だ。
やっちまったなぁ……。
……でも仕方ないんだよ。
どれかのアイテムは必ず犠牲になったんだ。
その犠牲が、数のまだまだある妖精の粉で良かったじゃん。
それが、不幸中の幸いってやつだ。
それに、俺にとっても悪いことばっかりじゃ無かった。
《鑑定》で俺のステータスを見たら……。
《錬金》のスキルレベルか11に上がっていたのだ。
一気に7も上がったんだぞ。
そして、《錬金》のスキルレベルが10になった事で新しい技能も解放されたのだ。
その名も錬成。
これは対象の不純物を取り除き、純度の高いアイテムを作り出す事ができるみたいだ。
鍛治で言う精錬の、《錬金》バージョンって感じ。
例えば、鉄鉱石があったとする。
それを錬成する。
すると……。
錬成が成功した場合には、鉄鉱石が鉄に変わるのだ。
これだけ聞くと便利でしょ?
俺もそう思う。
だが、失敗すると……。
真っ黒な灰になってしまうという訳だ。
鉄鉱石は無駄になる。
そして、倉庫には鉄鉱石なんて物はない。
代わりにあるのはレア度が無駄に高い、純魔銀鉱石なんて鉱石……。
これを素材に錬成でもしたら、絶対に失敗する。
まだ錬成を覚えたてなのに、いきなりレア度8を錬成するなんて……成功するはずが無いのだ。
そんな訳で、俺は錬成を試してみる気はない。
そしてもう一度、錬金をしてみようと思う。
さっきは失敗した。
だが、それは当然だったのだ。
スキルレベルが4で、レア度8からレア度9を錬金できるはずが無かった。
出来たらバランス崩壊。
しかしだ。
今の《錬金》のスキルレベルは11。
今の状態でレア度1のアイテムを錬金する。
これなら、成功率はとても高いと思う。
……というのが俺の考えだ。
結構、理にかなってるんじゃないかな?
うん。早速やってみたいと思う。
では、肝心の素材は何にしようかな?
レア度は1が良い。
炭鉱から適当な石を拾ってくるか。
ただの石ならレア度も低いはず。
俺は、倉庫から出て右のドアに入った。
右のドアは炭鉱だ。
そして、道の床に落ちている石を《鑑定》。
石の大きさはゴルフボールくらいだ。
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名称 石 レア度1
何処にでも落ちている何の変哲もないただの石。その価値は低いが、加工によっては使える素材になる可能性もある。工夫次第で化ける、基本の素材アイテム。
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おっ。
いい感じじゃない?
これなら、失敗する事は無いと思う。
もし失敗したとしても、マイナスにはならない。
何処にもある石だもんね。
これで、ようやく《錬金》というのを体験できる。
ちょっとワクワクする。
俺は急ぎ足で隣の錬金室へと歩いた。




