50話 最終派生スキル[純然たる遊戯を享受せよ]
『な、なんじゃこれは?! こんなのまるで【魔女が紡ぐ物語】のようではないか!』
『は、はは……。有り得ないわ……』
『フヒッ、嫉妬する気にもなれないわね……』
驚くのも無理はない。
最終派生スキル[純然たる遊戯を享受せよ]。
この力は自身が手に入れた【典正装備】の【魔女が紡ぐ物語】の能力を最大3つまで同時に自身に付与が可能。
ただしセットできる能力はガチャにより決まる。
そして3つセットしている状態でガチャを回した場合、セットされた能力をどれか一つ外さないといけない。
そして外したものはガチャの中には戻らず【典正装備】が収納されている左手首にある入れ墨の中に戻ってしまうというものだ。
3つの【魔女が紡ぐ物語】の力を同時に使えるということの意味、それはすぐに分かる。
「【アリス】×【ドッペルゲンガー】」
僕は【アリス】の夢を操る力で大量の【ドッペルゲンガー】の元となる黒い人型の何かを創り出す。
するとその直後、現れた【ドッペルゲンガー】達はすぐさまその姿を変えていく。
『な、……なっ!!?』
その姿はまるで鏡写しの様にアグネスが率いる【魔女が紡ぐ物語】達の姿へと変わっていた。
『あ、有りえないのじゃ! ワシが世界中に点在するダンジョン内にいる【魔女が紡ぐ物語】達を連れて来たのに、貴様1人だけでそれを創り出すことなど……!
……いや、そうか。そんなもの見た目だけの張りぼてに決まっておる。者共、目の前の敵を殲滅するのじゃ!』
確かにアグネスの言う通り、【ドッペルゲンガー】の力で能力はある程度コピー出来ているけれど規格外の能力をコピーした分耐久力がないので、戦い合えば間違いなく【ドッペルゲンガー】の方がやられてしまう。
だけどそれを補う術がある。
「【マッチ売りの少女】」
僕がマッチの火を灯すと、【ドッペルゲンガー】に様々な【典正装備】を装備させる。
乃亜の〔報復は汝の後難と共に〕や、ソフィの〔不定形な防御陣〕を装備させれば不安な耐久力を補えるし、いっそのこと攻撃力を強化させられるものを装備して特攻させてもいいからね。
『こ、今度は【典正装備】もじゃと……! どれだけ規格外な力なのじゃ!』
伊達にスキルスロットを7つも対価に要求した最終派生スキルなだけある。
僕自身もこの能力にはビックリだよ。
まあ今はそれはいい。
「返り討ちだ」
『くっ、張りぼてに負けるでないぞ!』
【アリス】で別空間に【魔女が紡ぐ物語】達を閉じ込められて良かった。
戦闘の規模が大きく激しすぎて絶対乃亜達にまで被害が及んでいたよ。
僕は【マッチ売りの少女】の能力で空間断絶できる透明な壁を創れるから問題ないけど。
『ブモオオオオオオオオオオ!!!』
『■■■■■■■■■■■■■■!!!』
【グガランナ】同士がぶつかり合って衝撃音が凄い。
デカい牛同士のぶつかり合いだから当然と言えば当然か。
そしてその軍配は――
『やったのじゃ! 多少装備で強化したとはいえオリジナルに勝てる道理はないわ!』
アグネス達【魔女が紡ぐ物語】側に上がった。
とはいえそれでも十分【魔女が紡ぐ物語】達への被害があり、約2割くらいは倒せたんじゃないだろうか。
何故かいつもの【典正装備】の入ってる宝箱は出てこないけど、今はいい。
それよりも次だ。
「2連ガチャ」
『は? べ、別の【魔女が紡ぐ物語】の能力がまだ来るじゃと……』
先ほどのように僕の背後からガチャリと重い音が2回鳴る。
そうして出てきたカプセルは勝手に割れ、中から現れたのは【モルガン・ル・フェ】と【獏】だった。
運がいいね。
「パージ、【ドッペルゲンガー】【マッチ売りの少女】。セット【モルガン・ル・フェ】【獏】」
パージされた【ドッペルゲンガー】と【マッチ売りの少女】は左腕の入れ墨の中へと戻っていく。
そして僕の恰好がみすぼらしい黒っぽい服から、幻想的な豪華なドレスへと変わる。
【ドッペルゲンガー】【マッチ売りの少女】の組み合わせで終わらせられれば良かったけど、さすがにその能力を無尽蔵に使えはしなかった。
【アリス】もこの空間を維持する程度しか力が残っていない以上しかたがない。
とはいえ正面からのぶつかり合いで叶わないなら、有効的な能力を持つこの2つにチェンジ出来るのは悪くない。
特に【獏】は【アリス】との相性が最高だ。
「“カムランの戦い”」
『あ、わたしの試練のやつ』
だけどまずはその前に、より効果的になるように【モルガン・ル・フェ】から使っていこうか。
さああの時の苦しみをお前達にも味わわせてあげるよ。
『ぬあああ!! 新キャラ出してて羨ましいとかうるさいのじゃ!』
『ガチャが30連しか出来ない苦しみ……!』
『課金出来て妬ましいと、頭に響く!』
アグネスと【魔女が紡ぐ物語】達が頭を押さえて呻き出す。
さあ存分に“嫉妬”を植え付けられる苦しみを味わうといい。
多少の試練の改ざんなら可能だったのであの時と全く同じという訳ではないけれど。
あの試練の時の“カムランの戦い”とは違い、今回は各々が武器を強制的に所持させられ、特定の場所まで運ばなければその武器が外れない仕様だ。
もちろん武器に触れている間は嫉妬心を強制的に植え付けられるというものであり、その嫉妬心は僕がかつて抱えていたものである。
早くしないと心がどんどん蝕まれてしまうよ。
まだまだ僕のターンは終わっていないのだから、急がないとこちらの手が尽きる前に全滅してしまうぞ。
【魔女が紡ぐ物語】よりも【魔女が紡ぐ物語】している主人公って……(゜Д゜;)
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