15日目。天空会議
今日は、みんなにリビングに集まってもらった。
テレビにアダマヒアとその周辺を映し俺はこう言った。
「これからの創世についてなんだけど」
そう言って、俺はひとりずつ見た。
ワイズリエルは、バチッとウインクをキメた。
ヨウジョラエルは、無垢な笑みを浮かべた。
クーラは青髪を耳にかけ、そして微笑んだ。
「担当を変えようと思う。というより、これからはローテーションで各所を監視しようと思うんだ」
「ローテーションで監視ですかッ☆」
「そう。今まではクーラが教会、ヨウジョラエルがモンスターといった感じで、ずっと同じものを担当してたよね? それを、たとえば一週間で交替する。ローテーションで担当するんだ」
「そっ、それは好いですけど」
と、クーラが怪訝な目をした。
すると、ワイズリエルが補足してくれた。
「ローテーションで担当すれば思い入れがなくなりますッ☆ モンスターに感情移入せずにすむのですッ☆ それに、いろんな人が担当することによって、成長に偏りがなくなりますッ☆」
「ああ、それに俺たちは監視者だ。専門性はなくていいんだよ」
「なるほど。いちいち現場に口出しをするわけではありませんから」
「詳しくなる必要はありませんッ☆」
「むしろ専門性がないほうが、客観的な評価ができる――ともいえるかな?」
「さすがです、ご主人さまッ☆」
ワイズリエルが、バチッとウインクをした。
「さすがです、おにいちゃん」
ヨウジョラエルが、まるで赤ちゃんのような笑みをした。
俺は安堵のため息をつき、そして言った。
「では、さっそく新しい担当を発表する。今週はとりあえずそこを担当してもらう。それで状況をみて、来週くらいにまた担当替えをしよう」
「はいッ☆」
「じゃあ、聖バイン騎士団なんだけど――。これは、ヨウジョラエル。キミに担当して欲しい」
「いいよ~」
「よろしく。で、将来的にはひとりでやってもらいたいんだけど、今週は誰かに操作を教えてもらいながらにしようか」
「うん。じゃあ、おにいちゃん、いっしょにやろ~?」
「よしっ、分かった」
俺が頷いた瞬間、ヨウジョラエルは抱きついた。
「次に、モンスターだけど――。これは、クーラ。お願いできるかな?」
「はい」
「モンスターの強さは、騎士団担当のヨウジョラエルとよく相談して調整して欲しい」
「分かりました」
そう言ってクーラは目を細め、氷のような笑みをした。
「それで、アダマヒア王国について――。ワイズリエル、キミにお願いしたい」
「はいッ☆」
「これは王族たちや政治についてもそうだけど、騎士団や製鉄所といった各所との連携にも目を光らせて欲しいんだ」
「分かりましたッ☆」
そう言ってワイズリエルはバチッとウインクをキメた。
「で、最後に穂村なんだけど――」
と言ったら、三人がスケベな笑みをした。
「えっ? なにかマズイ?」
「いえッ☆ 担当はご主人さまですよね?」
「ああ、そのつもりだけど」
「きゃはッ☆」
「なんだよ言ってよ」
泣き笑いの顔で小突いたら、ワイズリエルは笑いを抑えながら言った。
「やっぱり、日記が気になりますかッ☆」
「あ"!?」
「大雨で流れてしまったご主人さまの日記ッ☆ あれが気になるのですか?」
「あっ、ああ」
「だから、カミサマさんが穂村を担当するわけですね?」
と、クーラが優越感に満ちた目で言った。
「だかか、おにいちゃんが穂村を担当すすわけですね?」
と、ヨウジョラエルが面白がって言った。
ワイズリエルが、するっと俺の太ももをなでた。
で、俺が頷くとリビングは笑いで満たされた。――
しばらくして。
「好かったら引き継ぎを兼ねて、現状報告をして欲しいんだけど」
と俺が言うと、クーラが、
「あの、その前にカミサマさん……」
と言って、申し訳なさそうに画面を指さした。
「あの、今日は今まで映していなかったエリアまで映っているのですが」
「ああ」
「あの、ずいぶんと西側が閑散としています」
「まっ、まあそうだよ」
また面倒くさいことを言いだした。
そう思って眉をひそめたら、クーラがぴしゃりと言った。
「なんとかなりませんか?」
だから俺は先手を打った。
「分かった」
そう言って、乱暴に森を創ったのである。
「ちょっ、ちょっとなにをいきなり!?」
「いやまあ、森を」
「そっ、それは見れば分かりますっ」
クーラが画面を指さし悲鳴を上げる。
信じられない――って顔でぷるぷる震えてる。
俺のテキトーで大ざっぱな植林が、クーラは許せないのだ。
繊細な彼女には、とても堪えられない乱雑さだからだ。
「というかな」
俺だって堪えられない。
広大なエリアに植林するとき、いちいちミリ単位で注文をつけられては気が狂う。
だから俺は、先手を打って森を創ったのだ。
「でっ、でもこれではあまりにも、いい加減すぎますっ」
「いや、それは」
分かっているけれど。
そう思って眉をひそめると、クーラは、
「もう!」
と言って、大きくため息をついた。
俺が泣き笑いの顔をすると、クーラはくすりと笑った。
そんなやりとりを見て、ワイズリエルとヨウジョラエルはクスクス笑っていた。……。
「じゃあ最後に引き継ぎを兼ねて、ワイズリエル。現状を報告して欲しいんだけど」
俺は大きく息を吐いて言った。
するとワイズリエルは、
「かしこまりました、ご主人さまッ☆」
と言って、するどくキスをした。
イタズラな笑みをして勢いよく立ち上がった。
そして画面を指さして、報告をはじめた。
「では、『穂村』から――ッ☆ 穂村はクロスボウが撤廃されて、再びカタナの時代となりましたッ☆ 今のところ村の生活は豊かですし、この台地から出る様子もみられませんッ☆」
「問題ないのだな?」
「安定しておりますッ☆」
俺は大きく頷いた。
「次に『モンスター』ですが――ッ☆ これは攻撃力を上げ、防御力を下げておりますッ☆ さらに個体数を減らし、一体一体を強くしましたッ☆」
「それで今のところ騎士団とバランスが取れているのだな?」
「四人の騎士で一体のモンスターを倒せるバランスですッ☆ 」
「まるでモンスターをハンティングするゲームのようだな」
「きゃはッ☆ そんなバランスですねッ☆」
そう言ってワイズリエルはクーラにウインクをした。
クーラはメモを取っていた手を休め、微笑みを返した。
「『アダマヒア王国』についてですが――ッ☆ 今のところ世襲君主制が上手く機能していますッ☆ 国民の幸福度は高く、モンスターを強化した影響からなのか、犯罪者は激減しましたッ☆」
「なんだよ順調じゃないか」
「今のところはッ☆」
「ん? どうしたんだ?」
「いえッ☆ 悪いことではないのですが『聖バイン騎士団』が――ッ☆」
「騎士団がどうしたんだ?」
「興味深い動きをしていますッ☆」
俺たちは思わず前のめりになった。
すると、ワイズリエルはゆっくり言った。
「北の痩せた土地を耕しているのですッ☆」
――・――・――・――・――・――・――
■神となって1ヶ月と15日目の創作活動■
各所をローテーションで監視することにした。
……なるべく俺の負担が減る方向に持っていきたかったんだけど、増えてしまった。




