歩み
【ログイン2日目】
歩く。
歩く。
ずっと歩く。
たまに隠れながら歩く。
歩く。
歩く。
どれくらい経っただろうか?
もう10分は歩いた気がする。
そろそろ飽きてきた。
ずっと同じ景色なのだから、飽きるのは当然だと思う。
木、木、木、草、ウルフ…………。
こればっかりだ。
ウルフと何回出会ったのかも覚えてない。
それほどの数なのだ。
まあ、ホワイトウルフとの戦いに勝利した俺だから、もう普通のウルフなんかで焦ったり驚いたりはしない。
冷静に対処している。
そういう理由もあり、同じような事ばっかりでちょっと飽きてきたのだ。
森の最奥には後どれくらいかな?
《地図》が使えないのも辛い。
目的地が分からないから、適当に進んでいるだけだ。
本当に方向が合っているのかなー?
不安はある。
しょうがないけど。
しかし森が広すぎるのも問題だな。
多分、全長が数十キロメートルはありそうだ。
とても、1日や2日では攻略できない構造になっているのだろう。
確か、初期のエリアは2種類あった筈だ。
1つ目は、俺が今いる森のエリア。
2つ目が、俺と反対の場所にある草原エリア。
説明書を流し読みした記憶によると、この2つだった。
そして、この2つのエリアの中央に人の街が存在していて、両方のエリアに入れるようになっている。
俺は無理だけど。
で、この2つのエリアにはそれぞれエリアボスが存在している。
そのボスを倒すと、次のエリアが解放される。
こうして、エリアをどんどん解放していくのが主な攻略だ。
しかし、ここで疑問があるのだ。
エリアをどんどん解放していくのは人種プレイヤーの攻略。
だが、俺は魔物だ。
ならば魔物は何をすれば良い?
同じようにエリアを解放すればいいのか、それとも人種プレイヤーのエリア解放を魔物として妨害すればいいのか、それとも別の何かがあるのか……。
ちょっと前から気になっていた事。
このゲームでの魔物プレイヤーの立ち位置がまだ分からない。
しかし魔物という種族を選択できるのだから、何かがあるのだろうが……。
そこまでは見通せない。
はあ。
相変わらず情報が足りない。
他の魔物プレイヤーと会えたりして、情報交換とか出来ればいいけど……。
――――っあ‼︎
そういえば。
掲示板があったじゃんか!
これで情報共有が出来るかも。
というか、魔物も種族として選択できる事を書き込めば無闇に殺されたりしないかもしれない。
あ、《念話》いらないじゃん。
いや!
《念話》は《念力》を取得するのに必要だった。
決して、無駄なんかじゃない。
俺はそう自分を説得しながらメニューを開き、掲示板と表記された項目をタップした。
しかし、俺も随分とスムーズに体を動かせるようになったな。
------------------------------------------------------------------------
掲示板
------------------------------------------------------------------------
※現在、魔物プレイヤーが1名のみの為掲示板は利用できません。最低、2名から利用が出来ます。なお、人種プレイヤーの掲示板を観覧することは出来ません。人種プレイヤーからこちらの掲示板を観覧することも出来ません。
-------------------------------------------------------------------------
あー。
うん、なるほど。
ちょっと予想してたよ。
この感じだと魔物プレイヤーと人種プレイヤーは対立しそうだなー。
お互いの掲示板を見れないとか、喧嘩の種でしか無いよ。
しかし困った。
これじゃあ、さっきと何も変わらない。
情報を得られないどころか人種プレイヤーにメッセージも送ることが出来ない。
そうすると、魔物プレイヤーから人種プレイヤーにメッセージを送る事はもう出来ないかもしれない。
俺みたいに《念話》を持っていれば別だが、わざわざ最初に《念話》を取るような奴は俺以外にいないだろう。
SP10もするし。
そして《念話》を持っていても、問答無用で攻撃されれば意味がない。
俺にも《念話》をする余裕など無いし、人種プレイヤー側も耳を傾けるとは思えないからだ。
すなわち、掲示板が頼りだったのだ。
あーあ。
掲示板で安全な所から書き込もうと思ったけど。
見事に打ち砕かれた。
やはり、そう簡単な事では無いらしい。
そして、この問題は魔物プレイヤーの課題だ。
解決するかは知らないけどね。
だが、最も重要な箇所がある。
最初の一文に注目して欲しい。
現在、魔物プレイヤーが1名…………?
ひとり。
うん、俺の事だよな。
…………ひとり……。
いやいや、おかしいって。
独りなわけないよ。
だって、テレビの人が言ってたじゃん。
プレイヤーの数は十万人を超えるでしょう、って。
十万人もいれば1000人くらいは魔物に気付くでしょ。多分。
だって、俺程度の人間が気づいたんだよー。
あ、でも。
気づいても選ぶ人はいなかったのか……。
納得だ。
魔物のデメリットの大きさに諦めた人が大半だったのだろう。
え、ということは俺ってバカ……?
十万人で唯一の魔物プレイヤーってこと?
今のところ。
現実はそうだけど……。
ちょっと悲しい。
なんか、ぼっち……って感じ。
後、1人くらい魔物のプレイヤーがいれば違ったーだけどなー。
誰か来てくんないかなー。
来て欲しいなー。
俺は、少し悲しい気持ちになりながらも森の最奥へと歩みを進める。
嬉しい事に《潜伏》のレベルが上がったおかげかレベル20台のウルフに感づかれる事もなくなり、とてもスムーズに進むことが出来ていた。
もちろん彷徨うウルフに《鑑定》を掛ける事も忘れずにやっている。
スキルレベル上げは欠かさないのだ。
歩く。
歩く。
歩く。
かれこれ10分は移動している筈だが、全く進んでいる気がしない。
流石、最深部だと言いたいところだが今は迷惑極まりない。
これなら草原エリアの方が楽なんじゃないかな?
そう思えてくる程に鬱陶しい。
木や背丈が高い草が多く生い茂っているのだ。
それに比べて、草原なら木はないし草も少ししか生えてない。
森よりも何倍も楽だと思う。
しかし残念なことに、草原には身を隠す為の遮蔽物が何もないから俺が戦いずらいのだ。
そう考えると森で良かったのだが……。
複雑だな。
そんなどうでも良い事を考えていると。
目の前に変化が現れた。
もう2度目となる、警告を知らせるウィンドウが表示されたのだ。
=========================================
警告!!
この先を進むと、エリアボス戦が開始されます。エリアボスは通常の魔物と異なり、高い知能を有しており魔法やスキルを多数使います。エリアボス戦の人数制限はありません。なお、エリアボス戦が開始した場合の途中退場は可能です。その場合、経験値、ドロップアイテム、ロストアイテムなどは、持ち帰ることが出来ません。充分に注意してお進み下さい。
=========================================
あー、なるほど。
まとめると。
エリアボスはとっても強いから気をつけてね。
って注意か。
明らかに1人で挑むもんじゃないな。
普通は挑もうと考えないと思うけど。
だが、ここまで来たんだし行こうと思う。
それに良く見ると、途中で退場できるみたいだし。
ちょっと様子見て、ヤバそうだったら帰ってくることにしようかな。
デメリットも大したことないしさ。
《潜伏》しながら、バレないなら《鑑定》しよう。
いや、バレたとしてもせめて《鑑定》しよう。
エリアボスだから、それだけでも《鑑定》に沢山の経験値が入るかも……?
《鑑定》のレベルアップだけでも充分だよ。
森の最奥がエリアボスの場所ってのは分かったし、リスポーンしたらレベル上げだね。
ダメで元々って気持ちで、挑もうかな。
どんな見かけだろう?
カッコよかったらいいなー。
ちょっと楽しみになって来た。
俺は楽観的な思考のまま警告を無視して森の最奥、エリアボスの待つ場所へと歩みを進めた。




