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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
13章

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17話 とある種類のゲーム

 

 石造りの迷宮。

 それはどこかエバノラの〝雪の道〟や【ミノタウロス】の迷宮を思い起こさせた。


「違いがあるとすれば、その2つに比べて大きさがかなり小さいってところか」


 〝雪の道〟の迷路はパーティーで移動するからか横幅は広くて天井はないものだったし、【ミノタウロス】の迷宮は【ミノタウロス】に取り込まれてミノタウロスのパチモンになった生贄が彷徨えるかなり大き目なサイズだった。


 ところが、僕らが今いる迷宮はハッキリ言ってかなり狭い。


 両手を横に広げたら両端の迷宮の壁についてしまう程度の広さしかなく、天井もマンションの部屋と同じくらいの高さしかなかった。


「これ、魔物が来たらまともに戦えないよね?」


 槍持ってそのまま突っ込むだけで敵が避け切れずに倒せてしまいそうだけど、逆に槍なんて長物を振り回そうとすれば壁に当たって満足に振るえない状況だ。


『『拳で戦えばいいのでは?』』

「聞いた相手が間違ってた」


 2人は肉弾戦に慣れてるからこそ言えることだよ。

 そもそもこの2人、生前の頃から武器なんて使わずに素手喧嘩(ステゴロ)を好んでいたようなので、むしろこんな狭い場所こそ強さを発揮しそうだった。


 僕だって[鬼神]を使えば戦闘力は上がるけど素人に毛が生えたような動きしかできないし、そもそも〔明晰夢を歩く者(アリス)〕で入り込んでいるこの精神世界では、言うなればHPとMPが合一になっている状態なので、[鬼神]などのスキルや【典正装備】の召喚をすれば精神力が減ってしまい、それが枯渇すると強制的にこの世界から追い出されてしまうことを考えると下手に[鬼神]は使えない。


「もし魔物が出たら2人に頼るしかないかなぁ」

『任せるのだ主よ。我らの腕の見せ所よ』

『ふふっ、腕が鳴るのぉ』


 頼る2人に申し訳なく言うけど、2人はむしろ嬉しそうに拳を握っていた。

 どこの戦闘狂だ。

 いや、2人は狂ってるほどではないのだけど。


『しかしパッと見、魔物らしき存在はいなさそうなのが残念だな』

『そうだの。だが目の前に扉があるのが見えるし、あの部屋の中におるのかもしれんぞ?』


 シロの視線の先、T字路の正面には石造りの迷宮には微妙に不釣り合いな木の扉があった。


『よし、では早速行こうではないか!』

「あ、ちょっ、クロ!?」


 クロが止める間もなく意気揚々と扉へと近づき、ドアノブを握った。


 ――カチッ


『痛っ、なん――』

「『クロ!?』」


 ドサリとクロがその場で倒れ、次の瞬間には光の粒子となって僕へと集まって吸い込まれていった。


「クロがやられた!?」


 幸いにもクロ達も僕同様HPが無くなったら、僕のスキルのスマホの中へと戻る仕様になっている。

 もっとも、精神が摩耗しているので少なくとも1、2時間は意識が戻らないのだけど。


『おい、見るのだ主様よ!』


 シロがそう言って扉のドアノブを指さすと、そこには一本の針が飛び出していた。


『おそらく毒針だの。一突きされただけで死ぬとは中々に強力なやつじゃ』

「うわっ、なんてヤバイトラップが仕込んであるんだ……」


 今までダンジョンでそんな罠に遭遇したこともなければ、聞いたこともなかったので驚きと困惑を隠せない。

 だけどここはダンジョンではなく、“暴食(ビディ)”が創り上げた試練の迷宮なので、今までにないトラップが仕込まれていてもおかしくはないか。


「即死トラップ、しかもこんな何の変哲もない扉に仕込むとか悪辣すぎる」

『とはいえ有効な手ではあるの。もっとも所詮は初見殺し。知っていればどうということはないの』


 ……ん?

 シロの言葉で何かが頭に引っかかった。


 だけど僕がそれを深く考えるよりも先にシロが飛び出ている針を避けてドアノブを握っていた。


『では行くぞ主様よ』


 そう言ってシロが扉を開けると同時に矢が部屋から飛んできた。


『ふんっ、警戒していればこの程度どうという――』


 ――パカッ


 矢をパシッと掴んだシロの立っていた床が突然開き、そこにシロが落ちて行ってしまった。


『なんとーー!!?』


 遠ざかっていく声。

 底がまるで見えない穴は真っ暗でシロの姿は全く見えなかった。


 しばらくすると光の粒子が僕の方へと飛んできて、クロの時と同じ現象が起きる。

 どうやらシロもやられてしまったようだ。


「扉のドアノブに毒針、開けたら矢と同時に落とし穴とか悪辣すぎる……」


 もうなんなんだこのトラップ塗れの迷宮は。


 ――キィッ


 ここが現実であれば誰もこんな場所にこないだろうと思っていると、先ほどシロが中途半端に開けた扉が音を立てながら開いていく。

 シロの時のように矢は飛んでこず、部屋には看板だけがあった。


 ―――――――――――


 行き止まりだよ! m9(^Д^)プギャー


 ―――――――――――


 訂正。腹の立つ看板があった。

 そんな人をイラ立たせる看板と即死の組み合わせが、ふととある種類のゲームを思い起こさせる。


 なるほど。先ほど脳裏に過ぎった既視感はそういうことか。


「これ、もしかして死に覚えゲーの迷宮じゃないの?!」


 ハッキリ言って確証はない。

 だけど死がこの精神世界から追い出されるだけであり、何度でも挑戦できそうな試練であることを考えるとそれが間違いだと思えなかった。


「もし再挑戦で、迷宮が変化せずに全く同じ場所に同じ罠があったら確定かな」


 僕はため息をつきながら、うんざりな気分で次の挑戦について口にしていた。

 なぜなら――


「……一発クリア、無理だろうなぁ」


 T字路の左右の先にはどちらも目の前にあるのと同じ木の扉があったのだから。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 死に戻りゲーの元になった【物語】って何だろ? 拡大解釈して【注文の多い料理店】かな
[一言] 死に覚えゲーム、それもこちらの神経逆撫でするのだとやっぱりしょぼんのアクションが有名、、、、、。あれ基準だとパターン覚えてきてからの読み込みで仕込んでくるからそれを読む→その2択以外の選択肢…
[一言] 暴食ぅお前ミレディって名前じゃないよなあ!
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