ゴクロウとアサメ 13
ゴクロウとアサメの試合は引き分けに終わる。
はいつか来る未来に勝敗を預け、夜光の巡回者らと軽く汗を流した。
日々、鍛錬を積んでいるだけあって彼らの動きは洗練されている。攻防一体の棒術。回転力を活かした目まぐるしい挙動は防衛的で、突飛な仕掛けや先制を仕掛ける型などは殆ど見受けられない。
あくまで護身であり、習得した型を反復する事で集中力を研ぎ澄ましていく精神統一の一環という意味合いが強かった。
それでも実戦形式の試合は行う。もう何試合目だろうか。
「そこまでッ」
乾いた音。またハルシの八角棒が空高く回転していった。
「まい、参りました」
目と鼻の先に棒先を突きつけられ、ぜえぜえと荒い息を絞り出した。勝者の護人杖がかなり下へと下がっていく。
アサメだ。
「今のはもっとこう、ぐっとして、がっと」
戦闘技術は恐るべきものがあるが、指導は恐ろしく下手であった。単純に口下手である。
「はあ、ぐっ、ええと」
理解しようと苦しんでいる。観戦していたゴクロウは吹き出した。
「ハルシよう」
転がっていた棒を爪先で器用に跳ね上げ、持ち主の元へ返した。
ハルシはおっかなびっくりで受け取る。
「人体は関節の可動域が決まっているんだ。夜光族だからって肘が反対側に曲がったりしないのは見れば判る。手首は特に動くがその分だけ脆いから極められると特に痛むし、今みたいに持ち手が耐えられなくなって手を離してしまう。特に今の場合は突きに対して引きが甘かった。突くよりも引くを意識した方が次の一手に」
そうすると、この場は、あえて指摘するなら、もっと足捌きを。云々。
ゴクロウは一見大柄で粗暴に見えるが、意外と話が長くて細かい。ハルシも困惑気味で幾つも疑問符を浮かべていた。
「把持する時は小指から順に力を込めて」
「いえ、そこはぐいっと薄めて、軽めにどんと」
「待て待て。肩関節の伸展角と外転角の合流点に」
「前にずっと、後ろはずいん、ですよ」
まるで話について行けなくなったハルシはどうしようかと背後を振り向いた時。
鬼気を背負うヒクラスキと目が合った。
「覚悟は良いんだろうね、ハルシいいいいい」
族長の咆哮が修練場を超えて園内中に響いた。




