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#16 幼女コノエ

 

 超絶美幼女に連れられて、俺達は冒険者組合2階の一室へとやって来た。


 訓練所の教官室と似た雰囲気だが、そこよりもさらに広い。


 部屋の中央の机を囲むように置かれている広く長いソファに、俺達は並んで腰かけた。


「ふむ。ユエルよ。まずは……自己紹介からかの?」


 そして最後に、銀髪幼女がそう言いながらドカリと、対面するソファに腰を下ろす。

 が、足が床に届いていない……。可愛いなちくしょう。


「シファ。この人は……冒険者組合カルディア支部、支部長のコノエ様よ。わかったら謝りなさい」


 ……やっぱりマジなのか?

 この幼女が支部長? 冒険者組合の?


 チラリと、ルエルとリーネの顔を窺うと、二人も無言で『そうだ』と訴えかけている。


 もう一度俺は、正面に偉そうに座っている銀髪幼女を観察してみた。


 眩しく光る銀色の髪が背中まで伸びている。

 ふさふさの長いまつ毛と綺麗な青い瞳が、彼女の美しさをよりいっそう際立てているようだ。

 少し着崩れした着物の裾から綺麗な足がはみ出し、床に届かないために落ち着かないのだろう……空中でパタパタと遊ばせている。

 ――やっぱり幼女だ。


「これお主……見過ぎじゃぞ。少しは自重せい」


 しかしどうやら、本当にこの人が支部長らしい。


「えっと……さっきは失礼を言ってしまったみたいで。すいませんでした」


「うむ。分かればよいぞ。以後気をつけるようにな」


 何度も大きく頷いて見せる支部長。

 どっからどう見ても10歳くらいの可愛いらしい少女なのだが、どういう経緯で支部長になったのだろうか。

 凄く興味が湧いたが、今は我慢だ。


「さて、ではユエルや。詳しく話せ」


「はい。今日、教練で西の森へ行ったのですが……」


 教官が今日あったことを包み隠さず支部長へと話す。

 途中、曖昧になっていた部分を俺達は訊ねられた。流石にこの場で誤魔化す気にもなれず、ありのままを答えた。


「西の森にコカトリス。深層では翼竜か……むぅ」


 指先で銀色の髪先を弄り、口を尖らせている。


「ふむ。お主らと少し似たような話が組合にも寄せられておっての。組合として調査が必要か検討しておったところじゃ……」


 似たような話……か。

 それはやはり、今回のように本来なら出現しない筈の場所で魔物や魔獣が出現した。という話が他でもあったのだろう。


「ま、この件についての原因……というか元凶には予想がついておるし、対策もうっておいた。安心せい」


「元凶……ですか」


「うむ。時期的に見ても、おそらく遠方に出現したという鳳凰の存在が、魔物や魔獣の活動域に変化をもたらしたのではないか。と、妾は考えておる」


 妾。自分のことを妾なんて言う奴をこの目で見る日がくるとは……。


 ってか鳳凰ってなんだよ。

 と首を捻っていると、ユエル教官が説明してくれた。


「鳳凰……。幻獣ですね。危険指定レベルは確か……」


「うむ。危険指定レベル20。ま、並の冒険者が束になっても敵うまい」


「に、にじゅ……」

「…………………………」


 ルエルとリーネが口をパクパクさせている。

 危険指定レベル20か。確かコカトリスが4で、翼竜が7だった筈。

 単に数字の大きさで魔物の危険度を測れる物でもないだろうが、俺にも何となくその鳳凰というやつがどれだけヤバいのか分かった気がする。


「ま、時間は少しかかるかもしれぬが、討伐は無理でも追い払うことは出来よう。それよりも――」


 ピョン、と支部長コノエがソファから飛び降り、目の前の机を踏み越え、俺の前に。そして――


「お主。訓練生じゃろ? よくもまぁ翼竜をそうもあっさり討伐出来たのう? 名前はなんと言う? 教えよ」


 近い近い! 顔が近い! あとその怪しい笑顔をやめて。


「し、シファですけど。シファ・アライオン」


 顔を若干ひきつらせながら改めて自己紹介したが、俺の名を聞いた途端、支部長コノエが目を見開いた。


「なんと! お主もしや、ローゼの弟か!?」


「え? あぁ、そうです。姉がいつもお世話になってます?」


 そうだよな。

 我が姉は冒険者だ。しかも、かなり有名な冒険者だったみたいだし、組合の支部長が姉のことを知っているのは当然だよな。


「はっ! これはまた! どうじゃ? お主、訓練所を出たら妾が面倒を見てやっても良いぞ?」


「え? それってどういう――」


「支部長! そういう話はやめてもらえます? 彼はまだ訓練生であり冒険者でもないですから……というか――」


 え? なに?


「彼を手元に置いて、彼の姉を思うがままに動かそうという魂胆ですよね? それをあの姉が許すと思います?」


「むぅ。やはり無理かのう? 良いアイディアだと思ったのじゃが……」


 倒れ込むようにソファに体を預ける支部長。

 そして、顔だけを俺に向けてきた。


「ま、考えておいてくれ」


 俺の姉は、そこまでしなければいけない程に問題のある冒険者なのだろうか。

 考えてみれば、冒険者としての姉を俺はほとんど知らないんだよな。


「あの、ロゼ姉……姉は、もしかして冒険者として少し問題のある人物なんでしょうか」


 興味本位で、そう聞いてみたのだが。


「いや、問題……というか少々特殊でな。実力は間違いないのは確かじゃ――」


 そして、ニヤリと支部長が微笑む。


「冒険者組合が鳳凰の撃退の依頼に指名した冒険者も、お主の姉じゃ。今頃は、あやつにその依頼が届いておる頃じゃろうなぁ」


「……え」


「ま、鳳凰を撃退出来る冒険者となれば、貴方のお姉さんくらいでしょうね……」


 え、そうなの?


 姉よ……あなたはいったい、何者なの?



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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん。リーネは主人公に対して失礼な態度、また家族を侮辱した癖に、未だに謝罪なし。 その癖、コノエに対し無言で「謝れ」と促してくる。 名前で呼べと距離を縮めようとしてくる。 お前の姉の…
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