モブ子13 立食会を終えて
私は前世の知識がある分、有利だ。
詠唱は短いのに大きな効果を生み出せるし、ろくに訓練しなかったから制御不能だけど馬鹿みたいな火力の攻撃魔法を放つことが出来るし、ごく幼い時から鍛えることが出来た。
幼い頃から鍛えていた回復魔法と結界魔法は、人と比べてもかなり優れていると自負している。
でもそれはただの『事前知識』で才能ではないし、『才能』があったとしても、それだけでしかない。
知識があるから、才能があるから大丈夫。
そう驕っていて、本当に大丈夫なのか。本当に、絶対の自信を持てるほどなのか。もし本当に才能がある天才に出会ったら、どうするつもりなのか。
私は生まれ持っていた知識や、幼い頃からの積み重ねだけに頼ることなく鍛錬を続けた。
使う場所のない攻撃魔法なんていらない。女の身でハンデがある武術なんて護身出来る程度で良い。知識を生かせ、向いていて、最も力を発揮できるものだけで良い。
他のいらないものをそぎ落として、長所だけを研いで、ここを守るために。
前世の生活なんて知ったことじゃない。私は『ニケ・クローデンス』だ。
親からの愛情も兄弟との仲も屋敷の人間の尊敬も、いらない。そんなものに構ってる頭と時間が惜しい。
好き勝手生きて、やりたいことをやって、なすべきことを成してきた。
だから。
「あなたとは、協力しあえると思ったんです。恵まれた幸運に胡坐をかかず、努力を怠らないあなたとなら。──不必要なものをそぎ落としてきた、あなたとなら」
ディモス様に手を差し出す。
「ああ、俺も、あなたは同士だと思っていた。俺と同じように魔法に傾倒して、それで生きているところが、似ていると思って。──それがなければ今の自分がないようなところが、特に」
ディモス様は、そっと私の手を取った。




