39話 最終試練
『鬱陶しい』
僕らが炎で攻撃したり捕まえようとしたからか、ついに【獏】がこちらに敵意のある目を向けてきた。
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最終試練は【獏】を倒す事
でもそれは無理。いい加減諦めろ
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睨んできたと同時に降ってきた看板には、最終試練の内容と一緒に諦めろというメッセージもついてきた。
『ようやく試練の内容が開示されよったな。とはいえ看板に書いてある通り、まともに攻撃が通らんのでは倒しようがないの』
「それでもやるしかないよ。どの道【四天王】を倒さない限り【魔王】に辿り着けないのだからね」
【魔王】を倒さないとあらゆるダンジョンで迷宮氾濫が起きてしまうのだからやらざるを得ない。
すでに期限は残り1カ月を切っており、【魔王】を倒すのにここの“暴食”の魔女の試練のように時間を稼がれたらタイムリミットが来てしまう以上、できるだけ早くこの試練を終わらせないと。
『帰らないなら死ね』
僕らが諦める気がないと分かったのか、ついに【獏】が僕らを敵として認識した。
【獏】が口をパカッと開いたと思った次の瞬間、その口から炎弾が飛んできて僕らに向かって来た。
「蒼汰君!」
「わっ!?」
僕は咲夜に突然抱えられるとその場から猛スピードで離脱させられた。
クロとシロも後から付いて来ており、全員が【獏】が吐き出した炎弾を避け切ったけど、炎弾は地面に着弾した途端、先ほど僕が放った〔籠の中に囚われし焔〕の炎と同じように地面を焼いていた。
『【獏】とはあのような炎攻撃もできる存在なのか?』
「そんな話は聞いたことない、よ。【獏】は夢を食べる存在」
『なら先ほど主様が放った炎を喰って吐き出してきたということかの?』
「それはなんかゴメン!」
どうやら僕がやらかしていたようで、【獏】に強力な遠距離攻撃手段を与えてしまっていたようだ。
「気にしなくていい。そもそもいくら【獏】だからってあんな事してくるなんて想像できない」
『それよりもアレをどう倒すかだ。こっちの攻撃がどうすれば通るのか見定めねば一方的にやられて焼け死ぬことになるぞ』
それが一番の問題だった。
【獏】はこちらに向けて何度も炎弾を放ってきているが、こっちはそれから逃げ回るだけで何もできていない。
「次は間髪入れずに攻撃を当てるのはどう、かな?」
『先ほど避ける行動をされたし、連続では攻撃を素通りできないかもしれんから試してみる価値はあるの』
咲夜の意見にシロが賛成し、後はこの炎弾をどう掻い潜って攻撃するかだ。
ていうか、明らかに僕が放った炎弾の数以上に吐き出してきてるんだけど!?
「食べたものを腹の中で増幅でもしてるのか、ってくらい吐き出してくるな!?」
『実際そうなんだろう。不用意な遠距離攻撃は避けるべきか』
『なら妾とクロ、それから咲夜で【獏】を直接攻撃するぞ』
「え、僕は?」
さらっと僕だけハブられたんだけど何で?
『主様は戦い慣れておらんじゃろ。しかも高速の近接戦で連携するなぞ無茶もいいとこだの。
妾達で攻撃するから主様はどの攻撃が【獏】に効くか見極めつつ、出来ればなんかこう上手い感じに援護しておくれ』
「なんか上手い感じってどんな感じ?! まぁやれるだけやってみるけど」
シロはそう言うと、クロと咲夜と共に炎弾を避けながら【獏】へと駆け出していく。
『ん』
そんな3人に対し、【獏】は次々に炎弾を吐き出し続けて近づかせないようにしているようだった。
もっとも戦闘に長けている上に素早く動くこの3人相手に炎弾を当てる事は出来ておらず、地面に当たった炎弾が一時的に壁になって多少の足止めはできているものの、徐々に徐々に距離は詰められていた。
『クロ』
『任せろ』
夫婦になって日は浅いが長年の付き合いで相手が何を考えているのか分かるのか、名前を呼ばれただけでクロは一気に加速し【獏】へと近づく――フリをした。
『!?』
クロの動きにつられ炎弾を放ってしまったが、クロは少しだけ近づいただけですぐに横に移動したため炎弾は誰にも当たらなかった。
そうしてクロに気を取られた瞬間にはシロが一気に【獏】へと接近しており、その動きを見た咲夜がその後に続いていた。
『ちっ』
近づかれた【獏】は炎弾を何故かシロ達に向けて撃たなかった。
あの距離だと炎弾を放てば自分も巻き込まれるから撃たなかったと考えると、【獏】は自身の攻撃ならダメージを受ける?
そう考察した時には【獏】とシロ達は交差し終わっていた。
再び攻撃が通らなかったという結果を残して。
ただしその結果は先ほどとは違う過程を経たけれど。
『妾の方に飛び込んできて咲夜に見えないように動いたの。そしてそのまま妾を通り抜けて逃げおったか』
「ごめん、殴り損ねた」
『構わぬ。それよりも先ほどと違いあやつ、妾の攻撃を躱して咲夜を通り抜ける手段を使わなんだ事が重要じゃ。
そっちの方がリスクは少ないし、インターバルがあるというのならなおさら攻撃が当たりそうな時に使った方がいいのに何故かそれをしなんだの?』
シロの考えを聞いて僕は何となく【獏】に効く攻撃が何なのか、おぼろげながら分かってきたかもしれない。
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