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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
13章

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38話 素通り

 

 僕がよく知る攻撃手段でもっとも強力なのは咲夜の〝神撃〟だけど、そんなものを使ったら【白虎】の時のようにHP兼MPが尽きてすぐにこの世界から追い出されてしまうので、ここはアレを使おう。


「〔籠の中に囚われし焔(ブレイズ バスケット)〕」

「冬乃ちゃんのだ」


 もちろん炎は充填済みのものだ。

 これなら【玄武】の時と同じように周囲の果物も焼けるはず。


「〈解放(パージ)〉」


 放たれた炎弾が【(バク)】に向かって真っ直ぐ飛んでいき、アッサリと着弾した。


「え、普通に当たった?」


 防ぐか何かするかと思っていただけに、思わず拍子抜けしてしまう。

 このまま遠距離から攻撃し続ければ倒せるのだろうか?


 そんな甘い考えは再び降ってきた看板によって消え去った。


 ―――――――――――


 無駄、帰れ


 ―――――――――――


 看板に書いてある通り、炎が着弾した場所には【(バク)】が明らかに無傷で座っており、地面から生えている果物をまた食べるため、立ち上がって果物が生え残っている場所に移動すると、また貪り食い始めた。


「うわっ、全然効いてない」

『間違いなく直撃しておったはずなのに、痛がりもせなんだな。生えておった果物は燃えておるのに、あやつだけは無事とはの』


 シロは炎が着弾した場所と【(バク)】を交互に見てどうしたものかと悩まし気な表情を浮かべた。


「炎が効かないの、かも。石でも投げてみる?」

『そんな単純な話だろうか? とはいえ、やるだけやってみるしかないだろうが。

 最終試練が何か分からない以上、アレを倒す以外何も思い浮かばんしな』


 咲夜とクロは地面に転がっていた石を拾いあげ、【(バク)】へと同時に投げつけた。


(バク)】から距離が離れているため咲夜の投げた石は当たらなかったけど、玄人用執事服で器用度が150%上昇しているクロの石は真っ直ぐ【(バク)】へと向かい――素通りした。


「明らかに直撃だったよね?」

『うむ、間違いないの。だがクロの石はまるで透明にでもなったかのように揺らいで、【(バク)】を通りぬけてしもうた』


 シロはよくあんな高速で投げられた石の状態をそこまでしっかり見えたね。

 僕にはなんか通りすぎたくらいにしか感じなかったのに。


 ――ザクッ


 ―――――――――――


 諦めて


 ―――――――――――


 炎も石もダメかと思っていたところに再度降ってきた看板は、会話する気0、拒絶感MAXであり、取り付く島もないとはまさにこの事だった。


「意気込んで来たはいいのに、こうも相手にされないとさっきの第二の試練もあって余計に虚しく感じてしまう」

『ホントどうすればいいんだ? いっそのこと近づいて捕まえたいところだが、周囲に生えてる果物のせいで下手に近づくことも出来やしないし』

「そうだよね~。はぁ、もうこうなったらやれる事全部やるつもりでいこう」

「何をするの蒼汰君?」

「とりあえず周囲の果物燃やして、クロの言った通り近づいて捕まえてみよう」

『うむ、主様の意見に妾も賛成じゃ』

『ほう、いいな。先ほどは石だから素通りしたかもしれんが、我らの肉体であれば素通り出来んかもしれんしな』


 僕は早速【(バク)】の周囲に向けて炎弾を数回射出した。

 〔籠の中に囚われし焔(ブレイズ バスケット)〕を何度も再召喚したためHP兼MPがそこそこ消耗したのを感じるけど、その甲斐あって【(バク)】の周囲の果物は軒並み燃やし尽くされたようだ。


「『『今(だ)(じゃ)!』』」


 3人は一斉に【(バク)】目掛けて走り出す。

 やはりというか、真っ先に辿り着いたのはチャイナ服で脚力を強化している咲夜だった。


『んっ』

「あ、避けられた」


 咲夜が伸ばした手を【(バク)】はそのファンシーな見た目からは想像できない俊敏さで避けてしまった。

 遠くにいたから大きさが分かり辛かったけど、咲夜と対比するとだいたいゲーセンのUFOキャッチャーにある大き目なぬいぐるみぐらいの大きさか。


『まだだ!』

『それで避け切れたと思うたか!』


 避けることを想定していたのか、間髪入れずにクロとシロが【(バク)】が避けた先に突っ込んで行く。


『ちっ』


 【(バク)】が眉をひそめてクロとシロの手から逃れようとするも、さすがに咲夜を躱した後で体勢が悪かったのかそのまま捕まえられ――なかった。


『『なに!?』』


 クロとシロの手が透明になって揺らいで通り抜けたのが、今度は僕にもハッキリと見えた。


『石だけでなく我らの身体まで素通りしてしまうのか……!』

『なんでも通り抜けられるというのなら厄介極まりないの。じゃが、それならどうしてわざわざ妾達の手を避けたのじゃ?』


 確かにシロの言う通りだ。

 物でも人でも素通りできるのであれば、咲夜が捕まえようとした時から避ける必要はなかったはず。

 それなのにわざわざ避けたということは、避けざるを得なかったということ。


 つまり素通りさせるには何らかの条件がいるということか?


 炎で攻撃した直後、咲夜が捕まえに行こうとした時に避けたから連続では使えないのだろうか?

 でもインターバルがあるというのならわざわざクロとシロの手を避けようとしたのはおかしい。

 咲夜を避けた後そのまま棒立ちでよかったはずなのだから、避けようと行動する意味が無い。

 いや、でもインターバルギリギリだったから念のため避けようと行動したんだろうか?


 う~ん、どういう条件で素通りしているのか、まだ掴めそうにないな。

 それさえ分かれば【(バク)】を攻略する手がかりになりそうだ。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
ふむ、、、 条件指定かな? 遠距離と近接と切り替えるとか
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