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ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~  作者: 甘井雨玉
5章

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6話 アイドルムーブ

 

「超絶かわいい!め・ぐ・み!」

「恵!恵!おーれーの!恵~!」

「はいせーの!ハーイハイ、ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」


 ここはダンジョンであってアイドルのコンサートではないはずなのだけど……。


 そこかしこから聞こえてくるコンサートのコールのような掛け声が響いてくる。

 大丈夫なのかな、この学校の生徒達?


「はっ、まさか矢沢さんのスキルには洗脳の効果が……」

「むしろあったなら良かったわねぇん」


 素で人を引き付けてしまった結果なのか。


「テンションが高まっててミミックを倒す勢いが凄い、ね。周囲にいたミミックが凄いペースでいなくなってる」

「まあ僕らは体力温存しておけばいいんじゃないかな?」


 咲夜が少し引いてるような雰囲気で、ドンドン駆逐されていくミミックを眺めていた。


「咲夜さんはあまり騒がしいのは好きじゃないの?」

「ううん。ただちょっと、人の熱にあてられてビックリしただけ」


 集団で熱狂している様を見るのに慣れてない人には、確かになんとも言えない気分になるかもしれない。

 僕だって少し浮足立つ様な気分というか、胃の中がグルグルするような変な気分になるのだから、あまり人と関わってこなかった咲夜は、よりそれを強く感じているのかな。


『みんな~盛り上がってるー?』

「「「ウオーーーーーー!!!」」」

『よーし、それじゃあ2曲目[鋼の意思と肉体で]いっちゃうぞ!』


 スピーカーから聞こえてくる矢沢さんの声。

 しかしその声に僕らは首を傾げずにはいられなかった。


「矢沢さん、なんかちょっとおかしくない?」

「そうですよね。今の矢沢さんは何と言うか、ちょっとかわい子ぶってる女の子的な感じがします」


 乃亜の発言が的を射ていて、僕らはそれに頷いていた。


「会長がスキル使うと~、何故か口調がアイドルムーブになるみたい~。使い終わった後はいつも凹んでるよ~」


 女装だけでもデメリットなのに、スキルを使ってもデメリットが起こるとか切なすぎる。

 このみさんの話を聞いて、矢沢さんに同情せざるを得なかった。


「それにしてもあのスキル、バフがどのくらい持つのかしら?

 1曲目に受けたバフの効果はまだ続いていると思うけど」

「会長が歌ってる間はずっとかな~。1曲目が終わっても2曲目、3曲目と続いていたら~、その間はずっと1曲目で受けた効果が続くよ~」

「矢沢さんの喉がつぶれない限りは延々と効果が持続するんですか」


 僕はあまりの効果時間の長さに驚いていたら、和泉さんは首を横に振った。


「正確に言うなら、バフだけ恵の()()()が続く限り効果が持続するわねぇん」

「あ~言われてみればそうだね~」

「仲間のスキルくらいキチンと把握して姉さん。あの派生スキルを使う機会は滅多にないから分からなくないけど」


 ライブとは一体?

 そう思って聞こうとした時だった。


 ――ドガンッ!


 壁を壊して現れた巨大なロボミミック。

 ミミック達が集合して1つの塊になっているようで、そこかしこに牙の生えた口が開いていた。


「59階層だとあんなヒーローもののロボットみたいなのも出てくるのか」

「それはない。あんなのが出てくるのはもっと下の階層で、今の階層には出ないはず」


 鈴さんが淡々と説明してくれるけど、そんな下の階層のミミックがここにいるのはかなりマズイ事では?


「はぐれってやつかな~? ごくたまに別の階層の魔物が出てくるんだけど珍しいね~」

「しょうがないわねん。こうなったらあたしが行くわ」


 和泉さんが颯爽とロボミミックへと駆けていくけど、あんな3階建ての建物くらい大きなもの相手にどうする気なんだろうか?


『頑張れケイー! 3曲目[こっち見ちゃヤダ!]』

「うふふ、ナイスタイミングよん」


 矢沢さんが歌い始めると、何故かロボミミックは全体的に動きがかなりぎこちなくなった。

 今度はどんな効果の歌なんだろうか?


「[こっち見ちゃヤダ!]は敵の視線誘導。文字通り会長のいる方向に視線を向けられなくなるスキル」


 強くないかな?

 視線が向けられないって、地味に厄介だよね?


 あのミミック達に視界というのがあった事にも驚きだけど。

 ロボミミックはミミックの集合体だから、ロボのあっちこっちで視線を向けないようにした結果、動かせる範囲が狭くなってしまったんだろう。


「一撃で決めるわよん!」


 あれだけ集合しているミミック達相手に一撃って、どうするつもりなんだろう?


 和泉さんは走る勢いを緩めず、そのままロボミミックの腹部へと跳躍して拳を振りかぶった。


「喰らいなさい、[ラブ・インパクト]!」


 なんか凄い名前のスキルを使った!?


 放たれた拳がロボミミックのお腹に当たると、まるで衝撃が全身に伝播し、全てのミミックが砕けて落ちてしまった。


「[ラブ・インパクト]は本来不人気商品のスキル。想いの強さで攻撃力と攻撃範囲が変動するスキルで、効果が不安定なのが理由。

 ケイがこのスキルを買ってきた時はどうしたものかと思ったけど、何故か普通に使いこなせてる。

 本人曰く「乙女は心も自由自在なのよん」。意味が分からない」


 確かに意味が分からない。

 あと乙女じゃないし。

 なんだか理不尽な者を見たような気分になった。


 しかしそんな悠長な事を考えている余裕は一瞬で無くなった。

 なぜなら、ロボミミックが現れた時以上の衝撃が僕らを襲ったのだから。


『ケケケケケ!』


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― 新着の感想 ―
[一言] ライヴが続く限り…ということはスキルが認識するかにもよるけど、ユニットを組んで歌いまわすことでライヴ時間を延ばすとともに負担を軽減できる可能性…? そういえばチーム編成なんてスキルが…
[一言] ガチャ・ラブインパクト
[一言] ラブインパクト、片瀬さんが使ったら威力めちゃくちゃ高そう。
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