モブ子7 お茶会の誘い
「──と、いうことでした。ところでお嬢様、お嬢様は『転生者』なのですか?」
二人の会合を木の上から監視していたテミスが聞いてくる。
あらら、私のこと話しちゃったか。黙っててくれるとは思ってなかったけど。
この調子なら『転生者』の説明もして、テミスもある程度わかってるだろう。私とデメテルさんの会合から、そういう話をしたんだとわかったんだろう。
迷うなあ。
「そうだと言ったら?」
「上手に化けましたわね、と、いつからですか、と言いますわ」
「じゃ、よくわかんないけど適当に合わせて情報盗んだだけって言ったら?」
「お嬢様らしいですわ、と言いますわ」
「そっか。じゃあ前者で」
「ではそのように言いますわね」
「うん。生まれた時から前世の記憶があったよ。あくまで『前世』でしかないけど。あ、男同士の熱い友情が好きなのは前世からだよ」
「そこは変わっていて欲しかったです。それではあのお二人のことはどうしますか?」
「十中八九、ミーア公爵令嬢のほうから誘われると思うから断れないね。監視頼める?」
「承りました。それと、そろそろ夏季休暇ですのでお帰りの仕度を。あと、騎士団長のご子息様と殿下と宰相のご子息様と魔術師様がお嬢様に興味をお持ちのようです」
「面倒だなあ。テミス、上手いことやってくれない?」
「一介の侍女でしかない身分ですので、お断りします。夏季休暇の前まで持ちこたえられれば、というぐらいでしょうか」
「それ、夏季休暇に入る前に声かけられるパターンじゃん。……ま、いっか。仲良く行動して女に粉かけて嫉妬されてお仕置き、とか滾るし」
嫉妬からのお仕置きは素晴らしいと思う。普段溺愛してる攻め様が、受け様に言葉攻めしたりベットの上でお仕置きしたり、と考えると萌える。惜しいのは圧倒的攻め様不足だ。どうして受けしかいない。ヒュプノス先生に攻め様をやっていただくしかないな。ヒュプノス×オルペウス、滾る。
「お嬢様、気持ち悪いですわ」
「居眠りばっかりのヒュプノス先生が野獣の顔を見せて、とか、萌えない?」
「ちっとも」
「理解者が欲しいなあ…」
テミスは駄目だ。わかってくれない。
なんでかなあ。普段草食獣、というか、もう愛玩動物か家畜並みにのほほんとしてる癒し系が、嫉妬して本性表して攻めてって、最高だと思うんだけどなあ。受け様はそれを舐めきってて、『ぼ、僕はこの国の王子なんだぞ……!』とかとろとろにされながら泣いて、……あ、これハデス×アポロンだ。やっぱり下剋上は正義だ。
「テミス、ハデス×アポロンで、アポロンがオルペウスといちゃつきすぎてハデスが嫉妬してってどう? 嫉妬は最大の萌えだよね」
「お嬢様の性癖には微塵ほども興味がありませんので口を閉じてくださいまし」
「はーい」
翌々日、公爵令嬢からお茶会のお誘いを受けた。
「喜んで」と、勿論お受けした。




