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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
13章

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29話 悪辣な罠

 

 早速僕はスキルに2万8000円分の入金を……どうやってやるんだろ?


 そう言えばいつも[自動チャージ]とかいうクソスキルが勝手に金を持っていくせいで、今まで入金なんてしたことないんだよな。

 ん? ああ、お金をスキルのスマホに近づけていくら分課金する意思を示すだけでいいのか。


 ヘルプがあったのでそれを確認したらそう書いてあった。

 なんか前よりもヘルプの文章量が多くなっている気がするけど、今はそんな事よりもガチャだよね。


 うっかり3万円分入れてしまわないように、2万8000円分くらいの金額にしてお金を近づけようとする。

 もっとも、ただ課金するだけのはずなのにそれが凄く面倒だったけど。


 なにせ今アメリカにいるせいで日本のお金をそんな金額持ってないんだ。

 いくら分か言えばいいから少し多くても余計に課金される心配はないだろうけど、一応計算してある程度きっちり日本円と同じ額にするのは大変だったな。


 そんな事を思いながらお金を近づけて僕は金額を言った。

 ドルで払うけど大丈夫だよね?


 そんな心配は無用だったけど、この時の僕は為替レートなんてものを気にしていたのと、ようやくまともに課金ができる嬉しさから、スキルの()()()()に気付かなかったせいで、それを死ぬほど後悔することになってしまうのだった。


「2万8000円分課金」


 ――ピロン 『2万8000円チャージされました』

 ――ピロン 『[自動チャージ]の設定がされました』


「は?」

「どうしたんですか先輩?」


 乃亜が首を傾げながら僕にそう問いかけてくるけど、不穏な通知のせいでそれは右から左に流れてしまった。


 今、なんて言った?

 じ、[自動チャージ]の設定がされましたっ!?!?!?!?


 え、何、どういう事?

 僕課金しただけなのに、なんでそんな通知が聞こえてきたの?


 確認したくない。

 だけど確認しないわけにもいかず、僕は戦慄に震える指でスマホをタップし確認した。


 [自動チャージ]:スキル所有者が所持する金銭から、自動的にスキルに入金する(設定済み:2万8000円)


「ぐはっ!?」

「せ、先輩、突然どうしたんですか!?」


 突然床に倒れ込んだ僕に対し、乃亜や他のみんなが各々声をかけてきたけど、もはやそれが一切頭に入ってこないほどの衝撃を受けていた。


 い、いや、まだだ。

 設定されるということは、変更だって出来るはずなんだ。


 そんな一縷の望みをかけ、僕はヘルプを確認した。


 〝[自動チャージ]の設定は最初に入金した金額と同額で設定されます。また一度設定された金額は変更できません。注意して入金してください。変更できませんから〟


「大事な事ならこんな所で注意するんじゃないよーーー!!!」

「「「「「「きゃっ?!」」」」」」


 うぅ、あんまりだ。あんまりすぎるよ……。


「お、おい。突然叫んだと思ったら急に泣き出したんだが、一体どうしたんだろうか?」

「何かよっぽどな事があったんでしょう。間違いなく[無課金]が関係しているのでしょうが」

「それ以外ないわよね。蒼汰の事だし、課金できるチャンスだったのに課金できなくなったとか?」

「……一応課金は出来てる。ただ、スキルの罠に引っかかったせいで、今後のソシャゲの課金額が大幅に減っただけ」

「それはソウタにとって致命傷だね。生きる気力減ってない?」

「咲夜みたいにゴロゴロしてるだけじゃきっと回復しないダメージだよ、ね?」


 人生最大のミスだ。

 課金できるようになるためにこれまで頑張ってきて、ようやくそれが達成されると思ったらこんな非情な罠が仕掛けられているだなんて……。

 1円だけ先に課金するだけで[自動チャージ]の設定を最低金額にでき、今後は月に2万9999円をソシャゲに使うか、スキルに使うか選べたと言うのに……。


 このミスはあまりにも致命的で心が抉られる……。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~!!」


 どうしてヘルプの文章量が多くなっていたのは気づいていたのにそれを無視してしまったんだーー!!


「うぅ、死にたい……」

「かつてないほど落ち込んでいます……!」

「試練で精神的にダメージを受けてる分、余計にでしょうね」

「蒼汰君、よしよし」

「……頭を撫でる程度じゃピクリとも心が動いてない」

「これ、マズくない?」

「ここで鹿島先輩がリタイアとなると、攻略がさらに遅れてしまうぞ」


 もうダメだ……。

 僕は一生課金が月2000円しかできないクソ雑魚ソシャゲユーザーなんだ。


「仕方ないですね。手っ取り早く先輩を復活させましょう」

「高宮よ。そんな事できるのか?」

「先輩の事をよく知っていればそう難しくはないですよ」


 床に突っ伏したまま動く気力を失ってしまった僕は指先にすら力が入らない感覚に陥っていた。


 もうこのまま何もかも投げ出してしまいたい。

 そんな風に思い始めた時、耳元でよく知る声が聞こえてきた。


「先輩――」


 何か言っているようだ。


 ――ピクリ


 その声を聞いた時、何故かピクリとも動かなかった指が動き始めた。

 僕にはもうそんな気力、残っていないはずなのに……。


「先輩、――は――いいん――?」


 ――ピクピク


 指だけしか動かなかったのに、今度は体中が震えだす。

 一体どうして?


「先輩、課金したガチャは回さなくていいんですか?」

「そうだった!」


 せっかく課金したのに僕はまだガチャを回していないじゃないか!

 せめて倒れるならガチャだけでも回さないと!


「驚くほど簡単に起き上がったわね」

「ああ。さっきまでまるで瀕死の重傷のような様相だったのに、それが嘘のようだ」


 冬乃とオリヴィアさんが呆れた表情でこちらを見ているけど、それよりもガチャ回さないと!


今章で一番書いてて楽しい回だった( ´艸`)

作者が素直に課金させるといつから錯覚していた?


蒼汰『絶許!!』


あ、一応補足しておくと、母親にとって[自動チャージ]の設定は想定外です。

あくまでも母親は課金額を増やしてソシャゲにも課金できるようにしただけなのですが、[無課金]というスキルであるがためにその自己矛盾を解消するためにスキル自身が勝手にそんな設定を付け足しました。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これが正妻のちから!!
[良い点] サブスク分入れたらもう石原買えないねぇ(ニチャア) [一言] スキルなんかいいの出るといいね
[一言] 鬼!悪魔!作者!!!
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