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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
14章

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エピローグ・完

 

「課金、しそびれた……!」

「「「「「「15万は?」」」」」」


 ようやく念願の[無課金]の効果を無効にして課金できるようになったのに、それっぽっちの課金は課金じゃないやい。


 [純然たる遊戯を(フリーミアム)享受せよ(ユーザー)]を使用して10日。

 ようやく僕は後悔と共に正気を取り戻した。


『どちらかと言うと狂気を取り戻しちゃったわよね』

『クシシシ、私としてはこっちの方が面白くて好きだけどね』

『キシシシ、同感ね。やっぱりあなたはこうでないと』

『フヒッ、課金が自由に出来ないならわたしのゲーム画面を見せて嫉妬を煽れるわね』

『すぴー』

『もぐもぐ』


 3日前から[ソシャゲ・無課金]が再び使えるようになって[放置農場]が復活した後、魔女達は課金欲を無くしてしまった僕に対して口々に酷い事を言っていた。


 絶望感に打ちひしがれている僕に対してもっと言う事あるんじゃない?


『はぁ、ワシはこんなのに負けたのじゃな……』

『それを言うな。虚しくなる』


 しれっと会話に混ざっているのはかつて【魔王】だった2人、“憤怒”の魔女アグネスと異世界の魔王リーゼだ。


 傍から見たら【魔王】騒動の元凶である2人をかくまっているかのようだけど、勝手に居ついているのだからどうしようもない。

 一応政府の方には報告済みだけど、英雄となった僕の立場と僕のスキルの中で無害化されている現状を鑑みて、公に広めないことと僕が彼女達を監視することを条件にその存在が許されていた。

 というか、どうしようもない、というのが正確なところか。


 魂だけの存在になっている者達に対して干渉できず、下手に手を出して【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】を生み出されるよりは現状維持がいいという判断なんだろう。


 まあそんな事はどうでもいい。

 せっかく課金できるようになったはずなのに、自由に課金出来ないなんて酷い話だと思わない?


「各ソシャゲに3万円ずつ課金してるじゃない」

「ううぅっ、違うんだ冬乃。課金できるようになったら300万ずつ課金したかったんだよ……!」

「頭どうかしてるんじゃないの!?」


 今回の騒動で報酬を得た結果、資産があと少しで12桁いくレベルになってるんだから1500万くらいはした金じゃないか。


「1500万って高級車とか余裕で買えるよね」

「ソフィは分かってない。ベンツはワクワクもドキドキもさせてくれないんだよ!」

「男の子って車とか好きだと思ってたよ」


 ガチャ>ベンツ ですが何か?

 高級車乗り回してタイヤとエンジン回すよりも、僕はガチャを回したいんだ。そもそも免許ないし。


『なんで私達は1人の人間、それもほとんどガチャにしか興味のない人間に全員やられちゃったのかしらね』

「その言い方じゃ僕がまるで1人でやったみたいだから。他にも協力してくれた人達と力を合わせたお陰だよ」


 そもそも最終派生スキル以外サポート系のスキルしか持ち合わせていない僕が、1人でどうにか出来るわけ無いよ。


『でも正直、あなたがいなかったら私達は誰にも負けなかったと思うわよ』

『『『『それはそう』』』』

 ――コクコク


 エバノラに魔女達全員が賛同している。

 あの“怠惰(ローリー)”ですら“暴食(ビディ)”と一緒に頷いているのだから、それだけ自分達の試練がクリアできるものではないという自覚があったんだろう。

 まあ確かにどれも一筋縄でいくものではなかったけど、僕がいなくてもクリアできる人がいないってのは大げさでは?


 そんな事を言ったらエバノラ達はおろか乃亜達にまで全員から呆れの目で見られた。


『何を言っているのですご主人さま。ご主人さまみたいな異常なガチャ欲を持ってる人間でもなければ、あんな精神にくる試練達をクリアできるわけないのですよ』


 中々酷い事言ってるねアヤメ。


『我としては主はもっと自分の功績を誇っていいと思うぞ?』

『そうだの。それに主様が主様だったからこそ今の妾達がおるのだから、もっと己の成した事を誇ってほしいものじゃ』


 クロとシロがそんな事を言って来るけど、僕はただただ課金が出来るようになりたかった結果そうなっただけなんだけどなぁ。


「誇って最終派生スキルの代償が消えるならいくらでも誇るんだけど……」

『『『はぁ、処置無し(か)(なの)(だの)』』』


 アヤメ達親子に口をそろえてため息までつかれた。

 いいじゃん。そもそも本来の目的はデメリットスキルから解放されるはずなのに、最終派生スキルを手に入れても完全に無効化できていないんだから称賛されても特に嬉しいとも思わないし、ただ気分が落ち込むだけなんだよ。


「冬乃達が課金させてくれなかったら自殺もんだった」

「世界を救った人間が笑えない理由で死のうとしてんじゃないわよ」


 冬乃が馬鹿な事言ってんじゃないとペシペシ頭を叩いてくるも気にする余裕がない。


「課金できるようになるためにレベル上げ頑張ったのにこんなオチはあんまりだよ……」

「蒼汰君は相変わらずだ、ね」

「……課金したければボク達に頼れば問題ない」

「じゃあ今度は3000万円分を――」

「「(……)それは無理」」


 咲夜とオルガに拒否されたらこのメンバーの中だと誰も高額課金してくれないから詰んだ。


「先輩、しれっと課金額を倍にしないでくださいよ」

「そもそも課金欲のない鹿島先輩に何千万も課金させようとしても、本人が拒否しそうなものだがな」


 悲しいことにリヴィの言う通り、()()()が課金しようとしないのだから高額になればなるほど無理な気がする。

 ()()()15万ですらあの時は拒否感を覚えたので、その100倍、200倍ともなれば絶対に受け入れないだろう。


「ううっ、こんな程々にしか課金できないだなんて……」

「ソウタ、言っておくけどそれが普通だからね」

「私は無料で遊べるゲームにお金を使うことすらどうかと思ってるくらいなんだから、ある程度課金できるだけマシだと思いなさいよ」


 ソフィも冬乃も厳しい。


 ガチャ廃人プロを目指していた僕がガチャ廃人程度――いや、今回まともに課金するのが久々だったから15万課金できただけで、今後は月10万円(ワンコイン)も課金できるかどうかも怪しいのを考えると廃人ビギナーとも呼べない存在にしかなれなくなってしまった。

 そう考えるだけで涙が止まらないよ……。


「シクシク」

「しょうがないですね先輩は。多少の課金ならさせて上げますから元気出してくださいよ」


 そう言いながら乃亜が僕を膝枕して頭を撫でていた。いつものデメリット対策であると同時に僕を慰めてくれている。

 僕を理解してくれている乃亜達でなければ僕に課金するよう促してくれない事を思うと、色々な意味で僕は乃亜達から離れられなくなってしまったようだ。


「乃亜は何だかんだでデメリットスキルにそこまで苦しんでないよね……」

「先輩がいますからね。あっても無くてもわたしは幸せですよ」


 僕を見下ろしながら向けてきた乃亜の笑顔がとても眩しい。

 そうハッキリ言われると照れてしまうよ。


 僕も乃亜のようにデメリットスキルだなんて気にならない! って言えればいいのに、ピンポイントで僕のライフスタイルのど真ん中をぶち抜く様なデメリットを与えられてしまった以上、そうは言えない。


 課金はほどほどに?

 自制心を発揮させて当たらない悔しさも楽しむ?


 ふざけんな。

 やっぱガチャは本命ぶち抜いてこそでしょ!


 いくらでも資金をつぎ込めるならどんなに渋いガチャでも欲しいモノが手に入るというのに、そのための課金が出来ないのはクソだ。


 ああ、もっと課金できるようになりてぇーー!!!



 はい、ということで【ああ、課金してぇーー!!!】はこれにて完結になります。

 最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。


 というかよくここまで読んでくれたなぁーって作者は思います。

 1話の文字数が短いとはいえ、670話近くって途中でギブアップしてもおかしくないし。


 それでもこの作品を最後まで読み、面白かったと言っていただけるなら作者冥利につきますね。

 ちなみにみなさんどの章が好きです?

 作者的には何だかんだで1章が一番ノリノリで書けた気がします。主人公がめっちゃ課金できなくて落ち込んでるから(笑)。


 蒼汰)「おい!!?」

 作者)『なに?』

 蒼汰)「酷くない?」

 作者)『だから何が?』

 蒼汰)「人が課金できないのに笑っちゃダメでしょ!」

 作者)『(*^▽^*)』

 蒼汰)「開き直った!? って、そうですよ。なんで完結までいったのに結局課金がちゃんとできないんですか!」

 作者)『だってお前は制限されてる時が一番輝くから』

 蒼汰)「生みの親が一番の敵!」

 作者)『実際作中の生みの親がお前に[無課金]くっつけたからその発言は間違いではないんだよな』

 蒼汰)「それもそうですけど、決定権あるのあなたですよね。[無課金]を無効にしても課金できなくするとか人の心がないんですか!」

 作者)『なかったらまともに作品書けないよ?』

 蒼汰)「そうじゃない」

 作者)『まあお前の言いたいことは分かるけど。いや、最初は考えたんだよ。課金フリーになってハッピーなお前を』

 蒼汰)「いいじゃない」

 作者)『面白くないじゃない』

 蒼汰)「ん?」

 作者)『さっきも言ったけどお前は制限されてる状態が一番輝いてると思うのよ。なのに最後解放されて終わりは一番の持ち味を消すことに……』

 蒼汰)「消してしまえ」

 作者)『0.1%の冗談はともかく』

 蒼汰)「本気度の強さ」

 作者)『メタ的な発言をすると続きを書ける余地を一応残したかったのもある』

 蒼汰)「なん、だと……!」

 作者)『書くかどうかはともかく、今のお前なら今度は最終派生スキル後の課金欲を何とかしようと頑張る姿が目に浮かぶじゃん』

 蒼汰)「確かにそうですね」

 作者)『それでもう1章か2章くらいやれそうじゃない?』

 蒼汰)「よし、それなら今度こそ課金ができる!」

 作者)『そしてその更に続きで異世界にでも飛ばして現代に戻ろうとする課金厨が書ける』

 蒼汰)「絶対に止めろーーー!!!!!!」

 作者)『ダメ?』

 蒼汰)「ダメに決まってるでしょうが! そんな事されるぐらいだったらまだ今のままがマシですよ!」

 作者)『ガチャそのものが出来なくなるからな(笑)』

 蒼汰)「笑えないんですよ……」

 作者)『まあ今のところそこまで書く気はないから安心して。今のところは』

 蒼汰)「だから最後の一言が不穏なんだよーー!!」


 続きを書く書かないは置いておいて、最後まで面白おかしく書けたからヨシッ!


 あー楽しかった。


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― 新着の感想 ―
コロナで死んだりとか色々して離れてる間に終わってた! あと10年は連載続くと思ってたのに…
完結ありがとうございました! なろうにハマった作品の一つなので感慨深いです、、、( *¯ ω¯*)…… 主人公はまぁ不幸な方が読者的にも輝いてるのでそのままでお願いします。
完結お疲れ様&おめでとうございます!! こちらも沢山楽しませていただきました♪ 蒼汰くんの貞操は最後まで守られた(*´∀`*)、、、よね?
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