41話 〝水〟
≪蒼汰SIDE≫
僕らは【青龍】相手に有利に戦えていた。
僕らの攻撃に対し【青龍】は緩慢な動きで防御しようとするため攻撃が防がれることはないし、逆に【青龍】が攻撃しようと爪を振り回したりや尻尾による横払いをしようとしても、この特殊な空間による重力のせいで動きが鈍いので攻撃の予兆が分かりやすく避けることが容易かった。
まあ乃亜達はもともと身体能力が高い上にこの特殊な空間と[強性増幅ver.2]で強化されているからもあるか。
僕だったらギリギリかすっていそうだな。
み、見栄なんて張ってないし……。僕なら直撃だったとか思ってないし……。
『ギャオオオオオオーーー!!』
「な、なんですかアレ?!」
もっとも有利だったのはほんの少しの間だけだった。
「〝水〟の膜かな?」
「防御のつもりなのかしら。私が吹き飛ばして上げるわ。〈解放〉」
冬乃の〔籠の中に囚われし焔〕から射出された炎の塊が【青龍】の周囲を覆う〝水〟の膜へと飛んでいき、少しだけ膜に穴を空けて消失した。
「嘘でしょ!? 全力ではなかったとはいえ、ちょっと蒸発させただけなの?!」
あんな炎の塊が水にぶつかったらもっと水蒸気が出て広範囲で大穴を開けてもおかしくなのに、あの〝水〟は一体どうなってるんだ?
「これ、本当に水なんですか?!」
「咲夜の拳でも貫通できない」
[画面の向こう側]のスクリーンは[チーム編成]に登録している人物の近くに出現させられるので、離れた所にいる冬乃と乃亜達の近くに複数のスクリーンを創り出せる。
そのため冬乃の様子も乃亜達の様子もハッキリと分かるのだけど、乃亜達の方も冬乃同様悪戦苦闘しているのが分かってしまった。
乃亜が映っている方のスクリーンでは〝水〟の膜を破ろうと大楯を振るっている様子がうかがえたが、まるでスライムでも殴っているかのように異常なまでの弾力に弾き返されていた。
「ならワタシに任せて。派生スキル[エクスターナルデバイス]展開」
すでに[フルボディオーダー]展開済みのソフィが[エクスターナルデバイス]によるレーザーブレードを出現させた。
「はあっ!!」
振るわれたレーザーブレードはアッサリと〝水〟の膜を切り裂いて人一人余裕で通れる空間を作ってしまった。
「危ないソフィ先輩!」
「きゃあっ!?」
だけど〝水〟の膜をソフィが切って大穴を開けた直後、その穴から鉄砲水のような勢いで〝水〟の弾丸が飛んできて、乃亜の警告虚しくソフィが吹き飛ばされてしまった。
「大丈夫、ソフィちゃん?」
「大丈夫だよ咲夜先輩。頭に当たったけど服が破れただけで済んだから」
それを聞いてゾッとした。
乃亜の[損傷衣転]が無かったら、まず間違いなく死んでいたということなのだから。
ソフィに着せていたチャイナ服が肩代わりしたからか、もはや局部はギリギリ隠せているチャイナ服という、見た目的にも、ダメージを肩代わり出来ないという意味でもヤバい状態になっていた。
「服をすぐに直すよ」
「ありがとうソウタ」
スキルのスマホをタップして、すぐに元のチャイナ服に戻す。
「あっ、穴が閉じてしまいましたね」
だけどそんな事をしている間に、〝水〟の膜も元に戻ってしまい通り抜けるチャンスを逃してしまった。
「危ないっ!」
チャンスだったのにと思って〝水〟の膜を見ていたら、乃亜が突然叫びだした。
全員が慌ててその場を飛び退くと、みんなが立っていた場所に〝水〟の刃が飛んできてアスファルトの地面をえぐっていた。
あの〝水〟の膜の近くでぼんやりしていたら、〝水〟の刃で体を真っ二つにされてしまうようだ。
「〝水〟の膜の内側に侵入しない限りは【青龍】に攻撃することはできないみたいだね。ワタシがまたレーザーブレードで〝水〟の膜を斬ってもいいけど、〝水〟の弾丸を何とかしないと入れないかな」
ソフィが次々に飛んでくる〝水〟の刃を避けたり斬ったりしながらそう言っており、〝水〟の刃だけなら余裕そうだった。
他のみんなも同様のようで、高速で飛んでくる〝水〟の刃をひょいひょい避けたり受け止めたりしていた。
僕だとあれは避けれそうにないなと思ってしまう時点で、実力を一気に離されたような気分になり少し悲しくなった――って、そんな事考えている場合じゃなかった。
「それならソフィが〝水〟の膜を斬って、乃亜が大楯でみんなを〝水〟の弾丸から守りながら侵入しよう。
冬乃は少しでも【青龍】の気を引くために〔籠の中に囚われし焔〕を連射で。さっき少しだけ穴が空いていたから同じ個所に連続で当てれば〝水〟の膜の防御を素通りできるはず」
「わかったわ。〔業火を育む薪炭〕と〔溶けた雫は素肌を伝う〕はどうする?」
「〔業火を育む薪炭〕はインターバルが30分あるから、〔溶けた雫は素肌を伝う〕だけで」
「了解よ。アヤメちゃんはその時に〔迫る刻限、逸る血潮〕をお願い。蒼汰が〔籠の中に囚われし焔〕を再使用できる状態にするまでの間に[狐火]も撃って少しでも多く攻撃をするわ」
『分かったのですよ!』
アヤメの了承の返事と共にすぐに僕らは動いた。
「[複尾][空狐]〈解放〉」
『〈解放〉2倍速』
「はああっ!!」
冬乃が4本の尻尾を生やし髪や尻尾が薄く銀色に発光する[空狐]まで発動させ、[狐火]を最大威力で放てるようにしながら、〔籠の中に囚われし焔〕で炎を射出していた。
それと同時にアヤメも〔迫る刻限、逸る血潮〕使用し、ソフィは〝水〟の膜を先ほどよりも大きく切り裂いた。
「行きます!」
僕は乃亜達が〝水〟の膜の内側へと入る事ができたかの結果を見る暇もなく、急いで〔籠の中に囚われし焔〕を再召喚して次弾の準備を整えていく。
乃亜達は上手く侵入出来ただろうか?
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