35話 ゲーム序盤の街は大抵重要な秘密が隠されてるんです④
ー鐘8回直後 エリアス 付近ー
門の隣には5m位のドラゴンの銅像が立っており、その横に第二隊隊長のイエデイがあたりをキョロキョロ見渡しているのが見えた。
「イエデイ様……なぜここへ」
「俺の分身が倒された……いずれあいつらがエリアスにくる」
「イエデイ様が……やられたですと」
「ああ……生意気な人間族がまさか不意打ちで俺の分身を倒したんだ。次は俺の番だぜぇ、あったらこの鋭い爪で切り刻んでやる」
イエデイは大きな鼻で一呼吸した後に第5番隊へ呟いた。
「お前らもう言って良いぜぇ5番隊のお前らも中に入ってきな!ここは俺が守っといてやる」
「は、はい! 」
魔王軍は正当な理由があれば数字が高い者に従う。
5番隊の魔族は2番隊のイエデイの指示に従い、門の入り口からエリアス領内へ進んで行った。
ーエリアス 付近ー
サン達を載せている馬車がようやくエリアス付近にたどり着く。
門の入り口の松明の光が遠目でうっすらと見えたところで……
ゴーンゴーンゴーンゴーンゴーンゴーンゴーンゴーン
合計8回……
「……鐘がなったわ」ミーアが呟く
間に合わなかった……
僕たちはサレスの森から馬車でエリアスまでぶっ通しでかなり早く進んでいたが、結局のところ鐘8回に間に合わなかった。
「お父様……メイ……」ミーアが不安な表情をみせる。
「ミーア……」
バルトさんが門から300m位離れたところに馬車を止める。
「よし、降りよう 」
バルトさんが後ろにいる僕たちに、少し小さな声で声をかける。もし魔族が近くにいた時の事を考えて3人は目立つ馬車から降りて少し離れた、木々の茂みに隠れた。
「……バルトさん、これからどうしましょう」
サンが小さな声で呟いた。
「あぁ、それなんだがおかしいと思わないか? 」
「えっ、どう言うことですか? 」
「静かすぎるんだ。魔族が侵攻してきたのに、エリアスの街に火が放たれている様子もなく、何かが壊れる大きな音すら聞こえない。まるで静寂そのものだ」
「たしかに、綺麗な鐘八回目の音が聞こえただけですね」
「その通りだ。と言うことはもしかしたらイエデイが言っていた魔族達の侵攻はそもそもなかったと言うことも考えられる」
「アルディン、つまりエリアスは……お父様達は大丈夫だった……という事? 」ミーアが呟く。
「ああ、もしかしたら何らかの原因で侵攻は失敗してしまい何も起きていないかもしれない。しかし、その場合我々はまた別の意味でピンチになってしまう」
「……というと? 」僕はアルディンに問いかけた。
「エリアス付近の街は防犯の為、鐘8回以降は外には出ていけない事になっている。もし外出しているところが衛兵見つかってしまえば捕縛されてしまう。俺もアリアスで乞食の時は、何とか見つからない暗く誰も通らなそうな場所で一夜を過ごしたものだ。つまりもし今回何もエリアスに無かった場合、俺たちは、外出禁止令を破ってしまったということになる」
……外出禁止令、そういえばアリアスの宿屋バレンティアのティーナさんも言ってたな。
「だからエリアスの街に入る事はできない」
「領主の娘の私がいてもダメなのかしら……?」
「多分ダメだと思う。ミーア、朝僕たちはバルトさんに出発の挨拶をしたときに言っただろ? 今日はアリアスで泊まってくると。つまりその事は衛兵達もみんな知っているはずだ。しかしそれが鐘8回を超えた後、しかも今日エリアスに来ることがない領主のお嬢様が門を叩いたら色々と問題になりかねない。最悪の場合僕とバルトさんは誘拐と間違われ捕縛されるかもしれない」
「そうだ……エリアスの街に目に見える被害がない限り、俺たちは門を叩くことすらできないんだ」
「でももし、本当に魔族が侵攻していたらエリアスの街が……」
「ミーア、バルトさん。とりあえずもう少し近くまで行ってみましょう。門の前の松明がうっすらとしか見えない範囲にいたら、何も分からないです」
「そうだな」
僕たちはエリアスの門の松明の光を頼りに、木々の茂みをゆっくりと進む。




