可能性
【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)
【イベント1日目】
「死んだぁー!」
リスポーンした場所はマーナさんの洞窟だった。
俺は起き上がると同時に悔しさから叫んでしまう。
魔法の嵐にHPが耐え切れなかった。
一つ一つのダメージは少なかったが数が多すぎた。
通常なら《耐久》などのスキルが発動するのでもう少し耐えられたと思うが、それもこれも全て{断罪}とかいうもののせいだ。
ステータスを開く。
するとまだ{断罪}の状態は続いていた。
「マジかよ……」
まだスキルは使えないみたいだ。
しかし、イベント的にはどういう処理になったんだろうか。
もう一度あのイベントエリアにいけると信じてメニュー画面からイベント項目に飛んだ。
すると、ウィンドウが表示された。
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【お知らせ】
山村のエリアボスとして討伐されました。これより人類側、魔物側として復活することは出来ません。イベント終了後、エリアボスを担当したプレイヤーに特別報酬をお送りします。
別エリアの観戦が可能です。
【湿林】
【墓地】
【洞窟】
※このメッセージはサクヤ様宛てに送っています。
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どうやら俺の役目は終わったらしい。
……ふざけてんのか。
つい口が悪くなってしまう。
まだ1日目だぞ? それに俺らはエリアボスだったらしい。
魔物プレイヤーとしては当然の役回りなのかもしれないが、一回倒されたら終わりなのを説明もしないのはどうなんだ。
かなり楽しみにしていただけ、沸々と怒りが湧いてくる。
イベントを観戦するだけなのは嫌だ。どうにかして参加出来ないだろうか。
『おや、サクヤ。どうした?』
俺が頭を捻って考えていると、どこからかマーナさんが出てきた。
声が先に聞こえたので少し驚いた。
「久しぶりです。マーナさん」
『最近は修行ができなくて申し訳ない』
「いえ、気にしなくて大丈夫ですよ」
久しぶりに見たマーナさんだが、その雰囲気に変化はなかった。
前回に修行をつけてもらってからかなり時間が空き、俺は比べられないほど強くなった。
それもマーナさんに魔法の修行をつけてもらったからだ。
俺はそこでふとイベントのことを相談してもいいかもしれない、と思った。
マーナさんがイベントについてどのくらい理解があるか分からないが、あのマーナさんだ。話してみても問題にはならないと思う。
「聞きたいんですけど」
『何だ?』
「マーナさん、イベントに行けたりしないですかね……」
『イベント、というのは君たちプレイヤーが移動している場所のことか?』
「そうです!」
話が早い。さすがマーナさんだ。
イベントが何かちゃんと理解しているし、場所も分かってそうだ。
『そこに行きたいのか?』
「はい」
『残念だが今は行けないな』
マーナさんでも行けないらしい。
なら無理か。
『しかし、街にある門を開けてくれれば行けるようになるよ』
一瞬諦めた俺だが、マーナさんの言葉に意識を取り戻す。
街にある門? それを開ける?
「どうやって開けれるんですか」
『サクヤは鍵を持ってないか?』
鍵? 鍵……。
あっ、思い出した。
そういえば鍵らしきアイテムを持っていた。
俺はインベントリからアイテムを取り出した。
《鑑定》はできないので詳細は分からないが、見た目は完全に鍵だ。
たぶんこれのことだろう。
『それだ。それで合ってるよ』
マーナさんが肯定している。
これを街の門に使用すれば良いのか。
『しかし、その状態で行っても同じ結果にならないか?』
「た、確かに……」
『{断罪}とはまた珍しいものを……解除するのに苦労するよ』
マーナさんは溜息を吐いたようだ。
{断罪}は珍しい状態異常らしい。
まだ状態異常自体にあまり出会っていないのでよく分からなかったが、マーナさんが言うなら珍しいんだろう。
そして、マーナさんが言うようにこの状態異常をなんとかしなければイベントに行っても結果は同じだ。
スキルも使えないこんな状態じゃプレイヤーに勝てるわけがない。
「どうやって解除するんですか?」
『ふむ。サクヤは解除するか克服するか、どちらが良い?』
「克服です」
マーナさんの質問に即答する。
克服できるなら克服したほうが絶対いい。
もし解除しても、また同じものに掛かる可能性は大きい。克服していればその時に大きなアドバンテージになる。
『なら、私が適任だな。しかし……』
マーナさんは考えるように黙ってしまった。
克服する手段があるようだ。
手段があるなら出来るだけ早く行動したい。
もう一度イベントに参加するために残された時間は少ない。
4日しかないのだ。明日にはイベントに復帰したい。
そのためにはもう何でもやるしかないのだ。
『仕方ない。サクヤ、修行はこれで終わりだ』
「え?」
マーナさんの予想外の発言に思考が止まる。
俺は間抜けな声を出して固まった。
そして目の前に現れた表示は一度見たことのあるものにとても似ていた。
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ワールドクエスト
《白の試練 》をクリアしました。
クリア報酬
・称号、〈白の先駆者〉を獲得。
消費SP 0で《魔道》スキルを取得可能。
・装備、 ' 封印の指輪 ' を獲得。
・装備、 ' 封印の魔導書 ' を獲得。
・アイテム、 ' 魔力の書 ' を獲得。
・アイテム、 ' 精神の書 ' を獲得。
・???、 " ????? " を取得。
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あれだけ長かったクエストが急に終わった。
言動からマーナさんが終わらせたんだと分かるが、それにしても急すぎる。
クリア報酬はヒルの時とそんなに変わらない。
称号も黒が白になっているだけだし、装備もアイテムも大差ない。
「なんで修行を終わらせたんですか?」
『私が自由に動けないからな』
俺の質問に返ってきた答えは単純だった。
これでマーナさんに課せられた縛りがなくなったのだろうか。
その結果どうなるのかは分からない。
しかし、俺に取って悪いことはない……と思う。
『さて、行こうか』
マーナさんはそう言うと何やら魔法を発動させたようだった。
☆☆☆☆☆
マーナさんが発動させた魔法は転移魔法のようなものだった。
洞窟にゲートのような物が出てきてそれをくぐると、そこは街の中だった。
俺の目の前には門があった。
これがマーナさんが言ってたやつだ。
前にも見たことがあったが、俺はそれと鍵が繋がっているなんて思いもしなかった。
確か、鍵はヒルのクエストでもらったはず。
普通の人類プレイヤーなら気づくか?
俺の勘が鈍いだけかもしれない。
街の広場にプレイヤーはいない。
全員イベントに行っていると思われる。
生産職などの残っているプレイヤーも中にはいるかもしれないが、広場にはいなかった。
俺にとっては好都合だ。
俺の隣にはマーナさんがいる。
建物と同じくらい大きいが、騒がれることはない。
『サクヤよ、開けてくれ』
マーナさんがそう言った。
俺の手には鍵が握られている。
南京錠のされた門に近づいた。
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" 世界の門鍵 " を使用しますか?
【YES】 or 【NO】
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すると、このように表示された。
俺は即座にYESを選択する。
次の瞬間。
俺の視界が光に染まった。
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……確認。転移門が開放されました。
これより一部の制限が解除されます。
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称号、〈開放者〉を獲得。
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称号、〈次元の旅人〉を獲得。
自動的に《旅人》スキルを取得しました。
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……転移地点を確認。転移を開始します。
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