訪問
【ログイン5日目】
あれれー?
エリアボスさーん?
不在ですかーー?
早く出てきて下さいー。
今、俺は恐怖している。
まあ、この状況なら誰でも恐怖するだろうな。
逆にしない人を尊敬する。
てか、そんな人いる……?
何故そんな事になっているかって?
それは簡単。
俺は現在進行形で洞窟を進んでいるからだ。
いかにもホラーチックな洞窟だ。
洞窟の壁からは水が滴り、天井には蝙蝠がぶら下がり時折り鳴き、何やら良くない声も聞こえる。
男性の薄気味悪い笑い声や、女性の甲高い悲鳴など。
たまに赤子の鳴き声まで……。
そして何より。
真っ暗なのだ。
洞窟の壁に生えている苔が発する、微量の光だけを頼りに壁伝いに進んでいる。
怖いよ……。
実は、俺は農業系ゲームの他にも苦手なゲームがある。
……ホラーゲームだ。
もちろん苦手な理由はある。
俺はもともと、そこまでホラーゲームが苦手なわけでは無かったのだ。
しかし俺が中1の頃、初めてホラーゲームというものをパソコンでやった事があった。
不運にも、その時にプレイしたゲームが、ホラーゲームの中でも特に怖いと言われていたゲームだったのだ。
俺はそれを知らずに、楽観的にプレイした。
……夜の12時にな。
その時の俺は、初めてのホラーゲームというのもあり、少し気合が入っていたのだ。
どうせなら雰囲気を楽しむ為に夜にプレイしよう!
と、今では考えられない事を実行したのだ。
…………そこからは想像通り。
その一件から、俺はホラーゲームがトラウマとなってしまった。
ホラーという概念そのものが苦手となったのだ。
遊園地のお化け屋敷なんかも無理だし。
夜遅くの暗い道なんかも無理だ。
その場のシチュエーションがホラーに近いと、もうギブアップになってしまう。
それほど苦手だ。
そんな俺が今、暗い洞窟を進んでいるのだ。
どれだけ頑張っていると思う?
褒めて欲しい。
てか、こんな事になったのも全部エリアボスの所為なんだよ。
何故なら、俺が前に倒された場所にエリアボスが居なかったのだ。
当然の事ながら、俺はエリアボスを探した。
周りの茂みの中も確認した。
しかし居なかったのだ。
そうすると、ここの洞窟しか行くところは無かった。
しかもこの洞窟。
森のエリアボスが通れるほどの大きさなのだ。
エリアボスがこの先にいるかな、って誰でも思うよね?
俺はそうして洞窟に入ったのだ。
はぁ……。
今はその選択を激しく後悔しています。
怖いよぉ!
何回、後ろを振り向いたことか……。
そして何回、前を向き直すときにビビったことか。
大体、前に向き直すときに幽霊ってくるよね?
こういう無駄な知識が、恐怖に拍車をかけているに違いない。
いや、待てよ……?
なんかの本で、幽霊は怯えている人に寄ってくる。
……なんてのを聞いた事がある。
その理論だと。
真っ先に来るのは俺のところだ。
もういっその事、全力で駆け抜けた方が良いのでは?
閃いた。
いちいち怖がっていくより、一気に走った方が楽だ。
だが問題はタイミング。
いつ走るかである。
水滴の落ちる音が洞窟に響く。
ピション………………。
今だ!!!!!
覚悟を決めて走る。
全力疾走だ。
何か出てきたら怖いので、目は瞑っておく。
どうせ暗くて見えないのだから一緒だろ。
風の感触だけが感じられる。
……ドン!!
何かにぶつかった。
だが、何故か痛みは感じない。
何にぶつかったんだ?
と、目を瞑ったまま脳内にハテナを浮かべる。
何にぶつかったか確かめる為に、恐る恐る目を開けようとした瞬間。
『やっと来ましたか。2日ぶりですね。……登場の仕方は中々のインパクトがありましたよ?』
少し楽しそうな表情のエリアボスさんが、目の前に座っていたのだった。
「本当にすいませんでした!!」
「反省しています。許してください!」
とりあえず謝っておく。
もちろん土下座スタイルでな。
まあ、魔物式ではあるが。
余裕そうに考えているが、本音では。
許してくれるかな? 殺されないかな?
と怯え切っている。
事実、怖い顔してるし。
だが、そんな俺の予想とは反対に。
『そんな怯えた顔をしなくとも怒りはしないよ』
と軽く許された。
少し微笑も入っていた気がする。
実は良い奴なのかもしれない。
目の前のエリアボスは相変わらず大きい。
俺の体格の10倍はあるだろう。
身体は白の体毛に覆われていて、瞳は綺麗なエメラルドグリーンだ。
もっと小さい奴をペットに欲しい。
俺はここまでの会話で分かった事がある。
このエリアボス。
おそらく、女性なのだ。
喋りかたが女っぽい。声も綺麗だし。
それに、俺が今いる空間が妙に綺麗なのだ。
どうやら、洞窟の奥はエリアボスの生活スペースになっているらしい。
体格が大きいエリアボスでも窮屈にならずに入るほどの天井と横幅の空間。
天井や壁には、見たこともない光る鉱石が無数に散りばめられている。
それが洞窟の雰囲気と合っていて、とても神秘的だ。
思わず、俺はその光景に見惚れていた。
だが、直ぐに正気に戻った。
反射的にエリアボスの方を見ると、エリアボスと目が合った。
どうやら、俺の事を待っていてくれたらしい。
やっぱり良い奴だな。
俺は早速、本題を投げかけてみる。
《念話》を通してな。
「えっと……何故、俺をここに呼んだんですか?」
『敬語を使わなくて良い。自然体でいなさい』
慣れない敬語を使ったのが見透かされていたかな?
気を使わせてしまったようだ。
まあ、エリアボスさんが許可してくれたのなら遠慮なく使わせてもらうとしよう。
俺は現実と同じ口調で話す。
「じゃあ、遠慮なく聞く。何故、わざわざ俺をこんな所に呼んだんだ? 何か目的があるのか? 納得できる説明が欲しいんだけど」
『まず、あなたを呼んだのには目的があります。それは、私のお願いを聞いてもらうため。』
「で、それは何なんだ?」
『――貴方に私の弟子となって貰いたい』
…………え?
いや、ちょい待て。
「ごめん、もう一回お願い」
『私の弟子になって欲しい』
あ、はい。
聞き間違いじゃ無かったのね。
なおさら混乱するけど。
ていうか、弟子入りって普通は立場が逆じゃないの?
俺側が一生懸命にお願いして、弟子入りを認めてもらうって順序が正しいと思うのだが。
現在、真逆のことが起きてるよ。
普通に考えておかしい。
うん。明らかにおかしいだろう!
「弟子ってどういう事?」
「それであなたに何のメリットが?」
「何故、弟子を取る必要が?」
とりあえず、気になる事を質問してみた。
本当はもっとあるが、相手のことを考えたのだ。
気を使わせてしまったからな。
恩返し(?)だ。
『分かった。説明しよう』
『まず、弟子という事だが、単純に貴方が弟子で私が師匠という形になる。そして、貴方に様々なスキルの使い方や知識や戦い方を指導する。ちなみに、私のステータスについても少し教えてあげよう』
『次の質問についてだけど……これは最後の質問の答えとも被る。まずは私のステータスを少しみてもらった方が早い。……貴方の《鑑定》で見てみるといい』
あ、はい。
他に気になる箇所はあるが、先に言われたことをやるか。
俺は遠慮なく、エリアボスさんに《鑑定》をかけた。
すると、問題なく《鑑定》は通った。
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ステータス
レベル ??? ※鑑定できません。
名前 マーナ
種族 エンシェントウルフ
職業 守護者・導者
パラメータ
HP 999
MP 999
筋力 999 速力 999 防力 999
器力 999 精力 999
スキル
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※鑑定できません。
SP???
EP???
????? ※鑑定できません。
称号
????????????????????
????????????????????
※鑑定できません。
_________________________________________
おう…………。
次元が違うや……。
各パラメータが999って。
おかしいじゃん。
てか、スキルの量。
おかしいじゃん。
レベル3桁。
おかしいじゃん。
いや。おかしいじゃん!!
これは敬語使わなきゃマズいなぁ。




