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悪魔)聖女を騙して魂を奪おうと思ったら失敗して聖女の願いを叶える為に全力を尽くさねばならない契約を結ぶ羽目になった。お陰で最強最悪の悪魔が人助けなんてやる羽目になってしまった。  作者: 黒銘菓
これまでの話はいわばチュートリアルであった為、ここから本格的に俺がこき使われ始める。頑張れ。俺。そう思っているうちにいきなり、成り行きでもう事件に巻き込まれそうだ。
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前の話の伏線的なもの。この街の奴等は魔物を脅威としていて、牧場の牛が被害に遭っている。そんな中で俺達が浄化をして来たんだ。つまり、被害を帳消ししたんだ。そしたら向こうの反応は何となく察しが付くだろう。

 そして、向こうの反応が予測できればこの話の展開がどうなるかは当然予測が出来る。

 この娘は本当に、俺が言うのも何だが、狂気が内包されている。

 自分から問題に首を突っ込み、問題を解決すべく全力で、死力を尽くして、文字通り命を賭けて、人助けをしかねない。

 もし、コイツが契約半ばで死んだ場合、俺がどうなるかが解らない。

 つまり、俺は全力で、コイツの願いを叶えないといけない。

 「君が、コレをやったのかい?」

 爺さんが連れてきた若めの爺さんは娘に尋ねてきた。恐らくはこの街の責任者。長だろう。

 「はい、勇者様が倒れていたのを見て、居ても立ってもいられず、森へ入ったのです。そしたら、魔物が沢山いたので可能な範囲で全員元に戻しましたら、牛が居たのでもしかしたら…。と思ってこちらに戻ってきた次第です。」

 予め俺が書いておいたシナリオを読み上げる。まぁ、不自然な所は有るが、急造にしては上出来だ。

 「君一人で?魔物を元の動物に戻せるのかい?」

 村長。勝手にそう呼ぶが、村長は緊張した面持ちで確認してくる。無理も無い。魔物の浄化が出来る事を聞いたことがある奴は沢山居てもそれを出来る奴を見た事が有る奴はそう多くはない。

 「はい。私、少々腕に覚えがありまして、単独での魔物の浄化が出来ます。」

 ここで敢えて『単独』と言わせたのは、相手が浄化の難易度を知っているなら単独浄化の出来る人間に価値を見出すだろうと考えたからだ。

 もし、知らなくてもあの爺さんが娘が単独浄化をしたことを証言してくれる。

 「単独……!」

 どうやら難易度を知っていたようだ。成功だ。

 「君!是非ウチの街を助けてくれないか?」

 食いついて来た。

 「『助ける』ですか?」

 「そうさ、魔物を追い払うのに勇者君が頑張ってくれている。が、魔物は日に日に増え、今日に至っては勇者君は過労で倒れた。」

 過労。まぁ、間違いではないな。

 「このままでは勇者君は倒れ、牛も我々も全員全滅だ。だから、頼む。我々の街を救うべく、魔物の掃討をやってくれ。」

 そう言って村長は頭を下げた。

 「いえ、掃討はできません。」

 予想外だ。この娘の事だ。止めても引き受けると思って黙っていたが…。

 「この街の事は勇者様にお任せします。その間に、私が魔物発生の大本から解決します。掃討なんて暴力的な事は決してしません。」

 予想外だが以外では無かった。そう言う事か。

 「あぁ、では、解決を、お願いできませんか?」

 「解りました。では先ず、この街の今の状況をお教えください。」

 娘はもの凄い笑顔で快諾した。




 「では、この街では元々魔物が頻出していた訳では無いのですね?」

まず最初に聞いたのは近所のばあさんだった。

 「んー。魔物が出るようになったのは最近の話だ。」

 快諾後。娘は街の人々から話を聞いていた。そもそもここら辺の環境からして魔物が頻出すること自体がおかしいのだ。先ずそこから調べないと根本からの解決は無理だ。そして、

 「この娘は徹底してやらんと納得はしないだろうなぁ……ハァ。」

 「悪魔様?何か?」

 おっと。

 まぁ、話を戻すと。この辺には何かある。そう言う予感があったので娘に情報収集するように言ったら。気になることが聞けた。

 「それは、いつからですか?いつ頃から頻出するようになったのですか?」

 「んー…何時からだったかな………?」

 そう言って考えこむ。

 「んー………、にぃーカ月前だったかな?」

 という事は、その辺、またはその前に何かが起きた可能性があるってことか。

「娘。二カ月前を重点的に聞け。」

「おばあさん、その頃に何か変わったことは起きませんでしたか?」

婆さんの記憶はアテにし辛い。が、ここに住んでいて違いが在れば気付くはず。それを覚えていれば……。

 「んー、ンなことなかったね。平和さ。」

 チッ、仕方ないか。他を当ろう。

 「有り難う御座いました。それでは。」

 「んー。嬢ちゃんも無事でな。」

 「あっ!そういえば!最後に良いですか?」

 「ん?なんだい?」

 「おばあ様、森の中の水晶はご存知ですか?」

 「んー。ん?水晶?なんだいそりゃ?」

 首を傾げる婆さん。知らないのか?

 「娘、水晶の中の蛇については下手に言うな。知らなかった場合、不安を煽るだけだ。」

 「解りました。」

 「んー。アタシは知らないねぇ。水晶。あの森にそんな大層なモンは無かった筈だよ。」

 「そうでしたか。有り難う御座いました、おばあ様。他の人にも訊いてみます。では。」

 屈託ない笑顔で手を振る。婆さんは面喰っていた。それとも、孫の顔でも思い出したか?まぁいい。

 「娘。二カ月前というのが気になる。あの婆さん。ボケちゃいなかったようだから、おそらく魔物発生は最近、直近だというのは真実だろう。そこら辺で変わった環境や来たヤツを探れ。何かある筈だ。あと、あの水晶については一応訊いとけ。ただ、今の婆さんの話だと外部から持ち込まれた可能性が高い。」

「解りました。そういえば、二カ月前。確か勇者様が来たのは三カ月前でしたね?」

「ぁ?そうだったか?興味なんぞなかったから覚えてねぇよ。」

「後で勇者様が起きたら訊いてみましょう。」

「あぁ、好きにしろ。」

 「相変わらず勇者様に対して厳しいのですね。悪魔様は。」

 当然だ。勇者と悪魔なんて勇者VS魔王が第一部完の小説なら二か三部の話の展開次第で確実に殺し合いをする関係性だ。風当たりが嵐くらい強くて当たり前だ。

 「それより、次だ次。俺は探知なんて得意じゃない。闇雲に探し回るより、ここで情報集めてやった方が効率的だからアドバイスしたんだ。それでもノロノロやってると非効率になるぞ。」

 「解りました。次ですね。」

 娘は第二村人を探しに牧場を駆けて行った。

 「あれは…、今朝来た方では無いですか?」

 「ん?」

 「ほら、今朝勇者様が倒れていることを教えに来て下さった方です。」

 ………、人間の見分けなんて出来ん。

 「すみませーん!宜しいですか!?」

 もう既に話しかけ始めた。

 「はい、何で……あっ。ジールさんの所に居た。

 「はい、あの時はどうも。」

 向こうは作業を中断してこちらを見た途端、表情が変わった。どうやら娘の言う事は事実らしい。

 「僕に何用ですか?」

 第二村人。さっき爺さんの所に来た男は若かった。タレ目に色白。闘争向きではない。

 「実は私、先程この街の責任者の方?から頼まれまして、魔物の発生の原因を突き止めているのですが、最近、特にここ二カ月。何か変わった事など在りませんか?」

青年は首を傾げながら目をつぶって考えていた。

「んー、あー、んー……。変わったこと、変わったこと?えぇっと、どんな事でもいい?」「はい、なんでも。変わったものを見たとか、聞いたとかでもいいのです。」

 「最近、喰われる牛が減ったんだ。勇者のお陰でさ。獣とかの被害が減ったのさ。まぁ、その代わり魔物がよく出るようになったんだけどさ。」

 「牛を食べる熊ですか?」

 「いや、熊はここまでは来なかった。来たのは、蛇さ。」

 聞き捨てならない。

 「その蛇、大きさは?最近見かけないのですか?」

 娘が興奮気味に青年に迫る。呼吸音どころか心音さえ聞こえそうなほどに。

 「え、ァ、エェェ、ット、あの。」

 止めてやれ、娘よ。

 「大事な事なんです。その蛇さんはどれくらいの大きさで最近は見かけますか?」

 「ぇぇっと、もの凄い大きい。魔物なんか相手にならないような、熊を食べられるような大きさの化け物でした、最近、見かけません。」

 「その蛇の行方はご存知ですか?」

 「いいぇ、あの、魔物に食べられたんじゃないかって皆言ってます。」

 重要な情報だ。でかした青年。

 「有り難う御座います。お仕事頑張って下さい!」

 娘。コイツの容姿は人間に好意的に感じられるもののようだ。

 未だ子どもではあるが(俺の年齢が年齢だから死にかけの老人だろうと子どもに思えるのだが)、ボディーラインも中々暴力的である。

 そんなのにゼロ距離で迫られたら男の方は動揺するだろう。



 またしても追伸だ。「前話同様のお願いですが、感想と評価をお願いします。感想に関してはログイン不要で書き込み可能です。批評も聞いて参考にしたいので是非お願いします。」だとよ。


 しつこい奴だ。そして「自己満足で他人を巻き込むな。」と言いたい。

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