35話 さすがにキレた
「ふみゅ~~~~~~~~!!!!!!!」
『お、落ち着くのだ主様よ。気持ちは物凄く分かるが……』
ぬあーーーー!!!!!
なんだよそれ!
一番初っ端の看板に鍵を1分押し付けるだけで次の試練に行けたとか、今までの苦労は何だったの!!?
1カ月近くもこの第二の試練で何度も何度も何度も死んではやり直し続けていたっていうのに、まさかこんな単純な事で次の試練に行けたとか、もお~~~~~~!!!!!!
「うがあああああーーー!!」
『うむ……これはしばらく収まらんかもしれんの』
しばらくの間、僕は思う存分吠えた。
というか、吠えないとこの怒りは到底収まらなかったんだ。
「はぁはぁ、ごめん、取り乱した」
『よいよい。妾も主様がおらなんだら騒いでおったところじゃ』
さすがに吠え続けて疲れたせいでこれ以上騒ぐ気にはなれないけど、まだムシャクシャするなぁ。
『それでどうする主様よ? このまま次の試練――最後の試練に向かうのかの?』
「……う~ん、どうしよ。クロが脱落して万全な状態じゃない事を考えると、クロが復活してから挑む方がいいかな?」
『しかしそれだと【四天王】を他の者に倒されてしまうかもしれんぞ?
第二の試練のクリア方法が分かった今、この試練は誰にでも簡単に突破されてしまう。
せっかくこれだけ苦労したのに他の者に【典正装備】を取られてしまってもよいのか?』
「いや、それはこだわらなくてもいいんじゃないかな。正直【典正装備】はいくつも持ってるし、倒してくれるならそれはそれでいいでしょ。それに――」
『それに?』
「最終試練がそんなにも簡単にクリアできるものだと思う?」
僕は第二の試練でどれだけ苦労したかを暗に示すと、シロは眉間にしわを寄せて唸った。
『まあ確かにの。他の者の試練の様子を見てから対策を立てるのもありかもしれん。
だがクリア出来るかどうか分らぬのなら、クロ抜きで1回チャレンジしても問題ないのではないか? どうせこの世界でどれだけダメージを受けようと、一定のダメージを超えれば追い出されるだけだしの』
「ああ確かに。それもそうか」
ここが精神世界で死に戻り出来るというのに、つい現実世界で行動する時の考え方をしてしまった。
「う〜ん、じゃあ試しに挑戦するだけしてみようか?」
『そうこなくてはな! 今までの鬱憤晴らしてくれる!!』
最終試練とは書いてあったけど、戦闘になるかは分からないのにそんな気合いを入れなくても。
シロは最終試練という言葉に前回の“嫉妬”の試練から戦闘だと思っているようだけど、“色欲”の時の様に戦闘ではない可能性だってある。
どんなのが来るかは不明だけど、僕としてはできれば戦闘じゃないといいな。
【魔女が紡ぐ物語】が何か分かればある程度予想できたかもしれないけど、今回に限って言えばさっぱり分からないから、戦闘かどうかの予測すらつかないし。
100皿の試練に死に戻りの試練、この2つの関係性が全く見えてこない。
“色欲”の時並に【魔女が紡ぐ物語】が分からないけど、最後の試練でようやく何か分かるんだろうか?
『主様よ。なにやら考えておるようじゃが、最後の試練についてであるなら考えるだけ無駄であろう? 死にはしないのだし、思い切って行くべきではないか?』
「ああ、うん。待たせちゃってゴメン。ついつい何が来るのか考えてたよ」
『よいよい。悪い事ではないし、そうやって考える癖をつけている方が【魔女が紡ぐ物語】のような訳の分からん相手と対峙するのには必要なことであろう』
「今回に限って言えば正体すらサッパリ見当もつかないけどね。
よし、それじゃあ行こうか」
『うむ』
2人だけで挑むのだから少し緊張してしまう。
【白虎】の時と似たような状況だけど、相手が魔女である事を考えるとあの時のようにすんなりとはいかないだろう。
さて、どうなるか。
僕は生唾を吞み込んで、最終試練の扉をくぐった。
『3人エントリー。残り1人エントリーするまで待機するか帰還してください』
扉をくぐった先は真っ白な空間で〚EXIT〛と書かれた扉しかなかったけど、問題はそこじゃない。
突然空間内に響いた機械音声から不穏な事を言われたからだ。
人数指定があるのかよ!?
なんですんなりと試練をやらせてくれないかな~~~!!
第一と第二の試練では1人で試練させといて、しれっと最後の試練では人数揃えてきてねって、もう完全におちょくってるよね?
それにシロと、おそらくスキルのスマホの中に戻ってるクロもカウントされているから人数を揃えるのは楽なんだけど、第一、第二の試練が割とサクッと終わらせられることを考えると、むしろカウントされない方が戦力が増えたとかむしろ不幸だ。
幸いなのが精神世界に出てこれないアヤメはカウントされないことか……。
「僕とシロ、そしてクロの3人となると、あと1人だね」
『あと1人でいいのなら、主様の嫁である咲夜でよかろう。しかし精神的に復活しておらぬのなら別の者にせねばならんか……』
「それは一度戻ってから様子を見てみるしかないかな。ダメだったら他の人と組む事になるだろうけど、出来れば勝手の知ってる咲夜と組めないかな?」
僕らはそんな事を話しながら、一旦外に出るべく〚EXIT〛の扉をくぐった。
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