30話 智弘さん達のスキル
「ボクのスキルは説明が長くなるから、先に他の3人のスキルを説明しようか」
そう言って智弘さんは他の3人のユニークスキルを説明してくれた。
・海晴さん
[森人化 (エルフ)]:体がエルフの姿になる。
派生スキル[木魔法]:木属性の魔法を操れる。
派生スキル[ダーク化]:エルフ(魔法遠距離型)からダークエルフ(物理接近型)に肉体が変質する。
・雄介さん
[性質付与]:右手で触れた物の性質を左手に与えることが出来る。
・省吾さん
[城壁生成]:10メートルの高さまでの城壁を生成できる。ただし作成した城壁の後ろにいないと城壁は消失する。
「どれも変わったユニークスキルですね」
「君のスキルほどではないと思うな」
「「「確かに(コクコク)」」」
全員に頷かれてしまった。
僕だって好きであんなスキルではないんだけどな。
「蒼汰のスキルはともかく、雄介の[性質付与]の効果がいまいち分からねえんだが、性質を与えるってどういう事だ?」
「分かりやすい例えで言えば、武器に風属性を与えるといったものでござるな。模擬戦では〔突風〕の魔道具を右手で触れ、左手の手裏剣に風の性質を与えていたでござる。
その手裏剣を投げると風を纏う手裏剣となり、速度と切り裂く威力が上昇するのでござる」
「へー、応用が効いて便利なスキルだな」
「しかし仮にマッチと火炎放射器で比べると、火炎放射器の方がより与える性質の効果が上昇するでござるから、魔道具手に入れるまではかなり苦労したでござるがな」
なるほどね。いらない魔道具を手に入れた際に連絡が欲しいのはこのためか。
僕らには必要なくても雄介さんにとっては有効活用できるから、買い取りたいと言っていたのにも凄い納得がいくね。
「それじゃあ最後にボクのスキルだ」
「[スキルデッキ]でしたよね?」
「何と言うかカードゲームみてえなスキルだな」
「あ~、あながち間違いじゃないね」
・智弘さん
[スキルデッキ]:1回の戦闘中に40枚までスキルカードを使用できる。
スキルにはレア度が存在し、N,R,SR,UR,LRの5種類ある。それぞれ発動条件が――
N:1ターンにつき1枚
R:1ターンにつき1枚&手札のカードを1枚生贄にして発動
SR:1ターンにつき1枚&手札のカードを2枚生贄にして発動
UR:1ターンにつき1枚&手札のカードを3枚生贄にして発動
LR:1ターンにつき1枚&手札のカードを4枚生贄にして発動
1ターンは相手が20歩以上の移動、もしくは1回の攻撃行動を1ターンとする。
ただし相手が連続で攻撃などしてきて、自身が[スキルデッキ]の効果を使用してない場合、その分だけターンが増える事はなく、行動しないで1ターンが終わったことになる。
派生スキル[カード化]:自身が所持しているアイテムをスキルカードに換えることが出来る。スキルの効果はランダムとなり、カードのレア度は変換したアイテムの価値に依存する。
「ごく一部だけど簡単に言えばこんな感じかな」
「誰よりも長く話してくれたのに、これで一部なんですか」
「全部話してたら長くなるから簡潔にね」
模擬戦ではポンポンと派生スキルを使いまくってたから、確かにその一部と言える。
まあ説明してもらわなくても名前で能力が十分分かるし、これ以上は下手したら就寝時間になりそうだから別にいいけど。
「今[カード化]について説明したけど、いらない魔道具が欲しいのは雄介の為だけじゃなくて、ボクの為でもあるんだ。
なんせこの[カード化]は現金を変換しても、1000円や1万円じゃ紙切れ程度の価値しかないと判断されてNのスキルしか手に入らないんだ。
しかも狙ったスキルが手に入る訳ではなく、毎回ランダムで同じスキルがかぶったりするから、模擬戦の時の様にスキルを潤沢に行使することが出来るようになるには、かなり魔道具を買う事になったよ」
安い魔道具でも数万することを考えると、かなり大変だったんじゃないかな?
「Nレベルなら、その辺のいらない物を適当に変換すればいいんだけど、R以上は何万とする物じゃないと出てこないんだ。
特にURなんてまだ3枚しか手に入ってないし、LRだって1枚しか持ってないし」
「カードの種類が多ければ多いほど、戦力に直結するなら、そりゃどんな魔道具でも欲しいですよね」
「そうなんだ。正直自分が得ている金銭の大半は[カード化]に費やしてるから、安く手に入るなら何だってありがたいよ」
とんでもなく金の食うスキルだ。
カードゲームってお金がかかるけど、スキルまでお金がかからなくてもいいんじゃないかと思うよ。
「でもそれなら何でこの学校に来なかったんですか? 転入して〔ミミックのダンジョン〕に潜れれば、魔道具、下手すればアーティーファクトが手に入るでしょうに」
僕がそう問いかけると、智弘さんはスンっと表情が無になる。
「親が許してくれなかった」
「「「分かる」」」
僕以外の全員が智弘さんの言葉に深く頷いていた。
「私立で金がかかる」
「危ないからやめとけ」
「ハーレムとかアホな事言ってないで普通の学校通っとけ」
「まず彼女作ってからハーレム作るとか言えよ」
「ダンジョンで学費を稼ぐ? 普通の学校でもダンジョンにはいけるだろ」
「夢を見るな。現実を見ろ」
「「「親の説得に失敗したんだチクショウ!!」」」
口々に親が拒否した理由を、いつもの語尾も忘れて淡々と言い連ねると、机を叩いて全員が口をそろえて嘆いていた。
「だから転入してなかったんだ」
「そうなんだ。だから今回の留学の話は本当に渡りに船だったさ」
「なのに今日ダンジョンに入れなかったのはかなり痛かったぜ。明日はぜってー門限は守るようにしねえとな」
全員がうんうんと頷き、苦い表情をしていた。
学校側はこういう考えになるのを狙っていたのだから、今日ダンジョンに入れなかったのは正しかったんだろう。
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