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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
2章

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45話 経験がものを言う

 

 落ち込む大樹をよそに、僕らは順調にスケルトン達を葬っていき、ある程度の頻度で現れる戦斧持ちは咲夜が、陰陽師リッチは僕と冬乃で即行で倒してしまう。


「ここまで殲滅力が高いと、おいら達のすることがほとんどないんだな」

「倒し損ねたのを狩るくらいか……」

「初日よりも楽で、なんだか申し訳ないですね」


 性癖三銃士達は大樹と同じでどこか少し落ち込みながら、右側からくるスケルトンの処理をしてくれる。


「なあ蒼汰。オレ達要らなかったんじゃね?」


 僕がせわしく手元の操作をしつつ周囲を確認して、陰陽師リッチがいたらそちらに〔忌まわしき穢れは(ブラック)逃れられぬ定め(イロウシェン)〕をまとった弾丸を放っていたら、落ち込んで自信なさげな大樹からそんなことを言われた。


「いや、そうでもないよ。戦斧持ちや陰陽師リッチの来る頻度が増えてるから、大樹達が協力してくれたお陰で楽にこの形に持ち込めたし」

「そうか? 正直蒼汰達だけでも出来たんじゃないか?」

「出来はするだろうけど、危険度が上がるんだよね。それに偶々【典正(てんせい)装備】を手に入れたから僕らはこの戦法が出来るだけであって、冒険者としては大樹達より全然経験なんてないから、何かおかしなことがあったら教えて欲しい。頼りにしてるよ」

「おっ、おう。そうか……、そうだな。よし、任せろ! おい、お前ら、落ち込んでる場合じゃねえぞ!」


 自信喪失しかかっていた大樹が復活し、落ち込んでいた仲間を鼓舞して士気を上げながら、撃ち漏らしたスケルトン達の殲滅に戻ってくれた。

 今、大樹に言ったことは割と本音だ。


 落ち込みながら戦われるのは普通に危ないのはあるけど、そんな事よりも周囲に異変があったらすぐに気づいてくれる人間がいてくれるのはありがたい。

 僕らは1つのダンジョンしか探索したことがなく、ゴブリンばかり倒していたので冒険者としての経験は浅い。


 やっぱりいち早く気づけるのは何よりも経験がものを言うと思うから、大樹達にはその辺頼りにしている。

 まあ迷宮氾濫(デスパレード)に初参加なのは一緒なんだけど、周囲を観察する目が増えるのは異常が何かあったらすぐに気づけるから助かるよね。


 そのまま大樹達とスケルトンの殲滅を行っていたら、空にいつものロケット花火が射出されるのが見えた。


「大樹様のパーティーは休憩となります。戻ってきてください」


 バリケードの入口から大声で隊員の人が大樹達に向かって、声をかけていた。


「それじゃあオレ達は戻るが、まあ大丈夫だと思うが気を付けろよ」

「うん。それじゃあまた後でね」


 大樹達は下がっていったので、必然的に僕らが守らなければいけないスペースが広くなるわけだけど、

 元からこの4人で守れる程度の広さなので問題ない。


『大樹達が休憩に行ったから、撃ち漏らしたスケルトンを倒す量が増えるわけだけど』

『ん、問題ない』

『さすが咲夜』


 高速で移動して普通のも戦斧持ちも関係なく潰してるからね。頼もしい。


『わたしは咲夜先輩みたいに速く動けませんから、自分の周囲に来た敵を倒すので精一杯ですけどね』

『そこは競うものじゃないでしょ。私なんてただ〔籠の中に囚われし焔(ブレイズバスケット)〕を撃ってるだけで、弾の補充は蒼汰にやってもらってるんだから、実質ほとんど何もしてないわよ』

『いえ、冬乃先輩が何もしてなかったら、誰も何もしてないことになると思いますよ』

『……そうだね。咲夜も頑張っていっぱい倒してるけど、冬乃ちゃんみたいに沢山の敵を一度に倒せてる訳じゃないし』


 僕らは雑談しながら次の交代まで現状維持し続けた。

 流れ作業の様に敵を倒し続けること30分、空にロケット花火が放たれるのが見えた。


『おっ、交代だね』

『昨日までの流れと同じってことは、次の休憩明けはまたやり直しってことよね』


 冬乃のしょうがないけど面倒臭い、といった感じの雰囲気が見て取れた。


『それはしょうがないよ。この状況を維持しようと思ったら、僕と冬乃が必要不可欠なんだからさ』

『ま、そうよね。休憩なしでここに立ち続けるのはしんどすぎるし』

『不安なのが、大樹達が無理してこれを維持しようとしないかだけど……』

『さすがにそれはないんじゃないですか? 先輩が言った通りお二人でなければ、こんな状況作るのはおろか、維持もできませんよ』

『……不安なら、交代する時に一言言っておけばいいと思う、よ?』

『確かに咲夜の言う通りだね』

「おーい、蒼汰。交代だ」


 おっと。話していたら早速大樹達がこちらに向かって来たぞ。

 僕らはそれを確認し、すぐさまバリケード入口まで戻り始めたけど、そうして移動している間にふと閃いた。


 あ、試しにあれを渡しておこう。


「あいよ大樹。じゃあこの後30分頑張ってね」

「おうよ。結構楽させてもらってるから、ここで頑張んねーとな」

「うん、よろしく。って言ってもこの状況は維持しなくてもいいから」

「やりたくても出来ねえよ……」


 冷静なようで何より。


「じゃあ後はこれ渡しとくね。〈解放(パージ)〉」

「ん、なんだ?」

「僕がさっきから陰陽師リッチに当ててた、結界の効果を反転させる【典正(てんせい)装備】を纏わせた弾。いつまで効果がもつか分からないけど無いよりマシでしょ?」

「おっ、助かるぜ蒼汰!」


 僕が渡した弾を大樹はポケットにしまうのを見届けて、僕は先に戻っていったみんなを追いかけた。


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