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防衛特化無表情腐女子モブ子の楽しい青春  作者: 一九三
承 変化!いつだって諸行無常!
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悪役令嬢13 進級後

 私たちは二年生に進級した。

 ヒロインは冬季休業の後から、わき目もふらず邁進していて、ついに成績も私を抜かして一位になっていた。

 ハデスは「お嬢さんが結婚するころには自慢してあげますよ」と穏やかな目をしていた。


 何かあったんだろう。

 そして決着が着いたんだろう。

 よかった。これで荒れなくて済む。

 ただ懸案事項があるとすれば、ヒロインの意向だ。


 乙女ゲームの本格的な開始は二年生のときから。

 それまでの一年は事前準備のためのプロローグ期間だ。

 二年生になり、留学生のセト皇子が編入してきてからが本番だ。


 セト皇子は友好国の視察、という名目で編入して来る。

 でも北が騒がしいという話は聞くし、東で騒動が起こりそうな気配もある。そんな時期に他国に来るかしら? 大反対されてたのにセト皇子が反対を押し切って来たと聞いたけど、……まさか何かあるの?

 東のことをアレス様やオルペウス様に聞いてみたけど、「まだ小国同士の争いに過ぎない」と言われた。ただ、アレス様は「戦争に巻き込まれる可能性はある」とも言っていた。

 北のことはニケ嬢に聞いたけど、……ええ、物の見事にコテンパンにされました。


 「ミーア様、お心を乱してしまったのでしたら謝罪します。しかしご安心ください、北では何もございません。お心を痛めるようなことは、何一つございません」


 ──我らは『クローデンス領』ですので。


 完璧な無表情でそう言われると、もう何も言い返せなかった。

 これは駄目だ、と、本格的に情報収集するためにアポロン様にお願いしてみたが、王族がクローデンス領に問いかけても答えは変わらなかった。

 『報告しなければならないようなことは何もございません。いたっていつも通り、死んだり殺されたりしているだけです』という内容しかなかった。

 そもそもあそこは戦争中だから特例が適応されている。だから王の要請だって跳ね除けることが出来る。本当に厄介な場所だ。


 北の情勢はわからないにしろ、東がごたついているのは確実だ。東の小国とはアメンティも接している。軍事国家と言えど、タルタロスを挟んでいるヘルヘイムより、東の国家のほうが直接的な危険のはずだ。

 なのになぜ留学など?

 東が荒れ、北も何かあったようなのに、何故この時期に?


 分からず悩んでいたらアポロン様やヘルメスが苦笑していたが、何なのかしら?真剣に理解に苦しむのだけど。


 理解に苦しむと言えば、ディモス様はなんだかんだでニケ嬢と着かず離れずの関係を保っているようだった。

 ディモス様は人間嫌いだけど、ニケ嬢はなんというか、しれっとした友人関係を作るのが上手い。味方とは言えないが敵にはならない、というか、日本でいえば、一緒に昼ごはんは食べるが放課後一緒には遊ばない、みたいな。

 しかし彼女は「ディモス様と結婚しました」と急に言い出しそうな、妙な怪しさがあるので油断できない。本当に、あの二人の関係は何なのかしら。


 理解に苦しむのなら、ヒロインもそうね。

 成績で一位を取り、未だに友達こそいないものの、彼女をいじめるものはいない。

 見るからに態度が改善されているし、努力していることが見えているからだ。

 頑張って頑張って努力して結果を出している。

 自然と応援したくなるような、不思議な感じだった。

 その努力に惹かれたのか、ぴたりといじめはやんだ。

 あの暴言が嘘じゃないかというほどの成長っぷりを見せている。

 何がそこまで彼女を変えたのか。……私にはまだ、分からない。


 二年生になり、ゲームが始まり、──私の処刑が間近に迫って来た。


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