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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
1章

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23話 スキルスロット

 

 初めてのゴブリンメイジとの戦闘後、僕らは軽く周囲を探索してゴブリンメイジを含んだ3体と邂逅したので戦ってみたけど、被害は僕の服が少し破れる程度で済んだ。

 高宮さんの服は僕が直せるしね。


「この調子なら4階層でも問題ないかな?」

「そうですね。珍しくゴブリンメイジの混ざった集団と相対しましたが、4階層では基本的にゴブリンメイジはソロで行動しています。

 5階層からゴブリンメイジの混ざった集団と遭遇するのが当たり前となりますが、たいして損害もなく戦えたので5階層でも十分活動できると思いますよ」

「高宮さんがそう言うなら明日は5階層に行ってみようか」


 1人が2人になっただけなのにここまで違うとは思わなかったよ。

 まだ僕のレベルは5で、ソロでなら3階層までが精々なのに、高宮さんと一緒なら5階層にまで行くことが出来るとは思わなかった。


 お互いのスキルがいい方向に作用しているのもあって、これならレベル上げの効率もさらに上がりそうだ。


「この調子ならレベルもすぐに上がるだろうからスキルの変質も早まりそうだね。高宮さんとパーティーが組めて本当に良かったよ」

「それはこっちのセリフですよ先輩。

 先輩のように服が使い物にならなくなっても対処できる方はほとんどいませんし、そもそもデメリットスキルのせいでレベルが最低でも10は上がらないと新しいスキルを覚えることはできませんから、パーティーを組もうと思ってくださる方なんて基本いませんし」

「……………えっ?」


 今、なんて言ったの?


「どうしましたか?」

「今、なんて言ったの?」

「先ほどの表情と全く同じですが、もしかして心の中で思ったことを言いました?」


 察しが良いね。


「えっと、服が使い物にならなくなっても対処できる方はほとんどいません?」

「その後」

「では、パーティーを組もうと思ってくださる方なんて基本いません?」

「わざとかな?」

「それじゃあやっぱり、レベルが最低でも10は上がらないと新しいスキルを覚えることはできません?」

「それ!」


 何それどういう事!?


「あれ、先輩知りませんでしたか? ユニークスキルやデメリットスキル持ち、いわゆるダンジョン外でスキルが生えた人たちは何故かレベル10以上からでないとスキルスロットが増えないんですよ」


 なん、だと……!


「ちなみにレベル10はあくまでも一番早くスキルスロットが増えた人の事例で、一番遅かった人はなんとレベル100になってからようやく増えたと言う報告があるそうです」

「噓でしょ!?」

「マジです。ただそのレベル100の人は元々強力なユニークスキルだったようなので別に困らなかったそうですけど」

「じゃ、じゃあ僕らのようなデメリットスキル持ちだといつ頃スキルスロットが増えるか分かる?」

「さあ?」

「さあ?!」

「なにせデメリットスキル持ちの情報って少ないですし、スキルスロットが増えたなんてわざわざその人が言わなければ伝わらないことですから」


 確かにユニークは100人に1人の割合だけど、デメリットスキルは1万人に1人しかいない。

 しかも僕らのようなどうしてもデメリットを解消したい人でなければ、デメリット持ちがわざわざダンジョンでレベルを上げようとしないことを考えるとほぼ検証されてないのでは……?


「デメリットスキルを得たとしても人によっては普通に生活できる人もいますからね。

 仮に他の人が先輩のスキルを得ても、ガチャ断ちが平気な人であればろくなスキルがないのに積極的にダンジョンに行こうとはしないでしょう。

 普通はそういった考えをする人が大多数となるので、その結果として情報が少なすぎてデメリットスキル持ちのスキルスロットがいつ増えるかはネットのどこにも見当たらなかったのでしょう」

「ま、マジ?」

「マジです」


 僕は思わず膝から崩れ落ちて地面に両手をついた。


「僕のスキルで今後どう戦えと……?」


 運が良ければレベル10でスキルスロットが増えるかもしれないけど、最悪レベル100以上になるまでスキルが増えないことを考えると絶望感が半端ない。

 今探索しているFランクの〔ゴブリンのダンジョン〕でレベルを100まで上げるのは不可能だ。

 精々レベル30でそこから先は何百、何千体と狩ってようやくレベルが1上がるだろうから、圧倒的に時間がかかり過ぎる。

 だけど上のランクのダンジョンに行くには戦闘系のスキルがない。詰んだ……。


「大丈夫です先輩。先輩は戦わずにわたしの後ろで応援していてください!」

「僕の存在価値!? それ完全に僕が高宮さんに寄生してるじゃん!」

「嫌なのですか?」

「年下の女の子に戦わせて何もせず後ろで見ているだけの男ってどう思う?」

「傍から見たら最低の一言ですね」

「だよね!」


 泣きたくなった。


「でも先輩が寄生している人ではないとわたしは知っていますから大丈夫です」

「高宮さん……。って、結局周囲に見られる目が痛いことに変わりないよ!」

「まあまあ先輩落ち着いてください。確かにスキルの種類は増えないでしょうが、今のスキルから派生スキルが生える可能性は十分あるので今後戦闘で使える派生スキルが手に入れば問題ないです」

「そっ、そうだよね。僕の考え過ぎだよね」

「ですです。わたしのスキルも[損傷衣転]だけでしたらまともに戦えませんでしたが、[重量装備]が増えてこの通り戦えるようになりました。なのでもしかしたら次に増える先輩の派生スキルは戦闘で使えるものが手に入るかもしれませんよ?」

「そうだね、ありがとう! ガチャだって回し続けなきゃ目的のものは手に入らないんだから、諦めたらだめだよね!」

「はいその意気です先輩!」


 しかし逆を言えば手に入るまでは、強い魔物と戦う事になったら本当に後ろで応援するだけの人になるような……?

 そんな嫌な考えに目を背け、僕は頑張ってレベルを上げようと強く思った。


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