22話 警告不可
「想像だにしなかった死に方をしたじゃないですかーーー!!!」
「「「『『うわっ!?』』」」」
わたしが思わず絶叫してしまい先輩達を驚かせてしまいましたが、あんなふざけた死に方をしたら叫ばずにはいられません!
『なっ、なんだニャ? 人の、もとい猫の説明は大人しく聞くものニャ』
『今からルール説明をするところなんだし、一度しか説明はしないから大人しくしていてね』
カプセルトイの所にある台座の上でウサギと猫が少し驚きつつ、こちらに注意してきました。
あっ、そうでした。
この世界に入ってすぐに現れたウサギと猫がこの世界のルールを説明すると言っていた時でしたっけ。
一度しか説明しないと言っていたので、このタイミングで[セーブ&ロード]を使っておいたんでした。
『どうしたの乃亜?』
「……[セーブ&ロード]が発動しました」
「えっ? それって確か死なないと発動しないものじゃなかったかしら?」
「はい冬乃先輩。わたしは、いえ、ここにいる人間のほとんどはこの試練中に死んだはずです」
あの強烈なガチャ欲に抗える人はまずいないでしょうから、間違いありません。
「とりあえず説明が終わった後に話しますから、たとえ何があっても自分から〈ガチャ〉を回す事だけはしないでください。特にオリヴィアさんは」
「「「『『ガチャ?』』」」」
「何故名指しなんだ?」
オリヴィアさんは首を傾げて不思議そうにしていますが、あなたが魔法少女のコスプレを嫌がって真っ先に〈ガチャ〉を回していましたからね。
そうして猫とウサギの説明が終わり、前回と変わらない状態となったので、やっぱりというか予想通りの行動をしだす人物がいた。
「今すぐ5回〈ガチャ〉するぞ! いつまでもこんな恰好でいられるか!」
前回と全く同じセリフを吐きながらスマホを操作しようとしていたので、すぐさまその手を掴んで〈ガチャ〉を回させないようにします。
魔法少女のコスプレが嫌なのは十分伝わってきますが、死ぬよりはマシなはずです。
「くっ、放せ高宮! こんな恰好屈辱以外の何物でもないぞ!」
「落ち着いてくださいオリヴィアさん。〈ガチャ〉を回せば死にますよ」
「……なんだと?」
オリヴィアさんが落ち着き力を抜いたので、わたしもその手を離しここにいる全員に向き直る。
この後一体何が起こるのかを説明するために。
≪蒼汰SIDE≫
「「「『『えぐっ……』』」」」
乃亜の話を聞いて全員がそうこぼさずにはいられなかった。
『そっか。そう言われてみればそうだったよね。ここ“強欲”と“傲慢”の魔女が関わっていたんだっけ』
直接干渉出来ないって言っていたせいで完全に意識から抜けていたよ。
まあ目の前の〈ガチャ〉に目がくらんだせいと言えばそれまでなんだけどさ。
でもちょっとずつ警戒を解いていって、一気に殺しにかかるとか鬼畜すぎでしょ。
「くっ、つまり私はこの格好でいなければいけないのか……!」
「まあそうだね。オリヴィアが死にたいのであれば別だけど、周囲はもっと酷い格好をしているんだし、その程度は甘んじて受けるべきじゃないかな?」
「貴様はこの様な恰好じゃないから言えるのだソフィア!」
「代わりに防具がないせいでダメージが多くなりそうなのが問題だよ」
割と〈ガチャ〉を回せないのは深刻だ。
なんせ武器か防具のどちらかしかない状況で敵を倒すのは難易度が跳ね上がるのだから。
何故やりたいわけじゃない縛りプレイをしなければいけないのか。
「でも、【魔女が紡ぐ物語】相手ならそれを攻略できる何かがある、はず?」
「咲夜さんに賛同ね。今までの【魔女が紡ぐ物語】も何かしら倒すためのギミックはあったわ。……まさか“強欲”と“傲慢”を気合で耐えるのが正攻法だったりしないわよね?」
冬乃は恐ろしい事言わないでよ。
増え続けるガチャ欲に耐えるだなんて、僕なら即落ち2コマじゃん。
『ところで他の人達を止めなくていいのです?』
アヤメが周囲の人達を見渡し、〈ガチャ〉を回している人達を指さしてきた。
『止められるのかな? でも一応警告だけしておこうか。〈ガチャ〉を回し過ぎると危ないよって』
まあ言うだけ言っておけばいいでしょ。
ガチャ欲が膨れ上がってきたなって自覚すれば、この世界から脱出しないと危ないと思ってもらえるかもしれないし。
そんな事を思っていた時だった。
――ピロン
「あれ? 〈ガチャ〉の画面に【!】のアイコンが付いた、ね。何が変わったのかな?」
「え? 前回はこのタイミングではそんな事は起きなかったはずなのですが……」
乃亜が困惑気にスマホを見ると、その目を見開いて驚愕の表情へと変わっていた。
「【煩悩の仏】特効ガチャ!? 前は戦闘のチュートリアルの後だったのに何故……?」
『それは君が試練の内容を知っているからさ』
乃亜の疑問に対し、答えてきたのはいつの間にかこちらに近づいて来ていたウサギだった。
『君が何故この後どうなるのか知っているのか知らないけど、知られてしまった以上対処するのは当然でしょ?』
『その通りにゃ。
もしもお前達が話していた通り、特効ガチャが出る前に〈ガチャ〉を回すのは危険だと言われたら誰も〈ガチャ〉を回さなくなってしまうニャ。
でも、特効ガチャが出た後だったら言われた方はどう思うかニャ?』
「……特効装備を引かれたくなくて言ってると思う」
オルガがそう呟くと大正解とでも言いたげに、機嫌よくウサギが飛び跳ねだした。
『そうだよね! だから本来ならこの世界のルールに少し慣れた後に出すはずだった特効ガチャを前倒しにしたってわけ』
『あとの問題はお前達ニャ。お前らだけはこの世界から逃がす訳にはいかないニャ。
今いるやつらは手遅れでも、次に外から入ってくる連中に事情を話して〈ガチャ〉を引かせないようにする、なんて事させられないからニャ』
『もしも無理にでも外に出ようとするのなら、この中の何人かは死ぬことになるのを覚悟してよね』
何も持っていなかったはずのウサギと猫の手には、乃亜達が持つのと同じスマホが構えられていた。
『『もしも外に出るつもりなら戦ってもらう事になる(よ)(ニャ)』』
気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。
カクヨム様にて先行で投稿しています。




