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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
10章

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37話 やはり〈ガチャ〉は回すもの。だってガチャだもん

 

 〖〈ガチャ〉で【アリス】を引き当てろ!〗


 この文言が浮かび上がった後、その文字はすぐに消えてカプセルトイの球体部に文字ではなく写真のような一枚絵が浮かび上が――なっ!!?


「せっ……!?」


 乃亜を始め、僕ら全員はカプセルトイの方を見て思わず絶句した。


 何故ならそこに映し出されていたのは――


『なんで僕が女装して鎖に繋がれている映像なんだ……』


 青いワンピースに白いエプロン、ご丁寧に黒のロングヘア―のウイッグまで身に着けさせられており、もはやオリヴィアさんの事が他人事とは思えない状態にされていた。

 つまりめっちゃ恥ずい……! 目隠しされて人相が分かりづらいことだけが救いだろうか……。


『さあお前達、〈ガチャ〉を引くニャ!』

『【アリス】を引き当てた人に確定で【典正装備】が手に入るから、今まで活躍できなかった人にとっては最後のチャンスだよ』


 マジで!?


 ウサギがとんでもない事を言い出したせいで場の空気が若干ヒリついたのが伝わってきた。


 僕の女装姿というインパクトすら吹き飛ばすほどの特大の爆弾はあまりにも衝撃的で、それはこの2人にとって致命的だった。


「こうなったら〈ガチャ〉を回すしかないな。ガチャを引きたくなる欲求が増してくるらしいが、そんなもの私の鋼の精神で抑え込んでみせる」

「チッ、まさかここにきてこんなイベントが来るなんて……! 知っていたらミノタウロスであんなにポイントを使わなかったのに」


 オリヴィアさんとソフィアさんだ。

 この2人は【典正装備】を持っていない上に力への渇望が強い。

 そのせいで確実に手に入るという【アリス】ガチャはこの上なく魅力的に思えるだろう。


 そしてそう思うのは当然この2人だけではない。


「引くしかねえな。このビッグチャンス、乗らないわけにはいかねえぜ!」

「罠かもしれない。そう分かっていても引かずにはいられないわね」

「【典正装備】は俺が絶対手に入れてやるぜ!!」


 他の冒険者だって同様だ。

 冒険者なんてやっていればほとんどの人間は【典正装備】を欲しがるだろう。


 彼らも〈ガチャ〉が危険なものだとはキチンと伝わっているし、警告を無視した人間がどうなるかは分かっているはず。

 だけど【典正装備】なんて景品を目の前にぶら下げられて黙っていられる人間なんて……いや、ちょっと待って。


 おかしくない?

 いくら【典正装備】が手に入るからって、ここにいるほぼ全員が目の色を変えて〈ガチャ〉を回そうとはしないよね。


『なんでこんなにみんな〈ガチャ〉を回したがるんだ?』


 普通あれだけガチャ欲が増幅した結果、課金しすぎて死ぬのを目にしていたら多少は躊躇するものじゃないの?


『なんニャ? まだ気づかないのかニャ?』

『とっくの昔に気付いていてもおかしくない事だけど分からない?』

『えっ?』


 僕らの元にやってきた猫とウサギが、一仕事を終えたと言わんばかりに肩にタオルをかけたスタイルで僕の疑問に対して問いかけてきた。


 気づくっていったい何に……?


『一番初め、彼らがこの試練が始まった時に何をしたのか覚えてない?』


 そう言われてもな。

 えっと、何してたっけ?


「ルールの説明を聞いただけですよね?」

「そうね。それが一体何だって言うのよ?」


 だよね。乃亜や冬乃の言う通りそのくらいのはずだ。


『うんうん。じゃあその時何をしたかな?』


 ウサギが満足気に頷くと更に問いかけてきたので、僕らは思い出すように何をしたかを口に出していく。


『まずスマホを支給されたのです』

「その後スマホを起動させた、ね」

「……そして〈ガチャ〉をタップした」

「「「「『『あっ』』」」」」


 最初からすでに罠が仕掛けられていた!?


『随分気づくのが遅かったニャ』

『そう。君達はとっくの昔に〈ガチャ〉を回していたんだよ』

『たった1回ニャ。でもされど1回ニャ』

『そのたった1回の〈ガチャ〉で芽生えた欲は少しずつ大きくなる』

『お前達は【典正装備】にさほど執着していないせいで今はまだ〈ガチャ〉を率先して回そうとは思わないニャ』

『だけどそれも時間の問題。いずれは〈ガチャ〉を回したくてたまらなくなるよ』


 なんて最悪な試練だ……!

 まさかここまで悪辣に人のガチャ欲を手玉に取って殺しにくるだなんて誰が想像できるんだよ!?


 僕がこの試練を受けていたら間違いなく即死だった。


「ふはは。ソフィアは随分ポイントが少ないようだが果たしてそんなので【アリス】が引けるかな?」

「うるさい! HPはワタシが多いんだからその分課金が沢山できるから問題ない!」

「ちょっ、2人共止まってください!?」


 乃亜が必死に止めようとしているけど、オリヴィアさんもソフィアさんもスマホをタップする手は止めずにひたすら連打していて明らかに〈ガチャ〉を回しているのが分かる。


『くっ、こうなったらみんながガチャ欲に負けて課金しすぎて敵にやられるまえに、誰かが【アリス】さえ引いてくれれば生き残れるはず』


 そうなればいくら悪辣な試練でも目的の景品がすでに〈ガチャ〉から排出されれば、引く意味は失われる。

 ここまで来たらいち早く誰かが【アリス】を引き当てるのを祈るしかない。


『そう簡単に出ると思ってるのかニャ?』

『【アリス】は特効装備以上の価値だからね。当然排出率も低いものだよ』


 ウサギにそう言われ、乃亜達は〈ガチャ〉のヘルプをすぐさま確認しだした。

 アヤメが僕の近くに来てその排出率を僕にも見せてくれたが、そこに書かれている数字はゲーム会社なら倒産確定の絶望的な数字だった。


 0.0000000000000001%


 刹那の確率を引き当てないといけないのだから。


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて先行で投稿しています。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ウサギにそう言われ、乃亜達は〈ガチャ〉のヘルプすぐさま確認しだした。
[一言] もしかして文字通りの刹那?
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