表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/677

18話 取り込まれた生贄

 

「………」

「このみさん、大丈夫ですか?」


 このみさん以外の全員に今後の方針を納得してもらった丁度その時、このみさんがゆっくりと起き上がった。

 なので声をかけてみたのだけど返答は無く、キョロキョロと周囲を見渡し始めた。


 そしてピタリと視線が1箇所に固定された後、フラフラと立ち上がってその視線の向いていた先へと歩き出す。

 穂玖斗さんの方に向かって。


「……何で、何で私をあそこから連れ出した!!」


 このみさんは穂玖斗さんの胸ぐらを掴みながら怒声を上げていた。


「落ち着けこのみ」

「うるさい! 私は、私はあいつを……!」

「いいから落ち着け!!!」

「っ!」


 穂玖斗さんに一喝されたこのみさんは、ビクリと体を一瞬震わせ黙ってしまった。

 そのチャンスを逃さないようにするためか、穂玖斗さんはまくし立てるように話し出す。


「あの場に残って戦ったところで十中八九俺達は全滅していた。チームプレイなんて到底出来ないくらい動揺して冷静じゃなかった上に、あのミノタウロスはさっきまで倒したミノタウロスとは別格だ。

 ここにいるメンバーだけじゃ冷静だったとしても倒せねえよ」

「それでも、それでも私は――」

「あの牛を殺すんだろ? 返り討ちにあって殺されたら、鈴のやつの復讐も出来ねえぞ」

「……っ」


 このみさんは歯を強く食いしばりながら、ゆっくりと穂玖斗さんの胸ぐらを掴んでいた手を降ろすとストンっとその場に座り込んだ。


「このみ。今後の方針として、俺達は生きてる奴と出来る限り合流してからあのミノタウロスと戦う。それでいいな?」

「………………ええ」


 このみさんが激高した時、全員が黙ってそちらに注目していたため、このみさんが落ち着いたことで場がシーンっとなった。

 それを丁度いいと判断したのか、穂玖斗さんは全員を見回しながら話をし始める。


「さて、まずは基本方針だが、誰かあのミノタウロスを鑑定したやついるか?」


 あいにく僕はスキルスロットの空きがないので、[ソシャゲ・無課金]しかスキルがないんだよなー。

 まあ空きがあったら真っ先に戦闘系のスキルでも取ってるだろうけど。


 穂玖斗さんが色々な人に聞いて回ったところ、数人が[鑑定]を所持していて鑑定していたけど、その鑑定結果は残念ながら名前しか分からなかった。


 〈【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】:ミノタウロス〉


 もっとも、名前だけでも収穫があったと言える。

 ミノタウロスらしきものを2度倒した時までは誰も[鑑定]を持っていなくて分からなかったけど、後から合流した人でどちらのミノタウロスも鑑定をしていた人がいて、そちらの方の名前も判明している。


 〈取り込まれた生贄〉


 明らかに生贄にされた少年少女を示唆している上に、【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】とは記載がなかったようだ。

 なので、あの大樹のところにいたミノタウロスこそ倒すべき存在だと判明した訳だ。


 ちなみに大樹の方も鑑定したようだけど、そちらはただの木だったよう。

 あの木のどこかに【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】が潜んでいるのかとも思ったけれど、[気配感知]のスキルを持つ人が、あの場にいる生物はミノタウロス以外は僕らだけだと言っているのでそれも違うし。


 もしかして2体目の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】はこの迷宮の外にいるんだろうか?

 全く遭遇しないのでどちらかと言えばその可能性の方が高そうだけど、いつ来てもいいように警戒だけはしておかないといけないね。


「とりあえずまだ誰も遭遇していない2体目の【魔女が紡ぐ物語(クレイジーテラー)】は一先ず置いておこう。

 それよりも本体のミノタウロスの方だが、今すぐ再戦にはいかない」

「何故!?」

「何度も言ってるが落ち着けこのみ。

 言っただろ。()()()()は、って。

 本体の方のミノタウロス、あれを見て思ったんだが、傷1つついていなかったのはおかしいと思わないか?」


 先ほどのミノタウロスの姿を思い出すと、“取り込まれた生贄”より肌が少し黒いくらいで確かに怪我1つしてなかったと思う。


「いくら恵のやつの援護がなかったとはいえ、鈴のやつが少なくとも20人近い人間と一緒にいて、怪我の1つも負わせられなかったのはいくら何でもおかしい」

「……鈴なら[瞬動]や[斬撃強化]とかの強化系もいくつかあるから、少なくとも切り傷はつけてるはず」


 このみさんは先ほどよりもだいぶ落ち着いたのか、鈴さんの持っているスキルを静かな口調で挙げていく。


「考えられるのは人を食べる事で回復する、もしくは条件を満たさなければ傷を負わせられない、そのどちらかか、最悪両方の可能性があると見ている。

 単純に肌が頑丈なだけかもしれねえが、条件があると警戒しておいた方がいいだろう」

「条件って言うと、やっぱり短剣ですかね?」


 パッと思いつくのが、“取り込まれた生贄”からドロップした短剣だ。

 あれがミノタウロスを倒すための鍵じゃなかったら、何のためにドロップしてるのか疑問ですらある。


「やっぱりそうだろうな。そうなると“取り込まれた生贄”からドロップする短剣を出来る限り回収してから、本体であろうミノタウロスに挑みたいところだ」


 しかしそうなると、今まで偶然遭遇していた“取り込まれた生贄”を自分から見つけに行かないといけない訳だけど……。


「このどのくらい広いか見当もつかない迷宮で、どうやって探せばいいんだろ?」


気に入っていただけたらブクマと☆の評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさか、食べられてた被害者が……えげつない、えげつない。
[良い点] 命懸けの謎解きですね。 緊迫感があってとてもいいです。 [気になる点] 容赦なく犠牲者を出したので、やばい状況が読んでいてリアルに感じられた。 でも小説であるが故に、彼らの死をなかったこと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ