攻略対象:宰相の息子2 檻の前にて
昔、お城で出会った彼女のことが、ずっと心に残っていた。
凛としていて、強く笑う彼女は、とても綺麗だった。
彼女の周りの環境は優しいものではなかった。自分だって彼女の味方とは言えない立場だった。
でも彼女はそんなもの、気にしなかった。
困っている人を見かけると放っておかず、誰にだって手を差し伸べて、嫌われたってへっちゃらで、いつだって明るく笑っていた。
気づけば彼女のことを好きになっていた。
しかしそれは叶わぬ思い。
幼い初恋は抑え込まれた。
その数年後、ある少女に出会った。
まるで彼女のように、強くて明るい少女。
彼女みたいに困ってる人を放っておけなくて。彼女みたいに前向きで。彼女みたいに綺麗で。彼女みたいによく笑っていて。
でも、彼女ではなかった。
出会ってすぐ、少女は親友の婚約者になった。
自分はそれを心から祝福した。心から、親友も少女も幸せになって欲しいと祝えた。
さらに数年後、また出会いが訪れた。
それは初恋の彼女。
押さえ込んでいた思いがあふれ出しそうになる。
しかし彼女はあの頃とは様子が違っていた。
凛とした雰囲気はかたくなさを帯び、人を近づけぬ壁となり。
明るい笑顔は、凍り付いたような表情に変わり果てていた。
彼女に近づこうとしても、彼女は自分を避ける。
どうにか近づきたいのに。
思いを伝えられなくても、ただ昔のように、笑って欲しいのに。
そして今日。
「……もう、いいです」
独りよがりな思いで、彼女に失望をぶつけた。
昔のようになってくれない八つ当たりのような言葉だった。
でも彼女は表情一つ変えてくれなかった。
自分が何を言っても、彼女には響かない。
それが悲しいと思う心がまだあったことが、少し疎ましかった。




