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防衛特化無表情腐女子モブ子の楽しい青春  作者: 一九三
起 序章!学園生活は戦いと共に!
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モブ子3 教室にて

 ハデスとデメテルさんは、公爵令嬢が知ってるか知らないけど、放課後よく会っているようだ。はいはいリア充爆発しろ。ただし男同士のリア充は尊い。


 ていうか、あの公爵令嬢マジやばい。

 成績は大体トップ。ちなみに二位が第二王子で三位がデメテルさん、四位が宰相の息子で、私は十位ぐらい。

 魔法も、『この世界の魔法文字は実は二本で使われていた漢字』ということを知ってる私から見ても巧みに使いこなしている。勿論、天才魔術師や特別な魔法が使えるデメテルさんも負けてないけど、でも公爵令嬢が一歩リードしている。私は防衛用の以外は切り捨ててるけど。攻撃とかに使う魔力があったらその分を防衛に回すわ。

 社交でも、お偉い誰それに気に入られたとか、王妃様が云々とか、まあすごいもんだ。辺境伯嫡子の私もそれなりに人付き合いはしてるけど、実家自体が『貴族の社交より軍事頼む』と言われているようなものなので、その辺は適当だ。敵を作らないぐらいで良い。

 あの公爵令嬢マジやばい。

 あのぐらいすごいなら、いっそ北のヘルヘイムの王族でも落としてくれないかな。上手く友好結べたら儲けものだ。うちは案外仲良いんだよね、あそこと。戦場で芽生えた友情、みたいなやつ。


 「ところでテミス」

 「はい、お嬢様」

 「うちの連中が国家騎士団と軍事演習したいって言ってなかった?」

 「お嬢様、それは最後の手段だと言ったはずですが」

 「うちの力を見せつけて脅すってことじゃないよ。せっかく近くに良いのがいるんだから、見物したいってだけだよ。ほら、もしこの国が落ちてもうちの領はヘルヘイムが喜んで拾ってくれるけど、あっちが落ちた時は拾えるぐらいになりたいじゃない?」

 「下手に実力を広めても、他の地の応援などで呼ばれて面倒なだけでしょう」

 「呼ばれた時に断れるように、しっかり脅しとくんじゃない」

 「お嬢様、脅してますわ」

 「おっと失礼。でも、折角のチャンスなんだし、言って損はないでしょ? 王家に嫁に出せるような王女はいないし、王子はいるけどうちの妹には許嫁がいるし」

 「お嬢様はフリーですよ」

 「私は嫡子だし。王家と婚姻結ばされても、あっちが人質送ってくるだけじゃない。子供作る気もないし」

 「これだからお嬢様の軍事脳は…」

 「変な利権争いとかで軍事を低迷させられなきゃ、派閥争いとか不倫とかは平和な南側でやればいいんだよ。私の使命は領を守ることのみだよ」

 「少しは恋でもして丸くなってくださいまし」


 テミスは呆れているけど、テミスだってうちの領民だ。北の地を任されてる意味が分からないわけじゃないだろう。

 ともかく、まずは当主の父に打診だ。

 多分了承されるから、根回しだけは先にしておこう。


 数日後、「好きにやれ」という返事が来たので、やっと話を持ちかけられる。

 ミーア公爵令嬢に群がっているところを、「ちょっとよろしいですか」と声をかける。


 「……なんだ?」


 不愛想な騎士団長の息子。アレス・ターンライト様だ。ちなみに爵位は伯爵だから、我が家よりちと低い。


 「初めまして、私はクローデンス辺境伯が長女、ニケ・クローデンスと申します」

 「……アレス・ターンライトだ。俺に何の用だ」


 つっけんどんだけど、昨夜はハデスにアンアン言わされたんだろ? 私の頭の中で。


 「ターンライト様は、国家騎士団長のご令息であられると聞きまして、ご挨拶をと」

 「そうか」


 おいおい、一応辺境伯の私の家のほうが立場は上なんだぞ。しかもお前、三男じゃん。嫡子の私には礼儀正しくしろよ。

 まあいいや。


 「この学園でご一緒出来たのも何かの縁、よろしければ一度、うちの兵たちと演習などお願いできないでしょうか。父が王都から離れて久しいので、今までご縁がありませんから」


 友好的に行こうぜ、アピールアピール。

 アレス様はちょっと顔をしかめている。


 「……俺の一存では返事出来ない」

 「ええ、すぐお返事を、とは思っておりませんが、御一考いただけませんか? 今まで辺境伯と言うことにかまけて、王都に参上することを怠っていましたから、この機会にぜひにと思っておりますので」


 アレス様は、やっぱりどこか苦い顔をしている。

 もしかして軍事演習と言う名の脅しだって気づいてるのかしらん、とか思っていたら、「あら、素敵じゃない」と横から口をはさんでくる輩が。

 はい、完璧超人のミーア公爵令嬢様でございまーす。

 当然、きちんとご挨拶しますよ。あっちのが立場上だし。


 「お初目にかかります、ニケ・クローデンスと申します。ミーア様のお噂はかねがね……」

 「固くなさらないで。ご存知のようですが、アルテミス・ミーアですわ。横から口をはさんで、失礼なことを……」

 「いえ、とんでもない」


 と、ご挨拶を終えたところでお話。アレス様は公爵令嬢の取り巻きだから当然既知だろうし、挨拶は省かせてもらおう。


 「ところでアレス様、演習ということですけれど」


 あ、言おうと思ったら先に公爵令嬢に言われた。さすが……! 何かわからないけど、とりあえずさすが……!

 アレス様は、こくりと頷くけど、やっぱり不機嫌そうな顔をしている。


 「はい、ミーア様。クラスメイトになったご縁で、演習などして親交を深めたいと思っております」


 代わりに答えてあげるよ! お礼はいらないさ! こっちのほうが話の進みが話そうだし。


 「まあ、素敵じゃない! アレス様、いかがですの?」

 「……父に聞かなければ返事は……」

 「ええ、わかってますわ。ではなく、こう、彼女ほどの方に何かありませんの?」

 「……俺は、……そういうのは、いい」


 あらら、もしかして公爵令嬢は取り巻きの恋心に気付いてない?

 まあ、可哀想。ははは、愉快愉快。そうやってリア充は爆発して男同士でくっつけば良い。


 ちゃらっと話をまとめて、「ではそういうことで」と逃げて、テミスにそっと話しかける。


 「アルテミス×アレスで、アレス様が無自覚なアルテミス様にブチ犯されるの、どう思う?」

 「変態だと思いますわ」


 テミスは無自覚攻めの魅力がわかってないんだよ! 男でありながら女性に穴を犯されるという恥辱とそれによる快感のコンボの素晴らしさもね!



 そうして席に戻ったが、途中、デメテルさんの近くを通った。

 その時に、独り言が聞こえた。

 小さな声だったけど、田舎育ちで耳の良い私には聞こえた。

 それは、


 『アレスの婚約者はあの子じゃなかったはずなのに、やっぱりゲームと違うな』


 と言っていた。


 ゲーム?

 それ、どういうこと?


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