危険地帯
【ログイン2日目】
警告された訳だが……。
ここで進まない訳がない。
死に戻りしてもいいから、行くつもりだ。
単純に気になるし。
殺されそうになっても《鑑定》するだけしよう。
情報は得られるからな。
それだけでも、充分な成果だと思う。
だが確実にまだレベルが足りていないだろうから、死に戻りしてきたら、レベル上げを頑張ろう。
たったレベル10で最深部に行こうなどというのも、おかしい気がするけど。
意味のない猪突猛進じゃないんだし。
許される範囲だろう。
だが、問題がある。
俺の《潜伏》が充分に機能するかというところだ。
ぶっちゃけ、最深部での俺の生命線は《潜伏》のみだと思う。
《念力》で出来る事など、たかが知れてるし。
《爪撃》での攻撃も意味がないだろう。
そう考えると俺の取れる手段は、《潜伏》で隠れてやり過ごす。
これ1つだろう。
そうすると、俺のレベルは上がらないがな。
まあ、仕方ないことだ。
じゃあ、早速行こうかな。
俺は警告のウィンドウを操作した。
YES、と。
瞬間、ウィンドウは消し去り静かな森が目の前に現れた。
太陽の光が届いていない箇所が多い。
とても暗いのだ。
最深部という雰囲気はある。
俺は《潜伏》を発動させながら、森の最深部へと進んで行った。
☆☆☆
危ねー!
俺の存在を感じ取ったウルフから隠れながら、俺は心の中で叫んでいた。
最深部へ進んでから、約20分。
何度も心臓が爆発しそうになった。
今も、危うくバレそうになったのだ。
《潜伏》を発動しながら進んでいたのだが、最深部ではバレそうになる事が多い。
その理由も複数あるのだが。
まず、一つ目。
悲しい事に、この森の最深部では《地図》スキルが発動しないのだ。
発動自体はしているが、マップが自分の位置だけで周りの地形が全く分からない。方角もだ。
これに何の問題があるかというと……。
俺は《地図》スキルを取得してから、周りの地形を確認しながら、効率的に《潜伏》を使って行動していたのだ。
その前は、目で確認していたけど。
目で確認も出来ていたんだし、一時的に《地図》スキルが使えなくても……。
と思うかもしれない。
しかし、森の最深部は暗い。
完全に見えない訳では無いのが救いだが、それでも見づらいのだ。
そして茂みも最深部というだけあって、背が高く、密集している。
最深部に入る前に比べて、圧倒的に視界が悪いのだ。
《潜伏》がある俺からしたら、この状態は良いかもしれない。
だが同時に、俺も敵を発見しずらいのだ。
一応、《視覚強化》がある筈なんだが……。
そして俺は察知スキルを持っていないので、ほぼ勘で茂みを移動している。かなり危ない状況だ。
これに加えて《地図》スキルも使えない。
最悪のコンボである。
しかし、この最悪のコンボには続きがある。
それは俺が敵を発見した瞬間に分かったのだ。
俺が発見したウルフ。
それは明らかに体格が違った。
最深部の大きくなった木樹に比例したような。
俺の1.5倍ほどの大きさだったのだ。
凶悪な体格をしていた。
あんなの勝てるわけないよ。
俺の《潜伏》が破られなかったのが奇跡的だと思う。
反射的に《鑑定》を発動した。
結果は予想通り。
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ステータス
レベル 24
種族 ウルフ
パラメータ
HP 52
MP 20
速力 28 筋力 32 防力 21
器力 12 精力 4
スキル
〔種族スキル〕《爪撃》LV.19《噛撃》LV.12
〔通常スキル〕《嗅覚強化》LV.9《速力強化》LV.10
《風魔法》LV.9《夜目》LV.3
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レベル高すぎー。
スキルレベル高すぎー。
筋力高すぎー。
見た事ないスキルー。
見て思った事はこんなとこだ。
こんぐらい言うのは許して欲しい。
差が激しすぎる。
だが、パラメータに関しては俺が勝っている所があるのだ。
レベルが10以上離れているのに。
そう考えると、俺がレベル20越えしたらこのウルフのステータスを軽々と超えそうだな。
やはり魔物プレイヤーのパラメータには補正が入っているようだな。
安心、安心。
しかし、普通の魔物はHPが凄く高いな。
まだウルフしか見てないけど。
俺のパラメータは全て均一だからなー。
レベル11から伸び方が違う事を祈る。
ウルフのパラメータの特徴も大体わかったな。
レベル5、10、20のウルフを《鑑定》で見た。
その殆どがHP、筋力、速力、MP、防力、器力、精力の順番で高かった。
ウルフは接近戦タイプなのだろう。
まあ、接近戦タイプでもMPが高いのは《風魔法》も使うからだろうけど。
もしかしたらウルフって実は強い魔物かも?
普通に考えて、近接も出来て魔法も出来るって強くない?
そして、《嗅覚強化》も持ってると。
強くね?
まあ、それは良いとしてだ。
俺が今、1番欲しいスキルをこのウルフは持っていた。
《夜目》だ。
名前から察すると、暗い場所でもよく見える。
みたいなスキルだと思う。
地味に便利そうなスキルだ。
どっかのスキルと違って、ちゃんと効果ありそうだし。
取得しときたいが、後で落ち着いた時に取得するとしよう。
ここじゃ、そんな暇は無い。
でも、ウルフってここまで育てるとこんなに強いんだなー。
典型的なオールラウンダーじゃないか。
特に《嗅覚強化》。
レベルも9と高い。
察知系のスキルが早く欲しいなー。
ん? そういえば。
俺の《潜伏》でウルフから隠れられてたよな。
でも、ウルフの《嗅覚強化》はレベル9。
俺の《潜伏》はレベル6。
レベルが3も違うのに、隠れきれていた。
そう考えると、《潜伏》凄いな。
もっと確実性を上げるために早くスキルレベルが上がって欲しいが。
こんな、レベルとパラメータ差にビビるまくりな俺である。
本来なら帰ろうとも思ったのだ。
でも、ここまで来たことだし最奥まで行こうかなー。
最奥には何があるかなー?
という好奇心に負けた。
なので、今も北に向けて行進している。
何となくだが進むにつれ、暗さが増していっている。
というのは、気のせいであって欲しい。
そんな思考をしながらも、俺は北(正確には分からないが)を目指して進むのであった。
1匹ー。
2匹ー。
3匹ー。
4匹ー。
5匹ー。
6匹ー。
7匹ー。
8匹ー。
9匹ー。
じゅっぴ………………え⁉︎
「ウォ(え)⁉︎」
あ、声に出してしまった。
俺の前にいる問題のウルフは、声に気づいたのか周りを見渡している。
危ない、危ない。
割とアウトな気もするけど。
だが、俺が声に出す程に驚いても無理は無いと思う。
だって、明らかにおかしいもん。
目の前のウルフの体格は決して大きい訳では無い。
俺より少し大きいくらいである。
これくらいなら、これまでいたレベル20前後のウルフの方がよっぽど体格は大きかった。
このウルフと、他のウルフの違う所。
それは。
色だ。
細かく言うと、毛並みの色だ。
俺も含む、他のウルフの毛並みの色はすべてグレーだった。
しかし、このウルフの毛並みの色は。
白。
グレーでは無いのだ。
そら驚くな、と言う方が無理だ。
しょうがないだろう。
早速、鑑定してみたが。
結果は驚いた。
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ステータス
レベル 2
種族 ホワイトウルフ
パラメータ
HP 75
MP 28
速力 39 筋力 53 防力 29
器力 17 精力 9
スキル
〔種族スキル〕《爪撃》LV.25《噛撃》LV.19
《強腕》LV.1
〔通常スキル〕《嗅覚強化》LV.14
《速力強化》LV.16《風魔法》LV.9《夜目》LV.6
《統率》LV.1
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はあ…………。
だから、差が激しすぎるんだって。
パラメータ上がりすぎ。
俺さっき、ウルフって強くね?
……って言ってたのに。
何で、そのウルフの上位互換みたいなの持ってくんだろうね。
嫌がらせですか?
まだGMが魔物を諦めろ、と遠回しに言ってんの?
これもう、いつ《潜伏》が破られてもおかしく無いじゃん。
というか、破られて無いのがおかしくない?
《潜伏》優秀かよ。
だからと言って、俺は動かないけどな。
ホワイトウルフさんが何処かへ行ってくれるのを待っておこう。
この先もホワイトウルフ並みの魔物が出てくるなら、かなりキツイぞ。
そして、頑張って進んだとして。
最奥に行けたとして。
そこに何も無かったら…………。
俺、怒るからな。……いやほんとに。




