31話 50カ月分
コスプレ衣装の方は〖衣装ガチャのコイン100枚〗と〖[カジノ]のメダル5万枚〗があるけど、とりあえず一先ず置いておくとして、残り2つのアイテムだ。
いやアイテムと言っていいんだろうか?
この〖[放置農業]の領域拡大〗って。
「とりあえずこのアイテムに関してはアヤメ達を呼ぶかな」
大丈夫だとは思うけど、[放置農業]が変革する際に中の人物に影響があるかもしれないし。
「アヤメ達、ちょっと出てきてくれない?」
僕がスキルのスマホにそう問いかけると、ひょこっとアヤメ達が出てきた。
『ご主人さま、何の用なのです?』
『今日は試練に行くのか?』
『妾達も十分休ませてもらったからいつでもよいぞ』
「そうじゃないんだ。実は――」
簡潔にガチャで出たアイテムが[放置農業]が変化するもので、今よりもさらに広くなる事を伝えると、アヤメは浮かんだまま器用に飛び跳ねて喜びを露わにしていた。
『マジなのですか!? 領域拡大はどの程度広くなるかも分からない上に、10万課金しないといけないので月2000円しかない以上諦めていたのに、まさかあの[有償ガチャ]で手に入るだなんて思いもしなかったのですよ!』
高っ!?
あの権利ってそんな値段だったんだ。
アヤメにとって50カ月分はそりゃ諦めるよ。
「10万もするのはともかくとして、領域拡大したいほど[放置農業]の中って狭いの?」
『う~ん、まぁ強いて言うなら公園程度の広さなので狭いと言えば狭いのです。
壁があるわけではなく、ある一定の範囲から先に進めないだけなので圧迫感はないのですが、出来ればもっと自由にできる土地がある方がいいのですよ』
「じゃあこのアイテムを引き当てたのはアヤメ達にとっては神引きだったというわけか」
『そうなのですよ。問題はどの程度広くなるのかなのです』
「それは実際に使ってみないとなんとも言えないね」
アヤメ達の許可、というかむしろヤレと言わんばかりの圧力を受けた僕は[放置農業]に領域拡大を使った。
見た目は特に変化がないようだけど、どう変化したんだろうか?
あ、[放置農業]の畑に一度に植えられる〔成長の種〕シリーズが30個に増えてる。
……微妙だ。
僕にとって10万も払う価値はないアイテムだね。うん。
『ひゃああああっ! めっちゃ広くなっていたのです!』
『2倍程度になるかと思ったが、まさか10倍も広くなっているとは思いもよらなかった!』
『これだけ広ければ訓練で体を思いっきり動かせるの!』
アヤメ達にとっては大歓喜のようだけど。
想像以上に広くなったようだ。
『普段なら絶対に手を出せない[放置農業]の課金アイテムが手に入るのなら、ご主人さまが[有償ガチャ]を回すのも悪くないかもしれないのです』
お、マジで?
2000円だと1回分にも満たないけど、2000円[有償ガチャ]に使わせてくれるなら月に10連回せるんだけど。
何となくだけど単発で引くよりも10連で引いた方が良いアイテムが出てる気がしないでもないし、そうしてくれると僕的には大変嬉しいんだけどな。
『ああでも、2000円で買えるアイテムがまだまだあるのでその辺を買ってからにするべきなのです』
くそっ! そりゃそうだよね!
僕じゃなきゃ、誰だってまずは自分が欲しいものを確実に手に入れるに決まってるか……。
僕ならガチャ一択なんだけどなぁ。
はぁ、まあいいや。
ある程度課金したらガチャに使わせてくれるんだし、その時を楽しみにしていよう。
さて、だいたいのアイテムは確認したけど、残りのアイテムが問題だ。何これ?
〖朱縁金の盃〗
何だか〝戦乙女の羽〟に似た特殊なアイテム感のあるものだな。
これも〝戦乙女の羽〟と同様に使用用途が分からない上、今度は強化アイテムとすら書かれていない謎アイテム。
……まあいずれ使えるタイミングが来たら〝戦乙女の羽〟の時のように分かるか。
分からないものを悩んでいても仕方がないし、そんな事よりも大事な事がある。
〖[カジノ]のメダル5万枚〗
〖衣装ガチャのコイン100枚〗
〖プリペイドカード1万円〗
今から[衣装ガチャ]150連と1万2000円分のソシャゲガチャ回さないと!
ひゃ~!! 今日はガチャ祭りだーー!!
◆
昨日一昨日と十分休めた僕は完全に精神的に回復したので、再び試練へと挑むことにした。
母さんや彰人達が頑張って挑んでくれているだろうし、僕もそろそろ参戦しないと。
そう思いながら赤い石のある場所へと乃亜とオルガと共に向かう。
残念ながら咲夜はそれなりに回復してきたとはいえ、まだ調子は良くなさそうなので休ませている。
あの理不尽死にゲーがまだ第二の試練であり、次の最終試練があることを考えるとその時まで温存しておきたい。
最終試練が戦闘になるかは今までの魔女達の試練を思い起こす限り半々ぐらいなので、戦闘になる可能性が高い以上、咲夜にはそこで頑張ってもらいたい。
さて、その最終試練へと辿り着くためには死にゲーを攻略しないといけないのだけど、果たしてどこまで進んだだろうか?
「あ、彰人だ。それに母さんもそばにいるけど、赤い石の傍で何やってるんだろ?」
「そうですね。試練に挑戦するわけでもなく、あそこで何人もの人がただ立っているだけです」
「……中の様子を見てるのかな?」
〝窓〟で中の様子を見ているにしては密集している気がするし、ホント何やってるんだろ?




