2話 定番になってるからあえて止めようと思ったけど、期待している人もいるからやっぱやる
「アヤメは【典正装備】を持ってる人がマレって言うけど、5つも持ってるのに何言ってるの?」
『それらはご主人さまに付いて行った結果でほぼ棚ぼたなのですよ? それにあの時挑んだ全員が“嫉妬”の魔女の【四天王】と【モルガン・ル・フェ】で2つ一気に手に入れたから、あまり数は自慢できないのですよ。ご主人さま以外』
「なんでさらっと僕を省いたの?」
『今回でついに2桁に到達した人間が省かれねえと思ったのです?』
「〔王からの支給品〕の3つを除いたら7つなのに……」
確かにこれで10個手に入れてしまったけど【四天王】相手だと実質2体かそれ以上の【魔女が紡ぐ物語】を相手にするようなものだから、一気に複数【典正装備】手に入るのは仕方なくない?
それに【四天王】だけ【典正装備】の名前、というかルビが他と違うんだけど、ホントに【典正装備】という枠組みでいいのかと思わなくもない。
なんかネタ感があるというか、ちょっと違う物のように感じる。
実際他の【典正装備】を疑似的な〔典外回状〕で使えるはずの〔太郎坊兼光・破解〕で使用できないので、〔王からの支給品〕を【典正装備】としてみていいのかは疑問に思うところ。
もっとも、〔太郎坊兼光・破解〕で使用できないこと以外は普通の【典正装備】のようにその効果を発揮するので、気にするだけ無駄だと言われたら何も言えない。
アメリカに行く前に魔女達に会いに行った時、【四天王】だった“嫉妬”の魔女サラにその事を問いただしても首を傾げていたから、誰にも聞きようがないのもある。
元【四天王】だったのに分からないものなのかと思ったけど、【四天王】は“憤怒”の魔女に付けられたもので関与してないから分からないと言われればどうしようもないよね。
「一応あれも【典正装備】なんですからいいじゃないですか。それにもしまた今から行く地にいる【四天王】を倒したら先輩は4つコンプですよ」
「コンプガチャは地獄だぞ」
「なんでガチャに発想が飛ぶんですか」
コンプって聞いたらつい……。
あのガチャは違法になってしまって寂しいのとホッとした気持ちを同時に味わわせてくれた思い出深いものだから仕方ないね。
「蒼汰君達が【典正装備】を2つ手に入れられたのは分かるけど、シロさんも頑張ったらしいのに【典正装備】が手に入れられなかったのは残念だ、ね」
「確かにそうね。ただ【白虎】の時も蒼汰と一緒に精神世界で戦ったのに貰えてなかったんだし、何かしらの条件があるのかもね」
そう。アヤメが手に入れられるのは今更だし特に気にしていなかったからともかく、アヤメが手に入れられるならシロももらえると思っていただけに少し残念だった。
もっとも本人は別に不要だと言って気にしていないので、本人がそう言うなら僕らがあれこれ言うのもお門違いか。
ただ全く恩恵がなかったかと言われればそうでもない。
アヤメが手に入れた【典正装備】、〔宿主なき石の形代〕がシロ達とシナジーを発揮するのだ。
それは石の彫像であり効果は単純で、その【典正装備】の石の彫像に意識を移して操る事が出来るというもの。
それはアヤメ自身でもいいし、アヤメが許可した人物でもそれが可能なのだ。
つまりシロ達は僕が〔明晰夢を歩く者〕で精神世界で戦う時にだけ、生前の時のように己の肉体で戦えていたのが、現実でもある程度石の彫像を使って戦う事が出来るようになった。
これにはシロ達も大喜びで〔宿主なき石の形代〕を交代で使って動き回っていたのだけど、傍から見たらのっぺらぼうで等身大の石の人形が動き回るのはホラーだったから普段使いは止めさせている。
「〔宿主なき石の形代〕がもっと人の見た目に近ければ普段使いでもよかったんだけどね。インターバルもないだけにそこが残念」
『普段は主様の創った世界の中におるから別に支障はないのう』
『こちらの世界での生活に満足しているし、あれを使うのは戦う時だけで十分だ』
シロ達はそう言ってこっちに関してもまるで気にしていなかったから特に何の問題もないけど。
結局戦闘でしか使う事のない〔宿主なき石の形代〕以外にも3人共通でもらった【典正装備】、【四天王】を倒してもらえたのが〔王からの支給品〕だった。
効果はこちらも単純でコインを投げた方向に【魔女が紡ぐ物語】の気を一瞬引くことが出来るというもの。
まあ隙を作るという点では便利かもしれない。インターバルも1時間あるし相応に強力な物だと思われる。
ただ〔王からの支給品〕シリーズは【魔女が紡ぐ物語】相手にしか使えないから、〔王からの支給品〕の時同様にぶっつけ本番になってしまうのが怖いところ。
もっとも〔王からの支給品〕と違って、コインを投げるだけなので危険性は少ないからマシかな。
……“嫉妬”の魔女の時は使えるものは何でも使う精神だったとはいえ、一度も使った事がないものを僕はよく使う気になったもんだと思うよ。
それはともかくとして次はオリヴィアさんが手に入れた【典正装備】だ。
〔終わりを知らぬ伝説〕
エクスカリバーの魔法の鞘であり、効果は自身のあらゆる病気や怪我を癒すことができるという全回復装備である。
インターバルは3時間と長く自分自身にしか使えない上に、伝え聞く魔法の鞘のように持ち主を不死にするほど強力でもないけど、十分強い装備だと思う。
………はぁ。
なんで2人は石の彫像だったり魔法の鞘といったカッコいいものなのに、何故僕だけ……。
そう思わずにはいられないのは僕が手に入れたのが真っ黒な布だからだろう。
習字道具の下敷きじゃねえか!
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カクヨム様にて先行で投稿しています。




