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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
13章

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16話 大皿ガチャ

 

 クロとシロの2人で100皿食べた段階で突然何もない場所に扉が出現した。

 どうやら1人100皿というわけではないようで、僕は食べなくても済んだというわけだ。残念ながら。


 正直2人が絶賛した料理を食べてみたいと思っていただけに、残念という気持ちが湧いて来てしまうのは仕方ないよね。


 さてそれよりも次の試練、の前に――


『『あ、主(様)、もう少しだけ……!』』

「もう十分食べたでしょうが!」


 もう食べなくてもいいにも拘わらず、シレっと次の料理を食べ始めている2人の襟を引っ掴んで引きずるように机から引き離す。

 こっちが食べられないというのに、まだ食べようとするんじゃない!


「はいはい、次の試練に向かうよ」

『『い、嫌(だ)(じゃ)。もっと食べたい!』』

「子供か!?」


 この2人がまさかこんな状態になるだなんて思いもしなかった。

 食べないとクリアできないのに、食べたら延々と食べ続けたくなるというのは、とんでもないトラップだ。


『せめて大皿のだけでも食べてから行かぬか?』

『その通りだ。おそらく次の試練で使うであろう()()()()が見つかったのだから、他にも出て来るかもしれんのだぞ!』

「1個しか持てないのに、何個も同じ物を手に入れる意味ないよね?」


 そう。食べたことがない料理だから食べてみたいとか言って大皿に手を出した時にはどうしたものかと思ったけど、それを完食したら当然〝鍵〟がテーブルに出現したのだ。

 〝鍵〟とともにそっけない説明書きもあり、そこには〖ショートカットの鍵。持って行けるのは1つまで〗と記載されていた。


 次の試練に役立つであろうアイテムを大皿に隠しているのは、おそらく試練を突破するために、素早く100皿だけ食べるのに少ない量の料理を食べた者には手に入らないアイテムなのだと理解した。

 ただこの2人の様子を見る限り、大抵の者は食欲に負けて大皿に手を出すだろうから、このアイテムが手に入れられない人はよっぽどな人だけだろう。


 そんな何かしらのアイテムがもしかしたら大皿に乗った料理を食べる度に手に入るかと思ったのだけど、さすがにそこまで甘くはなかったのが残念なところ。

 大皿の料理を食べても何も出ない時もあれば、1個しか持てない〝鍵〟がまた出てきただけだったんだよね。


 大皿を2人合わせて60皿近く食べて出てきたのが6個の〝鍵〟なのだから、他にアイテムが出るのはまず無いと思っていいはず。

 ガチャの排出率並みに渋い確率でなければだけど。


『『食べたい、食べたい!』』


 だというのに、この2人は駄々っ子のように目の前の料理をまだ食べたいと訴え続けるのだから勘弁してほしい。

 まあガチャ60連だと思うと、まだまだ全然足りないというのは分からなくもないか……。


 ………………どうしよう。

 僕の中でもう次に行こうという気持ちと、出るまで食わせるかという気持ちがせめぎ合っている。


 この2人の見せる異様な食欲が異常事態であり、食べ続けるとヤバイことになる、というのが一番ありえそうだけど……。

 くっ、大皿ガチャという射幸心が僕にとって最大の罠か。


 ………


 ………………


 ……よし、決めた。


「これは本物(ガチャ)じゃないから、とっとと次に行こう」

『『そんな!?』』


 ガチャかガチャじゃないかと冷静に考えればすぐに答えの出る話だったね。

 最近まともにガチャを回せない上にどこぞの魔女に煽られまくったせいで、ガチャ欲が湧き出てしまったけど、やっぱり本物を回さないと意味が無いよ。


『嫌だ~~~!』

『せめてあと一口だけでも……』


 そうやって未練がましく机の上を見つめる2人の襟を引っ掴んで、引きずるように出現した扉の前まで連れて行くと、扉を蹴り破って無理やり次の試練の空間へと移動した。


 ◆


『『ううっ、ご飯……』』

「2人ともそんな食いしん坊キャラじゃないでしょうが」


 しかしこの2人をこんなんにしてしまうさっきの試練はある意味恐ろしいなぁ。

 よっぽど強い意思をもって試練を突破しようという気概のある人じゃないと、あの試練をクリアするのは難しそうだ。


「咲夜は大丈夫かな?」


 別々に試練を受けさせられているせいで咲夜の様子が分からないのが不安だ。

 しかし確認のしようがないし、出来ることは無事を祈るのと早々にこの試練を終わらせるくらいか。


「さて、これが次の試練か」


 僕は気持ちを切り替え、目の前にある定番の看板を見る。


 ―――――――――――


 ゴールまで辿り着いたら最終試練


 ―――――――――――


 看板に書かれているのは、これさえ突破すれば次でラストだと掲示されていた。


「なんだか随分とあっけない試練だなぁ」


 さっきの100皿食べるのも含めると、3つしか試練が無い。

 でもあっけないように思えるけど、よくよく考えるとエバノラの試練もそんな感じだったから、さっきの100皿が簡単な試練に思えただけで、この先はそう容易くいかないかもしれない。


「よし、それじゃあ気合を入れて行こう!」

『『ああ……』』

「落ち込みすぎでしょ」


 いい加減気持ちを切り替えてくれないかな?


『ふぅ~、すまなかった主よ。食べ終わった後のイライラ感のせいでどうしても次の皿を食べたくなってな』

『もう大丈夫じゃ主様。ある程度食べずに時間を置いたら落ち着いてきたの』


 100皿の試練、思ったよりも厄介な試練だったかもしれない。

 僕はたまたま食べずに済んだからすんなり次の試練に行けただけだしね。


 しかし、食事の後はゴールを探す()()()()()だなんて、これは一体何の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】なんだろうか?


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 食べる→迷宮 ヘンゼルとグレーテルかな? とすると食べ物の持ち出し可能とか?(ショートカットキーがそれか?) 最後は魔女との対戦なのかな
[一言] お父さんとお母さん豚にならなかったね
[気になる点] 怠惰を睡魔含めて考えると色欲は性欲で、今回の食欲絡んでいてこれまでの3大欲求含むやつは(他のものもろくなものでは無いけれども)やばいの多いからこのまま終わるはずがないよね。 [一言] …
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