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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
10章

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44話 第三形態

 

『ガ、ガチャ……!』

「嘘でしょ?」


 咲夜の〝神撃〟をもろに食らったはずなのに、悔しそうな表情をしながら普通に起き上がってきた【Sくん】にはまるでダメージがなかったかのようだった。


「【典正装備】で攻撃を防いでくるのに、本体も頑丈とかどうやって倒せばいいんだ……?」


 正直咲夜の〝神撃〟以上の攻撃なんてないよ。


『待って蒼汰。あれを見て』


 冬乃がそう言って【Sくん】を指すけど、見る限り先ほどまでの【Sくん】となんら大差がないように見えるよ?

 赤ちゃんの指じゃ何を指しているか全然分からないんだけど、一体何に注目すればいいんだ?


『見て欲しいのは【Sくん】の胸の所にあるワッペンよ』

「ワッペン?」


 そう言われて注目すると、さっきまでウサギと猫のワッペンがあったはずなのに今は猫のワッペンだけになっていた。


『もしかして命のストックなんじゃないかしら?』

「なるほど、残機持ちだったか」


 確かにそう考えれば今もピンピンしている【Sくん】の様子と辻褄が合う。

 仮に命のストックの類でなかったとしても、ワッペンが無くなったのと【Sくん】が無事なのには何かしらの関係があってもおかしくない。

 なら、あとは猫のワッペンを引きはがせば【Sくん】を倒せる状態に持っていけるはずだ。


「でもあれってゲームのボスみたいにHPのバーが複数あるやつみたいだよ、ね」


 〝神撃〟を使ったために体力を使い切ってフラフラだった咲夜が、[瞬間回帰]で復活した後で嫌な事を言い出した。


 もしも咲夜が言ったとおりであるならば、()()があるはずだ。


「……アレ?」


 オルガが僕の心の声を読んだようで、首を傾げながら聞いてきた。


 ゲーム好きでなくともある程度ゲームに触れたことがある人間にはお馴染みの、ボス戦における定番中の定番。


「第二形態への移行だ」

『ガチャーーーー!!』


 僕がそう言うと同時にビカーッと体全体が光り輝き出す【Sくん】。


「よし、今の内に攻撃しよう!」

「え、いいのか、な?」


 咲夜がこちらを見て本当に? という表情をしているけど、あんなにも隙だらけなんだから狙わない方が無作法というもの。


「こういう場面で手を抜く方が失礼だと思うんだ。万が一変身中の攻撃が無効でも僕の【典正装備】で体力回復させられるから撃っちゃって」

「ん、分かった。〝神撃〟」

『ガチャーーーー!!?』


 あの声は果たして変身中であるがための雄たけびなのか、それともただの悲鳴なのか。

 明らかに悲鳴か。なんか泣きそうな感じの声に聞こえるし。


 問題なく〝神撃〟が当たったのはいいけれど、それによって発生した煙幕が【Sくん】を覆い、こちらからはシルエットしか見えなくなっていた。


「咲夜、もう一度いこうか」

「分かった」

「鬼ですか」

「鬼だ、よ?」

「いえ、[鬼神]のことではなく……」


 咲夜を〔穢れなき純白は(エナジードレイン )やがて漆黒に染まる(レスティテューション)〕と〔太郎坊兼光(ショート リヴド)破解(レイン)〕の組み合わせで体力回復させた後、シルエットが見える以上まだ生きている【Sくん】に対し、じゃあもう一回くらい撃っておくかと言ったら乃亜にツッコまれてしまった。

 敵に情けをかける理由はないよね?


「〝神撃〟」


 再び咲夜から強力な攻撃が【Sくん】へと放たれたけど、先ほどのように【Sくん】の悲鳴みたいな叫び声は聞こえてこなかった。

 今度こそやったか?


『ガチャガチャガチャーーーーーー!!!!!』


 まるで、ふざけんなー! とでも言っているかのような怒鳴り声に近い叫びを上げながら煙幕の中から出てきたのは、さらに一回り大きくなった上に、胴体にカプセルトイについているようなツマミと穴が追加されていた【Sくん】だった。


「猫のワッペンまで無くなってるってことは、あれもしかして第三形態?」

『1つ過程がすっ飛んだのです』


 アヤメが【Sくん】の変化した姿を見て、どこか呆れている表情を浮かべていた。


「まあ楽できることは良い事だよ」


 ぶっちゃけ隙だらけな方が悪いし。


 隙を晒し過ぎたせいで第二形態が謎になった【Sくん】に気を取られていたけど、よくよく見たら出口に陣取っていたカプセルトイが台座だけ残して他の部分が無くなっているので、【Sくん】とカプセルトイが融合した姿があれなんだろう。


『ガチャー!!』


 グルンと胸のツマミが【Sくん】の叫び声の後に1回転する。

 すると腹部の穴からカプセルが出てきて中からは先ほどのように【典正装備】が現れた。


「なるほど。この形態なら武器をわざわざ拾いに行かなくてもすぐに自分の手元に出せるってことか」


 しかしそんな単純な形態変化だろうか?

 第二形態が分からないけど、今までの変化も残っているとなるともう1つ変化があってもおかしくないような……、分からない以上考えるだけ無駄か。


「とりあえず咲夜の〝神撃〟が相手に効くのは分かってるし、また〝神撃〟を当てる方向で動こう」

「「「『了解(なのです)』」」」


 乃亜とオルガがサポートし、アヤメが【Sくん】の気を引いて隙が出来たところに咲夜が〝神撃〟を撃つという先ほどの流れだ。


 問題はさっきまでは咲夜自身が体力回復する術を持っていたから近接戦までこなせていたけれど、今は回復手段が僕の【典正装備】に頼る以上、僕から離れたところで〝神撃〟なんて撃てば動けなくなってしまう。

 だから乃亜達が【Sくん】の隙を作るしかないけれど、強化された【Sくん】相手に通用するかどうかだ。


安心してください。読み飛ばしてませんし、第二と第三で誤字ってるわけじゃありませんよ。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
[一言] すっ飛ばしたああああああああああああwwww そうか、今回の件で1番の怒りの感情をもってるのは蒼汰君でしたかぁw
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