表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
7章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

325/677

32話 キミ、思ったより使えるよ

 

『ちっ、放しなさい!』


 謙信が腰にしがみついた僕をどかそうと腕を掴み――


 ――パンッ

 ――ボキッ


「ぐあああっ!!」


 上半身の服が吹き飛び、腕の骨が折れた。


『え、脆すぎじゃありませんか?』


 謙信に同情するような目で見降ろされており、先ほどまで激昂していたのが嘘のように今は逆にオロオロとしていた。


『いえ、あの、苦しめるつもりはありませんでしたよ。まさかここまで耐久に乏しい方がここにいるとは思わず、軽く掴んだつもりだったのですが2人分の武将と毘沙門天の力で思いの外強化されているせいで、その、ごめんなさい』


 敵に言い訳されるみたいに謝られていて少し悲しい。


 まぁこの怪我ならすぐに治るのだけど。

 僕の身体から一枚の白い半紙が突然飛び出してきて、それは瞬く間に黒く変わり燃え尽きて消滅していった。

 それと同時に折れたはずの腕の骨は繋がったのか痛みをもう感じない。


 〔穢れなき純白は(エナジードレイン )やがて漆黒に染まる(レスティテューション)〕のお陰だ。

 今まで乃亜達に守られていたし、[損傷衣転]でダメージを受ける機会は滅多になかったのでHPを回復するために使われる事はなく、せいぜい体力回復程度の役割だったけど今は凄い助かっている。


 もっともストックできる枚数が最大10枚で残り9回までしか回復できないが、それだけ時間が稼げるなら十分なはずだ。


『えっと、離していただけませんか。あなたでは私を止めるなど無理な事はわかっ……ふぁっ?!』


 ようやく効き始めたのか。

 これの性質上仕方ないとはいえ、早く効いて欲しいとドキドキしたよ。


『うっ、はぁはぁ、い、一体なにが……? 今の私には状態異常なんて、はぁはぁ、効かないはずなのに……!』


 謙信は自分の身体に起こった異変に戸惑っていた。

 効くかどうか運次第だし、すぐに外されるかもしれないと思っていたけどそうならなくて本当に良かった。


 〔緊縛こそ(ノーボンデージ)我が人生(ノーライフ)〕という名の紐。


 先ほど謙信が僕を白い縄で拘束しようとしてそれを無効化し、今謙信を苦しめているものの正体だ。


 ……産廃とか思ったりしてゴメンな。思ったより使えるよ。

 名前は相変わらず酷いけど。


 その紐で縛られている間は性欲が徐々に増幅してしまうデメリットがあり、拘束されなくなるメリットがある。

 そして今の謙信は先ほどまで僕に巻いていたものを跳び付いた時に、腰に巻きつけられたため、そのメリットとデメリットを抱えている状態な訳だ。


 謙信は状態異常に対して効かないはずだなんて言っているけれど、これに限っては状態異常とは言えないと思う。

 装備でたとえるなら最大HPを半分にする代わりに攻撃力を4倍にする剣があったとして、そのデメリットは状態異常に当てはまらないのと同じことのはずだ。


『あなたが原因……? は、離れて!』

「ぐあっ!」


 思わず手が出てしまったかのように振るわれた手は、明らかに虫でも軽く払う様な動作だったにも拘わらず、僕の身体はゴムボールのごとく弾き飛ばされ、何度も地面を転がって壁際に寝転がしていた信長(ローリー)の近くの壁に叩きつけられた。


「せん……ぱい……」

「蒼汰……」

「……蒼汰、君」


 乃亜達は自分達だってフラフラのはずなのに僕の心配をしてくれたのが聞こえてきた。


 派手に吹き飛ばされて全身が痛いけれど、〔穢れなき純白は(エナジードレイン )やがて漆黒に染まる(レスティテューション)〕のお陰で生きている。今のでストックされていた9枚中7枚消費したけれど。


『はぁはぁ、収まらない。一体私に何をしたの……!』


 そう言って足をふらつかせながら、僕に向かってその手に持つ槍を投げようとしてきた。

 〔穢れなき純白は(エナジードレイン )やがて漆黒に染まる(レスティテューション)〕は残り2枚しかないのにあの攻撃を受けて耐えきれる気がしない。ここまでか……。


『ふぁ~』


 そう思った時、横からアクビが聞こえてきた瞬間咄嗟に閃き、すぐさまただのスマホを取り出して電源をつけ画面を見ると同時に、近くにいた信長(ローリー)を掴んで盾にする。


『くっ……!』

『ふぇ?』


 信長(ローリー)の“怠惰”の力のせいで槍を投げそこなった謙信は、苦々し気な表情で下を向くと何かに気付いたかのようにハッとした表情になった。


『はぁはぁ、なに、この紐……? まさかコレなの?』


 気付かれてしまった。

 しかし気付かれたところで増幅した性欲は発散するか、時間が経たない限り収まらない。


『切れて……! はぁはぁ、身体の火照りが治まらないけど、これ以上酷くなることはなさそうですね……』


 槍で〔緊縛こそ(ノーボンデージ)我が人生(ノーライフ)〕を切ったけれど、息は荒くその姿は隙だらけだった。


「はっ!」

『ぐっ』


 いつの間にか亮さんが謙信の元まで来て、刀で斬りつけていた。

 しかし謙信は体をフラフラさせ隙だらけであったにも拘わらずそれに反応し、槍で受け止めていた。


「はぁ。情けないな。まだ学生の子達に助けられてしまったんだから」


 まるで自身のみっともなさを隠したいと言わんばかりに顔に手を当てて悔しそうにしている亮さんは、その負の感情を全て謙信へと叩きつけるがごとく強く睨みつけた。


「温存などと言っている場合じゃなかった。不調であってもその反応の良さ。なら今のこの絶好の機会に全力を尽くさなければ貴様を倒す機会など訪れないだろう」

『くっ、こんな時に……!』

「死ぬ気で足掻くといい。その足掻きを俺の全てで無に帰してやる。

 この身を喰らえ。〔未来永劫(フォーエバー)満たされぬ餌袋(ハングリー)飢餓自食(オートファジー)〕」


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。


カクヨム様にて1話先行で投稿しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うーんこの何らかの無効化能力がスマホについてそうなムーブ、俺が謙信なら勘違いしちゃうね
[気になる点] 性欲の発散って あのまま限界までしてたら人間を逆〇〇プ的な展開がきたの?てかデキるの?
[一言] 「もしもし?シリアスさん?手遅れ気味だけど来ていただくことはできます?」 「無理☆」ガチャ シリアスの欠片のない戦いだなぁwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ