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防衛特化無表情腐女子モブ子の楽しい青春  作者: 一九三
起 序章!学園生活は戦いと共に!
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モブ子8 模擬戦の誘い

 「クローデンス辺境伯令嬢、ちょっといいですか?」


 アポロン様がそう声をかけて来たのは、テミスの予想通り、もう夏季休暇に入ろうというときだった。

 休憩時間だったので傍にいたテミスが後ろに控えるのを確認して、臣下の礼をした。


 「何か御用でしょうか、殿下。私如きに出来ることでしたら、何なりとお申し付けください」

 「……まるで騎士のように礼をするんですね。辺境伯令嬢だからですかね」


 くすくすと笑っているアポロン様。

 よし、この後媚薬盛られてハデスに縋りつくんだ。『やらぁ……あついのぉ……』とか舌足らずで。それでハデスは『高貴なお方がこんな下賎の民に足を開いていやらしくねだって……』とか言葉攻めしながら焦らしながら……。


 「話とは、実は以前模擬戦をしてもらったときのことでして」


 おっと、話を聞かないと。ちらりと見えたテミスの、『お嬢様は無表情でよかったですね。気持ち悪い妄想が顔に出ませんもの』と言うような軽蔑の目が突き刺さるし、本当にいい加減にしないと後ろから物理的に刺される。


 「はい、何でしょうか」

 「アフロディーテ男爵令嬢の才能は素晴らしかったし、それに勝ったアルテミスは目を見張るものがありました。けれど、双方の名を傷つけることなく、私の要望を叶えたあなたの手腕も見る物があると思いまして」

 「お褒めいただき光栄ですが、あれが私の全力でございます」

 「ご謙遜を。というわけで、一度手合せ願いたいのですが、いいでしょうか」

 「私如きが殿下の前に立つなど、恐れ多いことでございます」

 「じゃあ私の代わりのものとなら、いいでしょうか」

 「この身で前に立つことが許される方ならば」

 「ありがとう。では……早くしないと夏季休暇に入ってしまうので、明日は大丈夫ですか?」

 「はい。殿下の仰せのままに」

 「じゃあ明日の放課後、模擬戦場で」


 アポロン様がそう言って去って、やっと顔を上げられた。

 テミスは「面倒なことになりましたね」と言ってくれてるけど、それより……。


 「身代わりって、そこにある葛藤と愛がいいよね。信用し合って身代わりをするのと、疎まれてるって思いながら身代わりを引き受けるのと、案外ツンデレで身代わりとか言うけどその実力を信じてるから身代わりにするとか、いいよね」

 「お嬢様は他に考えることはないんですか?」


 やっぱり敵と戦闘は見せ場だよね。盛り上がるし、その窮地で本当の気持ちに気付いたりするし。敵が強大であるほど倒した後のご褒美が、もういいもので……。

 でも、攻め様が『ご褒美に』ってイイコトするのとか、受け様から『今日、頑張ったから……』とかでご奉仕するパターンはよく見るけど、受け様が頑張って攻め様から『よくやったな、今日はご褒美にいつもよりもっと……』ってのは、……うーん、悪くないけど微妙。私の好みじゃない。

 第二王子の身代わりなら、出てくるのはアレス様かディモス様かオルペウス様ってとこだろう。ハデスが来るなら王道のご褒美があるけど、他は全員受け様だし、なら負けそうになって攻め様が乱入して、とか、『あんなやつに好き勝手やられやがって……』とかのシチュエーションのほうが萌えるね。


 「今夜のオカズには困らないね!」

 「妄想は周りに迷惑をかけない範囲にしてくださいまし」


 テミスに路傍の石を見るような、どうでもいいものを見る目で見られたから、ちょっと自重したい。ちょっとだけ。


こいつらいっつも戦ってんな……

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