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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
戦いの終わり 本土への帰還
98/112

第97話訓練の日々③

なんかゆっくり目な話です

「もっときびきび動け!」

伊400の甲板上に副長の声が響く。

今は、急速潜行の訓練中である。

この訓練の目的は、急速潜行に掛かる時間を短縮し、艦が敵の攻撃から生き延びる確率を上げる事にある。

確かに機械的なところもあるが、大体標準秒時から10秒は訓練によって縮めることができる。

即ち、伊400の急速潜行秒時が60秒のため大体50秒までは短縮できると言っていいだろう。

「急げ!」

そう言いつつ、対空砲要員がラッタルを駆け下っていく。

この艦には、3基の25ミリ3連装機銃が搭載されている。

3連装機銃の場合、1基につき9人が付いているから、3基で27人の対空砲要員がいることになる。

だから彼らがいかに速く、艦内に滑り込めるかが重要なことでもあるのだ。

また、今日の訓練では、動きの確認のみを行う事になっている。

そのため、桟橋に係留された状態になっていた。

「今のタイムは、40秒だ。あと5秒は縮めろ。」

副長が淡々という。

すべての動作を、まだ実際にやったわけではないが、全員が艦内に滑り込んだからといっても直ぐに、水没することは出来ない。

ある程度の時間が必要になる。

ただし、対空砲要員が持ち場につく場面は限られている為、実際にはもっと早くなるだろう。

どういう事か、彼らが持ち場の機銃につく時は即座に急速潜行を掛けられない、晴嵐の発進、収容の時だけだからである。

それ以外の時は、あまり長時間浮上しないことに加え、急速潜行へと即座に移れるように甲板上にいる人数は少ない事が理想であるため、持ち場につく事は無いのだ。

しかし、もしもの可能性がある為彼らが訓練を行わないということはない。

「次は、対空砲要員を除いてやるか?」

艦長が副長に聞いた。

「そちらの時間も取りたいので、やりましょう。」

その一言で、すぐに決まった。

とは言っても、20〜25人程度の乗員が甲板上にいる事を前提にしてのことである。

そう、対空砲要員が居ないとしても、その他の作業がある為このぐらいの人員がいるのである。

「始めっ!」

副長の声が響く。

それと同時に、短距離走のように乗員が一斉に走り出す。

まあ、1人がラッタルを掴み下り始める時間が0、5秒とするとおおよそ、13秒で終わるが、向かうまでの時間などがある為20秒ぐらいが標準的なタイムとなる。

だが、25秒ぐらいを標準時間とするのが無難と言える。それは、誤差や人員の配置によって5秒などは簡単に過ぎてしまうからである。

こういうタイムは、最短時間でなくマージンを含めた時間で考える必要があるのである。

「これで終わりだ!」

その声と同時にハッチが閉められる。

「今回は、26秒だ。少し遅かったな。ハッチの閉鎖に戸惑ったか?」

「そうです。」

ハッチの担当兵が言った。

「ならば、最高で30秒は見込まないといけないな。」

「ですね。もっと短縮できると考えられますが、実際にはこのくらいに考えたほうが良さそうですね。」

「そうだな。」

まあ、マージンを含めるのだから、当然だろう。

「もう一度だ!」


「やってますね。」

格納等の中で、中瀬飛行兵曹が言った。

「まあ、自分たちも遠からずやる事になるがな。」

そう、当然ながら航空隊の面々も急速潜行の訓練を受けるのだ。

「かったるいですね・・・」

「そう言うな。明日になれば飛ばせるんだからな。」

「そうですけどね。」

「まあ、操縦は俺がやるがな。」

操縦は、機長の生野中尉直々に行うのだ。

今航空隊の面々は、発動機始動の試験を行っていた。なぜかは、今まで修理が行われており発動機の試運転を行っていなかったからである。

「行くぞ!」

整備員がその合図とともに、イナーシャスターターを回し始める。日本語で言うと慣性始動機である。

簡単に言えば、エンジンを回転させて、ある程度の速さになったらエンジンのスイッチを入れ始動させるのである。

同時期のアメリカ軍では、電気を使ったセルフスターターで、エンジンを始動させていた。

だが、日本では技術的な問題や、おそらく、そもそもの資材不足もあったために使用されてなかった。

要は、単純な方がいいということである。

「メインスイッチオン!」

生野中尉が叫びながら、発動機の電源を入れる。

すると、プラグに電気が通り、配管を伝って燃料が流れ込む。

ブロロという音と共に、発動機が始動した。

しっかりと整備を行ってきたからだろう。2週間近くぶりの始動だったが、しっかりと作動していた。

鳥野上等飛行兵長の機体の発動機も無事回っていた。

「これなら、明日の飛行訓練も問題なさそうですね。」

中瀬飛行兵曹が言った。

「ああ、安心して飛べるな。だがまあ、明日になってみないと分からないがな。」

「それはそうですけど、今回ってるということが重要なんですよ。」

「気分的にか?」

「そうですね。」

「まあ、緊張して寝れないなんてことが無いようにしろよ?」

「子供じゃないですから、大丈夫ですよ!」

中瀬飛行兵曹が、半分怒ったように言った。

「まあ今日はこれ以上やることと言ったら、機体の整備だけだからな。気を抜け。」

「分かりましたよ。」

こうして1日がまた過ぎていった。

第97話完


急速潜行訓練の話でした

実際伊400の急速潜行秒時速いんですよね

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