エピローグ2
≪蒼汰SIDE≫
“嫉妬”の魔女サラを倒して【四天王】が残り1人になったというのに、イギリスの迷宮氾濫が終わっていなかったため、ダンジョンから出た後も僕らは戦い続けることになった。
幸いにも京都の〔スケルトンのダンジョン〕と違って数はそれほど多くなく、迷宮氾濫も僕らがみんなと合流してからだいたい1日で終わったから良かったよ。
「ようやく日本に帰れたね」
「向こうの人達に引き留められそうになりましたが、強引に振り切ってきたんですけどね」
我が国を救ってくれてありがとうとか、【四天王】を倒してくれてありがとうとか言われたけど、もう正直言ってヘトヘトでいち早く帰りたかったんだよ。
感謝の気持ちはありがたく、というか気持ちだけでなく色々な物をプレゼントされたからそれで充分だし。
「オリヴィアは良かったの? 友達っぽい女の子に絡まれてたし、あのすごいおばあさんとも話したいこととかあったんじゃない? それに国から新たな英雄だと引き留められていたじゃないか」
「構わんさソフィア。私が国にいたところで出来ることなどないし、それよりも鹿島先輩の傍にいた方が私自身タメになる」
「「「「「ん?」」」」」
「な、なんだ……?」
オリヴィアさんの発言に乃亜達は何か引っかかったのか一斉に首を傾げていた。
「どう思います?」
「何だか怪しいわね」
「蒼汰君への心理的な距離が近くなってる気がする、かも?」
「気がするというかオルガに聞けば一発で分かるんじゃない?」
「……ダンジョンに入る前よりも蒼汰への信頼感が増してる感じがする」
「「「「やっぱりか」」」」
「おい、その目はなんだ!」
乃亜達にじっとりとした目で見られたオリヴィアさんはたじろいでいた。
まあ信頼してくれるならいいんじゃない?
「なんか見覚えのある感じがしますね」
「冬乃ちゃんもこんな感じだった気がする、よ?」
「え、私こんな感じだった?!」
「ええ。なんというか冬乃先輩はちょとずつ信頼感が増して、最後に一気に落とされた感じですかね?」
「ちょっ!? そんな風に分析されるとすごく恥ずかしいわ……」
みんなが帰りの道中和気藹々と話している中、さすがに会話の内容が内容だったので下手に口を出せなかった僕は、スキルのスマホを取り出して[放置農業]で中の様子を見ることにした。
元の黒い玉に戻ったクロ達の様子が気になったからだ。
『ん? 主よ。何か用事か?』
「いや、クロ達の様子が気になっただけなんだけど、元に戻ってから何か問題はないかなって」
スマホに表示されているのはクロであり、操られて色々大変だっただろうから覗いてみたけどシロとアヤメの姿は見えないな。
『問題か……。ちょっとばかりシロやアヤメの視線が冷たいだけで、何も問題はないぞ』
クロ一家に滅茶苦茶影響が出ていた。
「それ問題でしかなくない? え、本当に大丈夫なの?」
『安心するといい。あやつらも頭ではちゃんと分かっているが心情的には少し納得がいかないだけだからな』
「サラに無理やり従わされてただけなのに理不尽な……」
『……主殿だけでも分かってくれるだけ嬉しいぞ』
なんかちょっと泣きそうな声で敬称付けられたけど、本当に大丈夫なのか心配になる。
再度クロに尋ねるけど、少なくとも無視されたりはしないようなのでちょっとずつ関係を改善していくと言っていたから、今のところ僕ができることはなさそうだ。
頑張れクロ!
「そう言えば先輩。矢沢さん達はあの後すぐにアメリカに行ってしまわれましたけど、わたし達は日本に帰ってきて良かったんですか?」
冬乃達と喋っていた乃亜が、ふと思い出したように尋ねてきた。
実はイギリスの騒動が落ち着いた後、すぐに日本の役人の人からアメリカから要請があり、最後の【四天王】がとあるSランクダンジョンにいることが判明したからそちらに行ってほしいとお願いされていた。
だけど僕は【四天王】と相対したばかりであり、疲弊しているのに加えどうしてもやらなければいけない事があるから日本に帰らせてほしいと言って帰ってきたんだ。
「明日は絶対に行かなきゃいけないところがあるからね」
あまり行きたくはないけれど、行かなければ後悔することになるのは間違いないから仕方がないんだよ。
せめて帰ってきたばかりの今日はゆっくり休んでから覚悟を決めて行くとしよう。
◆
『クシシシ、よく来たわね』
『キシシシ、ちゃんと約束を守ってくれたようで嬉しいわ』
行かなければいけない場所。
それは魔女達のいるレジャー迷宮だった。
“嫉妬”の魔女サラがダンジョン前に張った結界について尋ねた際、マリとイザベルに顔を見せるように言われていた。
さすがにそれを無視すると次に会った時に何をされるか分かったものじゃないし、この2人にへそを曲げられると後が本当に怖いから、一旦日本に帰って会いに行く事にしたんだ。
『生憎だけどあなた達の相手ができるのは私達だけよ。エバ姉様は相変わらず忙しいし、怠け者はいつも通り寝てるわ』
『あと今回解放されたサラだけど……』
イザベルが視線を向けた先にが見覚えのある後ろ姿の少女、サラが床に座って何かしていた。
マリもイザベルも何も教えてくれないので何をしているんだろうと覗いてみると――
『フヒッ、キタキタキターー!! 最高レア度のキャラが出ると滾るわ~!』
ガチャかよ。それもすごいハマってるし。
「いや、なにしてるのホント……」
『フヒッ? あ、また会ったわね。ほら見てよ見て! 今回のピックアップキャラ完凸させたわよ!』
「ガ、ガチャ~~~!!」
『フヒヒッ! ああ、嫉妬されてる~~~!』
僕がガチャへの欲求を一時的に植え付けた影響か、恋愛方面ではない新たなもので人に嫉妬させることに喜びを見出したらしい。許さん。
「ひ、人がガチャを回せないというのにこの所業……」
「鹿島先輩の自業自得だと思うが」
しょうがないじゃん! あの時はああするしかなかったんだからさ!
まさか〔似ても似つかぬ影法師〕の影響が残るだなんて誰が予想できるんだよ。
『フヒッ、ガチャも悪くないわね。今まで嫉妬と言えば恋愛だなんて思っていたけど、こういう嫉妬をされるのも気分がいいわ』
「僕は最悪の気分だよ」
自分でもっとも最悪な敵を生んでしまったようだ。
これからもここに来るたびに妬ましく思わなければいけないのかちくしょう!
はい。というわけで12章いかがでしたでしょうか?
ぶっちゃけサラとの結末はもっとちゃんとした戦闘シーンをイメージしていたんですけど……なんでああなったの?
蒼汰)「いや知りませんけど」
作者)『だいたいお前のせいだよね』
蒼汰)「なんで!? 僕はただ自分の持ってる武器を最大限に使っただけなんだけど!」
作者)『その結果があれって……。まじかよ』
蒼汰)「そんなドン引かないでもらえません? そもそも〔似ても似つかぬ影法師〕の疑似〔典外回状〕の能力考えたの作者じゃないですか」
作者)『そうなんだけどね。でもあの終わりはないと思うの』
蒼汰)「自分のせいって自覚あります?」
作者)『ない』
蒼汰)「言い切った!?」
作者)『だって〔典外回状〕って能力の拡張でしかないから、仮に〔似ても似つかぬ影法師〕がちゃんと〔典外回状〕したらスキルなども使用できる完全なもう1人のお前を召喚できることは想像できるじゃん?』
蒼汰)「まあそうですね。……それ強くない?」
作者)『お前がもう1人増えてもお前自身は戦闘力ないけどな(笑)』
蒼汰)「笑うなよ! それで召喚できるからなんなんですか?」
作者)『でも〔太郎坊兼光・天魔波旬〕は敵にその影響を及ぼすから、むしろああならないと違和感でしかないじゃん』
蒼汰)「確かにそうかもしれませんが納得いかない……」
作者)『〔緊縛こそ我が人生〕の方が良かった?』
蒼汰)「それだけは止めろ!!」
作者)『サラとの結末は最初こっちの【典正装備】を使用するつもりだったけど?』
蒼汰)「〔似ても似つかぬ影法師〕で本当に良かった……」
作者)『まあ結果的にガチャ仲間ができたから良かったじゃん』
蒼汰)「顔を合わせるたびにガチャの結果を報告される僕の身になれよ」
作者)『嫉妬するだけでしょ?』
蒼汰)「憤死するぞ!」
作者)『ないない。どうせまともに課金できるようにするために奮起するだけだし』
蒼汰)「否定できない……」
作者)『まあ【魔王】とか【四天王】とか出てきたせいで純粋にレベル上げしてる暇ないんだけど』
蒼汰)「あ、そう言えば【四天王】倒したからレベルそれなりに上がったんじゃ?」
作者)『……そうね』
蒼汰)「なんですかその意味深な感じは?」
作者)『はぁ……』
蒼汰)「ため息つかれた!?」
作者)『だってこの作品、お前が課金できるようになるために頑張る話だよ』
蒼汰)「あ、まさか! え、ホントに!? まさかついに課金が……」
作者)『ああ。――まだちゃんと課金できないけどな』
蒼汰)「出来ねえのかよオオオオオ!!!」
作者)『作者の自らのキャラクターに対する意地の悪さを舐めるなよ!』
蒼汰)「そこ自信持って言わないでほしいな!」
作者)『完全無欠の主人公より、四苦八苦する主人公を書く方が楽しいまである』
蒼汰)「くそっ、なんて生みの親だ……」
そんな意地の悪い作者ですが、さすがにこれ以上引っ張れないですね。
【魔女が紡ぐ物語】倒せば当然レベルだって相応に上がるのだから、何かしら変化がないとおかしいですし。
ただ派生スキルを増やすのにも限界があるんですよ……。
とはいえそう簡単に課金させませんが。
それよりも次章でついに最後の【四天王】です!
次章で終わるかな? なんかエピローグ1でかなりヤバい感じに言ってるけど、本当に次章で【四天王】に片が付くか大変不安です。
まだプロット作ってないしどうなるか分かりませんが、とりあえず1週間後に更新再開予定です。
それでは恒例の――
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カクヨム様にて先行で投稿しています。




