40話 なんでこんなに活躍するのか日用品
「みんな、咲夜の攻撃が当たるように連携して攻撃をするんだ」
「『『了解』』」
あの【獏】は今の所咲夜の攻撃だけは確実に食らわないように動いていた。
咲夜の攻撃だけは効くんじゃないだろうかと思うけど、その条件さえつかめればシロやクロの攻撃も効くようになるかもしれない。
僕は穴が開くほどジッと観察して【獏】がどの攻撃だけは確実に避けようとするか、こちらのどんな行動は嫌がるかを把握することに努めた。
「全部、避けられる……」
『くっ、我らは体よく隠れ蓑に使われているな』
『かと言って咲夜だけでは飛んでくる炎弾をどうにかできぬのだから厄介じゃの』
ふむ。【獏】は咲夜の攻撃だけは絶対に避けていて、シロとクロの攻撃は完全に無視。
戦い始めの時は一度だけ避けようと動いたのに今はそんな気配は一切ない。
インターバルとかないかのように何度も攻撃を無効化している。
というかこれは実際にインターバルなんてなく、条件に当てはまるものは攻撃が効かないということか?
まだ情報が足りない。
「〔似ても似つかぬ影法師〕」
僕はこっそり二頭身ほどの自身をデフォルメした分身を創る文鎮を取り出すと、早速その能力を使う。
基本的にこの分身は大した力は無くて先行で索敵させる程度でしかないものの、ある程度なら物の持ち運びも出来る。
これを使って罠を仕掛ける。
罠と言ってもせいぜいかすり傷や切り傷ができたり、脚を引っかける程度だろうけど、どんな罠なら効果があるかを調べられるはず。
それにそういう罠なら咲夜達にもそこまで邪魔にならないだろう。
僕は[フレンドガチャ]で大量に余っている日用品をデフォルメの分身に持てるだけ持たせると、それを操って【獏】が踏みそうな場所へとセットしていく。
地面に食器のフォークを突き刺しておいたり、ペン、水の入ったペットボトル、長い定規、カラーボール、籠、ロープなど、微妙に邪魔になりそうな物を地面に固定できるものは固定していく。
何度かその作業を繰り返している時、ついに【獏】が転がっていたボールを踏んで転んだ。
『ナイスじゃ主様!』
盛大に隙を作っていたのに残念ながら近くにいたのはシロだった。
案の定シロの攻撃は素通りされ、素早く起き上がった【獏】は咲夜を意識してか咲夜から遠ざかるように動くと、周囲の地面を見回して顔にしわを寄せていた。
[フレンドガチャ]で出したアイテムなら効果あるんだろうか?
それとも意識外からの攻撃なら効くのか?
「みんな、地面にばら撒いてる物を【獏】目掛けて投げつけて」
「『『了解』』」
3人は地面に落ちている様々な物を【獏】へと投げる。
すると【獏】はそれを避ける事なく迎撃しようと炎弾を放ち焼き尽くしていった。
あの様子なら【獏】は[フレンドガチャ]から出したアイテムなら誰が投げても攻撃が効くのだろうか?
少なくとも意識の外とかそういうのは関係なさそうな気がする。
もしかしたらそう思わせるために全て焼き尽くしているのかもしれないけど、それは一旦考えないでおこう。
そんなもしもを考え続けたら、あらゆる可能性がありすぎて何が効果あるのか絞れなくなるからね。
今一度情報を整理しよう。
【獏】はどのタイミングで攻撃を無視し、どの攻撃は確実に避けている?
まず僕が放った炎弾。
次にクロの投げた石。
クロとシロの2度目以降の攻撃。
これらはもはや攻撃を無視している。
逆に攻撃を避けているもの。
咲夜の攻撃全般。
クロとシロの最初の一撃。
[フレンドガチャ]のアイテム。
この違いは何だ?
見ている限りインターバルはなさそうで、咲夜以外の攻撃が常に無視されている。
遠距離での攻撃は[フレンドガチャ]のアイテムを除いて素通り。
素手での攻撃が有効ならクロとシロの攻撃は効くはずなのにそんなことは無い。
これらの事から【獏】に攻撃できる条件は何?
………
………………
………………………ん、【獏】?
え、まさかそう言う事?
そんな単純な条件なの?
考えれば考えるほどこの条件以外ないとすら思えてくる。
問題はその条件のせいで一気にこっちの手札が減ってしまう事だけど、元から無いものなんだから今まで通り動くだけだ。
とにかくその条件があってるかをまず確かめる。
「シロ、クロ戻ってきて!」
僕が2人にそう指示すると、すぐに僕の元に駆けつけてきてくれた。
『どうした主よ?』
「シロとクロは僕が渡す武器を使って攻撃して。
なんなら下にばら撒いてる日用品とかでもいいから、とにかく2人は素手で攻撃しないこと」
『何か分かったのか?』
「まだ予想でしかないけど多分ね。今からそれが合ってるか確かめるんだ」
『何の手がかりが無い時よりはマシじゃの』
僕の所に瞬時に来たクロとシロに[フレンドガチャ]からごくたまに出るメリケンサックを1つずつ渡す。
……こんなのいつの間に手に入れてたんだ?
『武器の類いは基本使わんのだがな』
『ナイフとかならともかく、これなら普段と変わらないから問題なかろう』
『それもそうだな』
2人はメリケンサックを装備して【獏】へと向かう。
メイドと執事がメリケンサックを装備している絵面が凄い。
『『いくぞ!』』
2人は相変わらず咲夜を優先して攻撃している【獏】を、左右から挟むように近づいていく。
そんな2人に対し【獏】はもはや脅威ではないと認識しているのか、そちらへの弾幕は薄かった。
そのお陰であっさりと2人は【獏】へと辿り着き攻撃を仕掛ける。
『『はっ!』』
『ぐふっ!!?』
2人に殴り飛ばされた【獏】が苦しそうに殴られた箇所を押さえているけど、かなりしっかり入った割にダメージは薄そうだ。
あのぬいぐるみみたいな見た目が衝撃を緩和している可能性もあるけど、それにしてはダメージをあまり受けていないようだし、やっぱりそういう事かな?
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カクヨム様にて先行で投稿しています。




