ヒロイン6 お茶会
「それでね、やっぱり受け様の総受け展開は基本なんだけど、それでも攻め様と受け様がきっちりしてるのがいいと思うんだ。ハーレム系だと受け様がビッチになるし、そうなってない良作もあるんだけど、やっぱり攻め×受けがいいよね」
ぺらぺらと話すニケさんを見る。
私の知らない世界に、目の前が真っ白になっていく感覚を覚える。
得体が知れないと思っていたニケさんは、ただのレズビアンな腐女子で、性癖をぺらぺら話す変人でした。
あ、はは。
はは……。
そういえば、私が暴言吐いた時も、ひたすらふざけてたね。そういう、人だったんだ……。はは……。
黒幕かもしれないって怯えてた気持ちを返せ!
「え、黒幕っぽく見えた? ああ、無表情だからね。よく言われる」
「無表情な理由? 寒いから表情も凍るんだよ。あと、無駄に動かしてエネルギー使いたくない」
「思惑? あはは、要するに『北を守ることに専念したい』ってぐらいしかないし、北を守る以外の考えもないよ。脳筋だからねぇ」
「戦争に巻き込まれてって、領主が出ないといけないほど切羽詰まってないし、私も後方支援だから、前線に立って戦うことはないよ。人を殺したり殺されたりって、そんなことしてたら報復戦とかになって泥沼だよ。よほど馬鹿な指揮官じゃなきゃ勝てないからさっさと引くし、真面目に開戦する気もない様子窺いで死者出すほど父上も無能じゃないよ」
「割り込んだ理由? デメテルさん泣いてて、アルテミス様怒ってたから。泣き止ませて、場を和ませようと思ってね。争い嫌いだし、平和が一番だよ」
「怒って謝罪を受けれいなかった? いやあ、体裁ってものもあるからねえ。罰しないではいはいって何でも受け入れてたら、舐められるじゃない。ただでさえ昼行燈とか言われてるのに、これ以上は侍女が許さないから。仕方ないね」
「修正力? ゲームも知らないのに、どう修正するの?」
ニケさんは、無表情ながら穏やかで呑気で脳筋な、毒にも薬にもならない、単なるモブ子だった。
拍子抜けした。
悪役令嬢はニケさんの嗜好にどん引いてるし、警戒しただけ損だったっぽい。
はあ、なんか無駄に疲れちゃった…。
その後、『あそこまで言われて関われないから、私の支援は期待しないで』とニケさんに、『ハデスは私の従者だから、おいおいと派遣出来ないわ。学園外でプライベートになら許してるから、その時だけにして頂戴』と悪役令嬢に言われて、解散になった。
なんか、『転生者同士頑張ろうね!』って感じじゃなかったけど、いじめられたりざまぁさせられたりはなさそうだから安心した。
あー、よかった。
何とかこのままノーマルエンドを迎えて、──攻略途中だったあのキャラのフラグも折っとかないとね。




