不本意ながら
【ログイン6日目】
はい。
街の近くに到着しました。
俺の約100メートル先に入り口が見える。
縦が約10メートル。
横が約20メートル。
なかなか大きい門になっている。
その門の大きさに負けないほど、この街は広いのだ。
まあ、プレイヤーが10万人入っても大丈夫なように設計されてるんだろうし当然か。
いつかは街の中に入ってみたいなぁ。
でも、魔物の姿じゃ無理かなー。
ちょっと悲しい。
俺は《潜伏》を発動しながら待機している。
先にプレイヤーを見つけるためにだ。
どうやら、レベルアップのおかげで視力も良くなったらしいのだ。
それと同じく、嗅覚、聴覚、味覚、触覚も鋭くなった。
五感が鋭くなると色々と便利だな。
なんか、どんどん魔物っぽくなってる気がするなー。
良いのか、悪いのか……。
まあ、今はプレイヤーを倒す事に集中だな。
思考を切り替える。
人間、切り替えの良さが大事なのだ。
メリハリとも言う。
そんな訳でプレイヤーが来るのを待っている。
もう30分くらい待機していた。
まだかなー、ってな。
以外と30分って長いんだね。
身をもって実感したよ。
じゃあ、その間に思いついた事を幾つか試そうかな。
暇だからね……。
早速、始めるとしよう!
思いついた事は幾つかある。
その一つが《付与魔法》。
まだ良く分かってない魔法だ。
この魔法は自分の持つ魔法の属性を、他の対象に付与できる。
マーナさんの作ったゴーレムを倒した時に、成功したやつだな。
あの時は、自分の爪に火属性を付与した。
若干、爪が燃えていてカッコ良かったのだ。
それでしばらく遊んでた。
すると、少し分かったことがあった。
実は、自分の爪に火属性を付与してる時、同時に自分のHPも少しずつ削れるのだ。
しかも、それは付与した表面積によって違う。
表面積が大きいほど、ダメージが大きくなる。
試しに、体全体に火魔法を付与したら……。
カッコ良かったけど……リスポーンする所だった。
いきなり実戦で使ったら間抜けな死に方だ。
いまの内に解明できて良かっただろう。
しばらくHPの回復をまった。
あ、ちなみにHPは自動で回復する。
GMから説明された時に教えられたのだ。
魔物は空中の魔素から生まれ、魔素によって体を保っている。よって魔素があれば自動でHPが回復するということをな。
しかも、回復速度も以外と速く、5分くらいで全快した。
魔物さまさまである。
話を戻すが、付与をして自分のHPが削れるのは火属性だけだった。
他の3属性も試してみた。もちろん影と光も。
すると、それぞれの性質が現れた。
水は支援。風は貫通。土は防御。影は状態異常。光は回復。
こんな感じの効果だった。
風は使う場面が多くなりそうだな。
消費するMPは10なので、いまの俺のMPだと安定して使うことは難しい。
すぐにMPが切れてしまうだろう。
だがしかし!
こちらもHP同様、自動回復できるのだ!
理屈は同じ。
魔物って便利な体だよな。
MPも5分経てば全快だ。
というか、使ったそばから回復するから全く減らない。
実質、無限みたいなものだ。
水属性を手足に付与すると、足が速くなった。
体全体に付与すると自動回復の効果もあるらしかった。
風属性を手足に付与すると、貫通力が上がった。
体全体に付与するとジャンプ力が上がった。
土属性を手足に付与すると、防御力が上がった。
体全体に付与すると防御力が大きく上がる代わりに、足が少し遅くなった。
影属性を手足に付与すると、触れた相手に状態異常を与える。体全体に付与すると潜伏の効果が上がる。
光属性を手足に付与すると、自動回復。
体全体に付与すると状態異常耐性がつき、自動回復もする。
やっぱり、影と光は効果も強力だな。
だがデメリットは勿論ある。
影属性と光属性を付与するときだけ、消費MPが20になるのだ。
MPを2倍も消費する事になる。
これは使いどころを制限されるなー。
緊急時にしか使わないようにしないと。
切り札的な存在にしておく。
もう一つ、試したことがある。
ずっと気になってた事だ。
魔法に魔法を付与したらどうなるの?
っという素朴な疑問だ。
気になるでしょ?
MPの消費は凄まじいことになりそうだが、とにかく気になってしまうのでやってみた。
ファイヤボールに火属性を付与。
多分、攻撃力が上がったのかな? 分かりづらい。
ウォーターボールに水属性を付与。
これも同じく。
ブリーズボールに風属性を付与。
――同じく。
ソイルボールに土属性を付与。
――同じく。
シャドウショックに闇属性を付与。
――同じく。
ライトショックに光属性を付与。
――同じく。
合計で九つの実験を行った。
MPがスッカラカンになってしまったな。
実験結果は、どれも威力が上がるだけ。
特殊な効果なんかは何もなかった。
ちなみに《光魔法》のライトショックの効果は、シャドウショックと同じで、触れた相手に{盲目}の状態異常を与えるというものだった。
うん。全く同じだな。
MPの消費も同じだし、使い分ける必要があるのかな?
完全に使う人の好みの問題になりそうだな。
俺? 俺は勿論、シャドウショックだよ。
《影魔法》の方が雰囲気に合ってるだろ?
まぁ、実を言うとこの実験の意味はあまり無かった。
少し威力が上がるだけで、MP消費は凄まじい。
コスパが悪すぎる。
わざわざ使う必要は無い。
普通に魔法を使った方が断然、良いのだ。
しかし、本命の実験は別にある。
《付与魔法》を取得した時から考えていた事。
違う属性同士で付与し合ったらどうなるの?
……という実験だ!
もし、これが可能ならば。
火と土を合わせて、溶岩を作ったり。
水と光でさらに強力な回復効果なんかも出来るかも。
戦い方の幅も広がるし、良い事づくめだ!
じゃあ、早速……実験だ!
まずはファイヤボールに土属性を付与します。
上手く行けば溶岩とかになるかも……?
……。
…………。
………………。
あれ? あれれ?
《付与魔法》が発動しないぞ?
ファイヤボール自体は発動している。
だが肝心の付与ができないのだ。
ただのファイヤボール……。
失敗か……。
うぅーん。
どうやら違う属性同士で付与をする事は出来ないみたいだな。
悲しい。
せっかく、良いアイディアだと思ったのに。
やっぱり、これで溶岩とかが簡単に作れるような甘いゲームでは無かったらしい。
まあ、俺の《付与魔法》のレベルが足りないだけかもしれないけどね?
だが、そうだとしたら……いつかは出来るようになるかもしれない。
あといくつ上げればいいのか……。
今、実験しただけでも《付与魔法》のレベルはかなり上がっていると思う。
まあ、ステータスは見てないけどね。
レベルは上がっている事を願うとして……、いまの《付与魔法》で出来ることはもう全て試してしまった。
結果としては、もっと《付与魔法》のレベルを上げよう! という感じだ。
いま出来ることは少ないが、レベルが上がってきたら絶対に有力なスキルになると思う!
としか今は言えないよねー。
他のスキルと上手く組み合わせながら使いたい。
組み合わせによっては、凄い効果も期待できるかも。
まあ、それも《付与魔法》のレベルを上げなきゃいけないんだけど。
はあ…………コツコツとやりますよ……。
実は、俺がこんな実験をやっている間にも時間はかなり経っているのだ。
感覚的に、約1時間くらいだと思う。
そうすると、俺は合計で約1時間半もここで待機してた事になる。
なのに…………。
プレイヤーが一人も来ない。
それって、おかしくない?
だって、このゲームのプレイヤーって10万人くらいいるんだよ?
しかも、現実では時間は昼なのだ。
5万人くらいプレイヤーがログインしている可能性も全然ある。というか、その可能性の方が高い。
そして、このゲームはまだ始まったばっかりだから、皆んなレベルを上げようと必死のはずなのだ。
それなのに……一人も来ないってあり得る!?
意味が分からん。
皆んな草原で、レベル上げてんのか?
絶対に効率が悪いと思うけどね。
というか…………誰かしら来いよ!
って言うのが本音。
このまま誰も来ないなら……。
俺が直接、乗り込んでやるってのもありかな?
うん。それなら沢山のプレイヤーを狩れそうだな。
……採用。
さて、何人狩れるかなぁ?
ふっふっふ。楽しみだ――――
「――――大丈夫だって! 俺らのレベルもめっちゃ上がったからさ! リベンジだよ! 行こーぜ!」
「でもなぁ。掲示板でも危ないって書いてあったし…………」
「レベル上がったって言っても、19だぜ? まだ早いんじゃ無いの? 辞めといた方が……」
「大丈夫、大丈夫! 3人なら余裕だって!」
「前もそう言ってやられたんじゃん」
「そうだよ! ヤバイって!」
「いや、ここまで来たんだからやろうぜ! な?」
「はぁ。もし、やられたらお前の所為だからな」
「ほんとだよ!」
あ、来た!
なんか馬鹿っぽい感じな3人組の男たちだ。
それぞれ武器を持っている。
剣、槍、弓だな。
近距離、中距離、遠距離と役割がちゃんと分かれてる。なかなか合理的なパーティーだな。馬鹿と言ったのは訂正だ。
強いのかは知らないが。
服装はそんなに強く無さそうだが、初心者装備じゃないのは間違いない。
レベルも19って言ってたし、実力があるのは間違いないだろう。ま、俺のレベルは30だけどな!
そして、いま話してた内容が森にプレイヤーが来ない原因のようだな。
掲示板で森が危ないって書いてた、……か。
それが一番の原因だな。
しかも、それを書いたやつは少なからずプレイヤーから信用されているようだ。
おかげで、俺は困るという事態になった。
コイツらが、それを無視して来る馬鹿で良かった。
まあ、正しくは剣を持ったコイツだがな。
なので楽しく話している3人には、申し訳ないが街に戻ってもらうとしよう。
少々、手荒な方でな。
3人組は、まだ話しながら森を進んでいる。
俺はそれを後ろから尾行。
もちろん《潜伏》は発動している。
もはや、これ無くては安心できないほど依存してしまっている。
便利だからなー。
だが、それにしてもコイツら無警戒過ぎないか?
まだ喋りながら歩いてるぞ。
弓を持った、か弱そうな印象の男だけは一応周りを見てるみたいだが……それも甘い。
コイツらってこの森で一回やられたんじゃ無かったのか?
やっぱ、馬鹿なのか。
じゃ、遠慮なく狩らせてもらおうか。
ただでさえ時間を食ってんのに、こんな所で時間を取るわけにはいかないのだ。
俺は、背後から音も無く近づく。
気づいた様子は全く無い。
呑気にお喋りしてるな。
後、3メートル……2メートル……1メートル。
ここまでは近付いても喋ってる。
逆に凄いな。
じゃあ、サクッと片付けますかね。
手に《付与魔法》で風属性を付与する。火属性だと音がなって気づかれちゃうかもしれないし。
手に黄緑色の膜のようなものを確認。
良し、これで貫通力が上がったはずだ。
では!
並んで立っている男の心臓を、一刺し! 二刺し!
最後の一人を若干遅れて、三刺し!
心臓をピンポイントで貫いたから一撃でさようなら。
完璧なスニークキルだったね!
若干グロいけど、気にしない。
死体は直ぐに消えるし、問題はない。
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称号、〈暗殺者〉を獲得。
消費SP 0で《不意打》スキルを取得可能。
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称号、〈PK〉を獲得。
消費SP 0で《偽装》スキルを取得可能。
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はい来た。やったぁ!
1時間半の成果はあった!
充分です!
称号はかなり物騒だけど、スキルが欲しかったからこの際仕方ない。許してやろう。
念願のスキルが手に入ったぁ!
やったぁぁぁ!
おっと。
嬉しさのあまり、遠吠えをしてしまった。
フフフ。
スキルを取得して効果の確認しながら、マーナさんの所に帰ろっと!
俺はもう一度言う。
やったぁぁぁ!!
ま、実はそこまで欲しかったわけじゃ無いけどね。
てか、この称号ってかなり人聞き悪いな。
まあ、気にしないんだけど。
修正《付与魔法》光




