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防衛特化無表情腐女子モブ子の楽しい青春  作者: 一九三
起 序章!学園生活は戦いと共に!
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ヒロイン プロローグ

 その門を見たとき、思い出した。

 これは以前遊んだ乙女ゲームの世界であること。

 私は女子高生だったこと。

 天啓のように思い出した。


 私はまだ高校生だった。従姉妹を迎えに、彼女が勤めてるカラオケ店に行ったところで火災に遭い、勇敢な女性に庇われ、一緒に庇われたけど足が瓦礫に挟まれて動けない女性のため、助けを呼びに走った。

 でも、炎の勢いは強くて、外に出ることなんてできなくて、「誰かー!」と叫んでいたら、そのまま天井の崩落に巻き込まれて死んだ。きっと、あの足を挟まれた女性はそのまま死んでしまっただろう。それが申し訳ない。


 それがどうなったか、女子高生だった私がハマっていたゲームの世界に転生してしまったらしい。

 私は全ルート攻略はしてないけど、ヒロインで、攻略対象キャラがいて、悪役令嬢がいることはわかる。


 「新入生代表、アルテミス・ミーア」


 でも、ここはゲームの世界とは違った。

 悪役令嬢のはずのアルテミスが、本当は主席で挨拶するはずだった第二王子を差し置いて挨拶してるし、全然高慢じゃないし、なんでか攻略対象キャラにちやほやされてる。

 ……ひょっとしてこれ、悪役令嬢転生して悪役令嬢が逆ハー築いちゃってるやつ?

 あー、はいはい。これ、ヒロインおよびじゃないやつだ。

 ていうか、悪役令嬢がチートすぎるでしょ。身分が高くて、美人で、お勉強が出来て、内政が出来て、魔法が出来て、逆ハー持ってて、敵うわけじゃないじゃん。

 まあ、邪魔にはならないよ。貴族暮らしとか窮屈だし。食べるのに困らない程度に貧乏なのが私にはぴったりだし。


 「……もしかして、デメテル?」


 そんなことを思っていたら、悪役令嬢の従者が私を見て驚いていた。

 え、なんで私の名前を……。

 彼の顔を見ると、前世と今世、二つの知識が流れ込んで来た。

 確か、名もない悪役令嬢の従者で、悪役令嬢の我儘に飽き飽きしてるだけの、ただの脇役で。

 ──昔の、幼馴染。


 「……ハデス、お兄ちゃん?」


 貧乏貴族のうちの近くに住んでいて、よく遊んでもらった近所のお兄ちゃん。いなくなってギャンギャン泣いた。

 ハデスお兄ちゃんは、「やっぱり!」と私に駆け寄ってくれた。


 「大きくなったなあ、デメテル。領主様と奥様は元気?」

 「う、うん。……ハデスお兄ちゃん、あんなすごい人に仕えてたんだね」

 「あー、まあ、うちのお嬢さんは特殊だから……」


 ハデスお兄ちゃんは苦笑いをする。いろいろ振り回されていたみたいだ。

 ……久しぶりに会ったハデスお兄ちゃんは格好良くて、ちょっとどきどきした。


 「ね、ねえ、ハデスお兄ちゃんもこの学園にいるんでしょ? 私、なんか特別な魔法が使えるからって連れて来られたけど、全然わからなくて……。暇な時でいいから、いろいろ教えてくれない?」

 「ああ、デメテルのとこ、そういう感じだもんな。いいよ、いろいろ教えてやる」

 「ありがとう! ……あ、でも、あの……公爵令嬢様から駄目って言われたら、無理しなくていいからね?」


 逆ハーを築いていたことを考えると、ハデスお兄ちゃんも骨抜きにされてる可能性はある。……ハデスお兄ちゃんが他の人を好きだと思うと、ちょっと胸が痛んだけど、仕方ないもん。ハデスお兄ちゃんになら、原作補正とか効かないし……。ハデスお兄ちゃんが攻略対象なら、攻略……ううん、好きになってもらえたかもしれないけど……。


 「デメテル、大丈夫だって」


 と、俯いてしまっていた私の頭を、ハデスお兄ちゃんが撫でてくれた。

 顔を上げると、いつかのように兄貴肌でにっと笑うハデスお兄ちゃんがいた。


 「お嬢さんは他の坊ちゃん方がいるし、俺だって優秀だから、デメテルに教える時間ぐらいあるさ」


 ……いけないとは思うけど、ハデスお兄ちゃんがあの人より私を優先してくれたみたいに思えて、嬉しくなった。


 「……ありがとう、ハデスお兄ちゃん」

 「ははっ、任せとけ! ……でも、ここじゃ身分があるから、『お嬢様』って呼ばなきゃな」

 「う、ううん! そんなの全然気にしないで!」


 ハデスお兄ちゃんの呟きに慌てて言うと、「駄目だろ、そんなんじゃ」とこつりと額を軽く小突かれた。


 「そういう貴族のことを教えてやるって話なんだから。お分かりいただけましたか、お嬢様?」


 ハデスお兄ちゃんはにっと笑って私を手の甲にキスをした。

 私は、多分真っ赤になってしまっていたと思う。


 「は、はい。ハデスおに──じゃなくて、ハデスさん」


 ハデスお兄ちゃん、いつも間にこんな女たらしになったの!? 心臓持たないよ!


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