表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
14章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

649/677

29話 存在しない存在

 

 ――パキパキパキッ


 連続して何かが割れる音が背後から聞こえてきた。

 それが何かは明白である。


 【魔王】らしきものの塊にヒビが入ってる音だ。


「どう考えてもあそこから何かが生まれるよね」

「まさかまさかの復活パターンですか」

「復活は復活でも別の肉体で蘇るってやつじゃない?」

「そうなるとさっきの厄介なスキルを使って来たりはしない、よね?」

「……もしかしたらさっきまでの【魔王】に新たな力が加算されてるかもしれない」

「いや、そんなのもう相手にできないよ」

「はぁはぁ、どちらにせよ私達にはもう戦う余力などないがな」


 リヴィの言う通り、とにかく僕らは【魔王】が出て来る前にこの場を離れないと、足手まといになってしまう。


「クロ、〔宿主なき石の形代(マーブル エフィジー)〕でリヴィを運んでくれる?」

『分かった』


 クロにリヴィを背負わせると僕らは軽く走って移動する。

 みんな疲れてはいるけど、背後の脅威から少しでも離れるために足を止めることはない。


 ――パキャーンッ!


 だけど移動するスピードがそこまで早くは無かったため、サポート組の所に辿り着くよりも前に【魔王】らしきものの塊が完全に壊れ、中から現れたのは――


「子供?」


 1人の少女だった。

 小学生くらいの女の子で、外に出てきたばかりのせいかぼんやりとしているのが遠くからでも分かった。


 さっきまでと違い見上げるほど大きい【魔王】でもなく、背中に翼が生えているわけでもなく、どこにでもいそう、というには少し特徴的な女の子。


 地面ギリギリまで伸びた白髪に近い銀髪が目立っており、一度見たら忘れなさそうな子だ。

 他に強いて言うのなら黒いワンピースに魔女の衣装のようなマントを羽織っているくらいではあるけど、あの子が【魔王】だと言われてもピンとこない。


「あれが……【魔王】?」

「いくら敵でもあんな子に攻撃は……」

「不意打ちするチャンスなんだけど、ねぇ」


 聞こえてくる冒険者の人達はほとんどの人が躊躇っており、先ほどまで果敢に謎の物体に攻撃していたとは思えないほどだ。

 気持ちは物凄く分かるけど。


「何言ってやがるてめぇら! こんなチャンス逃してたら何時まで経っても【魔王】が倒せねえだろうが!」


 そう言って果敢に(?)【魔王】らしき女の子へと剣を片手に向かって行く人がいた。

 その声に続くように数人同じように【魔王】へと走っており、中々に冷徹や粗暴な人達である。


 とは言え、その行動を否定はできない。

 言ってることは正しく、たとえ見た目が少女の姿であったとしても、【魔王】を倒さなければ世界中のダンジョンで迷宮氾濫(デスパレード)が起こり得るのだから。


「これでも食らえや!」


 そう言って巨漢が少女へとその手に持つ戦斧で振り下ろした。


 頭上に振り下ろされる戦斧を見て、思わず少女が真っ二つになる想像をしてしまい思わず目を瞑ってしまう。

 だけど不思議と何の音も聞こえず、どうなったのかと恐る恐る目を開くと、そこには信じ難い光景があった。


「なっ、馬鹿な!?」


 そこにいたのは少女と巨漢だけでなく、どこかで見覚えのある存在――【ミノタウロス】らしき存在が巨漢の戦斧を両手で受け止めていた。


『ブモーーーー!!』

「ぬああっ!?」


 蹴り飛ばされた巨漢はゴロゴロと転がりながら地面を滑っていく。


「なんだこの魔物は?!」

「っ!? 違う、魔物じゃない! 【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】だ!」

「なんだと!? 間違いないのか?!」

「ああ。[鑑定]で〈【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】:ミノタウロス〉と出てるから間違いない」


 嘘でしょ?

 もしかしてとは思ったけど、遠くだったしそれっぽい魔物と見間違えただけだと思ったのに、まさか本当に【ミノタウロス】だったなんて。


「それにこの少女に見えるものは、〈【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】の魔王〉だ!」

「はぁ? 何を今更。この【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】が【魔王】であることくらい誰だって――」

「違う! [鑑定]の結果が〈【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】:【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】の魔王〉なんだ。

 ただの【魔王】じゃない。

 【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】を呼び寄せて()()()【魔王】なんだよ!」


 は……?


 有り得ない。

 そう言いたいのに遠くで見える光景がそれを許さなかった。


 【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】を率いる【魔王】なんて()()()()()()()()()と言ってしまいたかったけど、実際にその隣に【ミノタウロス】がいて、まるで配下のように付き従っているのだから嘘っぱちだとは言えなかった。


「じょ、冗談ですよね? 冒険者学校の時にあれだけ苦労した【ミノタウロス】を召喚できるなんて……」


 乃亜のその言葉に頷いてあげたくても、遠くからでも分かる【ミノタウロス】の威圧感は否定できない。


『ここに集うのじゃ。我が下僕達よ』


 そんな【ミノタウロス】だけでもいっぱいいっぱいだったのに、【魔王】は追い打ちをかけるように別の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】を次から次へと呼び出した。


 数体どころではない。

 何百体もの【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】が【魔王】の背後に控えるように現れた。


『我が敵を怒りのままに蹂躙するがよい』

『『『■■■■ーーーー!!!』』』


 かつてない最悪の迷宮氾濫(デスパレード)とも言える光景がここにあった。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どれ1つとってもやばいのにそれきちゃう!?織田信長とか起動した瞬間詰みでは?
ふ、、、 これが、蒼汰くんのクラスメート男子達の怨念か、、、 あんなにイチャイチャしてたから、、、
つまり【典正装備】を手に入れるチャンス到来か・・・ 会えたら手に入れれると言っていた皆の夢叶いそうやねwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ