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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
13章

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43話 予備動作

 

 ―――――――――――


 ワタシは【(バク)】が夢に干渉する存在であることから、第一の試練では飽食の悪夢を、第二の試練では即死の悪夢を設定した。

 本来であれば第一の試練はともかく第二の試練では広大な迷路のため膨大なリソースの消費となり、その試練だけ展開するので精一杯になる。

 だけど第二の試練のクリア条件を1分足らずでクリアできるものにし、さらに密かに道中にヒントを散りばめておくことによって、そのリソースを軽くした。

 そのため、最終試練に大半のリソースを回せている。

 勝ち目は無い。


 ―――――――――――


 まさかあの鬼畜な第二の試練でヒントがあったなんて全く気が付かなかった。

 それにもっと早く気づいていれば、あんなに苦労しなくて済んだのに……!


 いや、今はそんな事はどうでもいい。

 それよりもどうすればいい?

 あんな悪夢を見せられてはろくに動けそうにも、ん?


 ふと周囲を見ると僕の傍に呼び出した冬乃がぼんやりと立っていた。


 …………。

 いるじゃん、悪夢が効かない人材!?

 他のみんなと違って悪夢にうなされていないし、[助っ人召喚]で呼び出した人ならあの攻撃は無意味だったか。


「冬乃、【(バク)】に全力で攻撃して!」

『それはずるい』


 僕の指示に対し、冬乃は【(バク)】へと攻撃を開始する。


 7分しか持たない事を考えると、【(バク)】と会話(?)したのは失敗だった。

 あとどのくらい持つか分からないけど、【(バク)】にこれ以上悪夢を再現してくる攻撃をさせないようにしないとこっちがもたない!


『厄介』


 【(バク)】が顔をしかめながら冬乃の攻撃を避けている間に、咲夜達3人の正気を戻さないと。


「咲夜、シロ、クロ、しっかりして!」

「うぅ、ああ゛っ!」


 咲夜が泣きながら僕にしがみついてきて、まるで絶対に離さないとでも言わんばかりにギュッと抱きしめてきた。


『あの程度の復讐で事を収めるなど生ぬるかった!』

『ああそうじゃ! もっともっと痛めつけてやれば良かった!!』


 駄目だ。

 咲夜もクロ達もまるで僕の声に耳を貸してくれない。


 て言うか、咲夜にしがみつかれてるから身動きが出来なくなって余計に悪化した!?


 このままじゃマズイ。

 とりあえず命綱である[助っ人召喚]をもう一度使えるように[動画視聴]を見て1回分回復しとかないと。

 30秒かかるから、まだ呼び出した冬乃がいる間にやらないといけない。

 問題はその動画が射幸心をあおるよう[有償ガチャ]のCMのため、割と精神的にダメージを負うことだ。


 いや、大丈夫だ僕。

 このスキルを使った時と比べて今は課金額が大幅アップしているのだから、来月に大量に回してやろうとむしろ気合が入るはずだ。


 よし、いける!


『たった10連で君の魂は満ちるのかい?

 今なら100連が50%オフの特別価格で回せるよ!

 この機会にぜひ回してみよう!』


「うわああああっーー!!?」


 そんな馬鹿な……。

 そういうイベントは普通元旦とかのタイミングでやるものじゃないの!?


「しかも50%オフじゃ5か月分って結局課金額が足りなくて回せないじゃん……。

 課金しても使わずに貯めてろって?

 無理だ……」


 あまりに無体なCMにシクシク泣いていたら、頭をポンポンと叩かれた。


「よしよし」

『主よ、そう落ち込む出ないぞ』

『出来ない事はスパッと諦めた方が建設的だぞ』


 3人が哀れんだ目でこっちを見ていた。


「3人共もう大丈夫なの?」

「蒼汰君見てたら落ち着いてきた」

『さすがにちとまだ辛いが、泣きわめく主様を見ていたらの』

『言い方は悪いがあまりの醜態に見てるこっちは冷静になれた』


 酷くない?


「まあ復活したなら何でもいいや。とりあえずどうするの?

 今は[助っ人召喚]で呼び出した冬乃が戦ってくれるお陰で【(バク)】の精神攻撃がこっちに向かないで済んでるけど、顕現できる時間は残りわずか。

 またあの攻撃を食らう前に3人は避難しておいた方がいいんじゃない?」


 僕はまだ平気だけど、一度でも喰らえば正気を保てなくなるのだから3人はもう逃げた方がいいと思う。


『馬鹿を言うな主よ。ここでは死んでも本当に死ぬわけではないのだから、どうせならばただこの場から逃げ出すよりもあの忌々しい過去を思い出させたヤツに一矢報いてくれるわ』

『クロの言う通りじゃ。もしまたさっきの攻撃を食らって妾達が行動不能になったら見捨ててくれてよい。

 もっとも次は食らわんがの』

「無茶苦茶言うなぁ~。それに次は食らわないって言うけど、気が付いたら攻撃されてるのにどうやって避けるつもりなの?」


 【(バク)】がちょっと口を動かしただけでいつの間にか記憶を失ってて、吐き出された悪夢が広範囲に素早く広がるから避けようがないじゃん。


「蒼汰君は気づかなかった? 【(バク)】は口を開く前にこっちに視線で狙いを定めながら口をもごもごと動かしていた、よ」


 え、何それ?


『うむ、その通りだ。記憶を奪う前の予備動作なのであろう。ゆえに記憶を奪われぬように高速で立ち回れば、あの攻撃は食らわぬよ』

『一度見てしまえば近づくことは出来ずとも、そう容易くあの攻撃を受けることはないの』


 3人はたった一度攻撃を受けただけでそれを把握していたのに、僕は二度も受けて全く気付かなかったんですけど!?

 これが普段前衛で戦っている人間との差なのだろうか……?


 いや、落ち込んでいる場合じゃない。

 [助っ人召喚]がたった今消えてしまい、再び【(バク)】がこっちに狙いを定めてきたんだ。


 すぐにまた[助っ人召喚]で冬乃を呼び出し、僕らは再び【(バク)】へと攻撃を仕掛ける。

 僕はともかく3人がまたあの攻撃を食らえばおしまいである以上、これが最後の攻防となるだろう。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
主人公に人生最大のトラウマを植え付け、それをループ体験しているのを見ているお母さんの気持ち。それとも小窓はもう空いてないのかな
あんな仕様の試練を用意した人から言われる卑怯のなんと甘美な響き(*´∇`*)
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