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防衛特化無表情腐女子モブ子の楽しい青春  作者: 一九三
起 序章!学園生活は戦いと共に!
24/77

悪役令嬢10 お茶会

 「ニケ・クローデンスです。本日はお招きいただき、ありがとうございます」


 そういった無表情子、改めニケ嬢は、どこまでも無表情だった。

 一瞬、ヒロインが同席していることに怒っているのかとも思ったが、よくよく考えれば彼女はほとんど無表情だった。表情変えたところなんて、見たことあったかしら……?


 「アルテミス・ミーアですわ。デメテル嬢も一緒なのですけれど、よろしいですか?」

 「はい、仰せのままに」


 口ぶりを聞いていると、令嬢というより騎士のようだ。アレス様がアポロン様に対する態度が、丁度こんな感じだ。

 「どうか楽になさって」と席に座らせ、紅茶をいれさせた後に侍女を下げた。

 ヒロインには迂闊にしゃべるなと言ってある。

 どこから切り込もうかしら……。


 「ニケ様とお呼びしてよろしいかしら? ニケ様は、北で防衛を任されているそうですわね」

 「いえ、防衛を指揮しているのは領主である父です。私は手伝いしかしておりません」

 「まあ、そうなの。でも、戦いがあるんでしょう? 大変ではなくて?」

 「お心遣い痛み入ります。ですがそれが我が領の使命ですから」

 「遠慮なさないで。……そういえば、最近の北はどうなのかしら。ご存知?」

 「はい。今は夏なのでありませんが、冬の間は毎日のように攻められていたそうです」

 「大変なのね。巻き込まれなくて、よかったですわね」

 「いえ、我が領のことですから」


 徹底して建前で話されているけど、それが普通よね。うん。いきなりため口になるヒロインが幼すぎるのよね。

 さて、じゃあ…。


 「ところで、随分馴染んでいるようだけれど、あなたはいつ気付いたの?」

 「何の話かわかりかねます」


 揺さぶってみたけど、無表情で躱される。ポーカーフェイスは上手ね。


 「私は七つの時。デメテルさんは入学した時ですって」

 「左様ですか」

 「で、いつ? ああ、口調は楽にしていいわ。仲良くしましょう、なんて言う気はないけれど、追放、斬首エンド回避のために情報収集はしたいの」

 「左様ですか」


 ニケ嬢は、相変わらずの無表情で私を見て、


 「では、そのエンドにさせる、と言えば、いかがされるおつもりで?」


 と言った。

 ……転生者とかゲームについて知らないって情報がなかったら、修正力かと思っちゃうところだったわ。思い込みでこの子を敵にしなくてすんでよかった……。


 「そうね、やめて欲しいわ。公爵令嬢の私が断罪されるなんて、国が乱れるでしょう? それをあなたが望むとは思えないから」

 「……左様ですか」


 ニケ嬢は少し目を伏せ、すぐに目を合わせて来た。


 「協力はいたしません。ですが、情報交換なら応じましょう。それでもいいのなら、お話しします」

 「構わないわ。ぜひ、お願い」

 「わかりました」


 ニケ嬢はそう言って、


 「生まれたときから、前世の記憶ならあったけど、ただの前世だと思ってたぐらい。ゲームってのは、アフロディーテ男爵令嬢から聞いて初めて知った」


 と、警戒を解いてくれた。

 ほっとする。この子と敵対しないで済むだけで、大部肩の荷が下りる。


 「あ、デメテルで大丈夫です。……あの、私、転生前は高1で、……失礼なことして、すみませんでした」


 ヒロインもすかさず謝罪している。謝罪されても、困るんだけどね。

 ニケ嬢も「じゃあここでだけはデメテルさんって呼ぶね」とさらりと謝罪を躱してる。……無表情でこのおっとり口調なのが、すごくちぐはぐなんだけど、どうにかならないのかしら。だからあえて敬語でびしっと話してたのかしら。

 「私もこの場でだけはアルテミスでいいわ」と言って、さっそく話し合う。


 まずはヒロインが『誰のルートも入るつもりがないこと』を表明して、私も『ヒロインざまぁとかする気はないこと』を言った。

 ニケ嬢はおっとり、「んー?」と小首を無表情でかしげて、


 「恋愛シミュレーションゲームだから恋愛でルート分岐は仕方ないけど、なら誰と結婚する気なのかぐらいは知りたいな」


 と、ひどく現実的なことを言った。

 さすが生まれた時から記憶がある、ゲームを知らない部外者だ。


 「私は順当にいけば、アポロン様、第二王子様と結婚する予定よ。勿論アポロン様は臣籍に降下されて、うちの家に婿入りって形になるけれど」

 「わ、私は……考えてないです」

 「うん、私も相手はいないしね。でも攻略対象さんたちから選ぶことはないから、安心してねー」

 「あら、じゃあどなたか良い人でもいるの?」

 「デメテルさんはいるよねー。私は、理想が高いからねぇ」


 ヒロインがハデスのことを好きなのは丸わかりだから良いとして、ニケ嬢の理想は気になる。

 下手に変なところに嫁がれたら、困るじゃ済まない。本人の自覚があるだけマシだけど……。


 「へー。理想って?」

 「高いよ? 凛々しくて、強い人がいいなって」

 「……そんなに高い? 年収いくら以上とか、身長何センチ以上とかより、低いと思うけど」


 ヒロインが言うと、ニケ嬢は「激高だよ」と無表情で笑っているような声を出して、


 「凛々しくて強い女性が好みだから」


 と言った。

 ……女性?


 聞き間違いかと思ったけど、ニケ嬢はうっすら微笑んでいる。


 「デメテルさんもアルテミス様も好みじゃないから安心して。しいて言うなら、うちの侍女とかが好みに近いね。昔からいるからそういう対象ではないし、もっと強くて格好良い人がいいけど」


 …………。


 「だから、男の人に興味はないから安心して良いよ。男の人はあれだよね、男同士でぜひくっついてもらいたいよね。今私の一押しCPはハデス×アポロンなんだけど、どう思う? 下剋上とかナマモノって地雷?」


 じ、地雷?

 そのかけ算って、……腐ってる友達が言ってた、あれ?

 私には到底理解できなかった、……男同士のアレ?


 「男同士でくっついて、女同士で睦み合いながらそれを見る。いいよねえ、理想だよねえ。でも取り巻きさん、攻略対象さんたちは皆受け様だから、ちょっと不満だね。あ、もしかして逆カプとか押しCPとかある? 攻め様要素あるの?」


 …………。


 「そこ以外なら、ヒュプノス先生が良い攻め様だよね。うちの侍女は全然理解してくれないんだけど、もう尊いんだよ。あとアトラス先輩! 良い攻め様なんだよねぇ。プロメテウス先輩といいコンビで、もう結婚すればいいのにってぐらい夫婦なの」


 …………。

 無表情ながら水を得た魚のように語るニケ嬢を見て、思う。

 恋愛対象が女性で、男同士の熱い友情が好みで、──それをほぼ初対面に近い私たちにいきいきと語るニケ嬢を見て、思う。


 ──こいつはとんでもないド変態だ、と。


異性愛者でも同性愛者でも、そんなに親しくない人に性癖カミングアウトは変人の所業だと思います。真似しないでくださいね。

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