第75話戦況分析
新編突入です
セレター港港湾部部長佐伯中佐は、部長室で今後の戦局の展望に就て、考えていた。
「呉は空襲で、壊滅したか・・」
彼に手には、呉空襲の確定報告の電文が握られていた。
港湾部の部長という立場で戦局について考えたところで出来ることはないが、港湾部に所属する人員の戦局悪化による、動揺を鎮めることぐらいはできる。
戦局が悪化していることは、シンガポールでは部長職以下には秘匿されるようになされていたが、少しずつ漏れ伝わっていたのだ。
「今後はいかに反乱を起こさせないか・・・」
シンガポールは現地雇用者が多いため、反乱がいつ起こってもおかしくは無かったのだ。
確かに、シンガポールはまだ戦火に巻き込まれていなかったが、港内には大破した、「妙高」「高雄」2隻の艨艟の姿があり、いつ戦火に巻き込まれてもおかしくないのではないかという、空気があった事は事実である。
だがそれが、大っぴらなものになっていなかったのは、情報が少なかったからである。
だが、呉空襲の情報はなぜか、はっきりとした情報として伝わってはいないものの、連合艦隊が大きな被害を受けたらしいということは、広がってしまっていた。
「ふう・・」
彼がため息をついた時に、ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ。」
そう彼は、短く言った。
「今日は。」
「今日はどうなされたのですか?」
彼は内心焦っていたが、それをなんとか取り繕い答えた。
「少し内密で話したいことがありまして。佐伯部長はもう知ってるとは思いますが・・」
日下中佐が言いかけている時、佐伯中佐が割り込むようにだが、確信を持って言った。
「呉の空襲のことですか?」
「やはり、ご存じでしたか。」
知ってて当然だろうなと思いながら言った。
「その事についての話なんですが伊400の艦内では、工事中なのでいつ聞かれてるか、油断できないのでこちらに伺ったと言った次第です。」
確かに、機密に近いものを聞かれて良いことは無いからな。妥当な判断か・・。
佐伯中佐は内心でそう考えた。
「で、相談とはなんですか?」
「ええ、急速な戦局悪化に伴い、伊400の出港を早めるか否かについてです。」
確かに、聞かれたらまずい話題だな。
「なるほど、確かに内密にする必要がありますね。」
「私としては、修理を完全な物にするため、早めないほうがいいと思っています。」
今まで、黙っていた長原技術少佐が言った。
これは、どうしたもんかな。下手なことは言えんし、技術少佐に同調するのが、無難かな。
「私も、完全を期した方がいいと思います。」
「確かに、工事の完全を期するなら、それでいいと思う。だが、いつシンガポールが攻撃されるか分からない現状で、それはどう転ぶかわからない選択だと思う。」
佐伯中佐は日下中佐の言わんとしている事を、察した。
なるほど、伊400を沈めるわけにはいかないか。
だから、戦局についてと言ったのか。
「確かにそうかもしれませんが、出港したら沈んでしまったという方が不味いんじゃ無いですか?」
「まあ、そうなんだがな。何が起こるか分からないではないか。」
「敵機動部隊が来るとしても、まだ先だと考えます。」
「その根拠は?」
「単純ですよ。あなた方がパナマ運河を破壊したために、補給が滞っているんですよ。
しかも、呉空襲では殆ど全力を出したみたいですし、乗員の休養も合わせてとるんでは無いですか?」
最後が、疑問系になってるのはともかく、彼の言いたいことはこうだ。
補給が来なければ、機動部隊も動けないただそれだけである。
たしかに、休養は必要だからな。だが、10日まで来ないという保証はないぞ?」
「でしたら、訓練期間を短縮して9日に出港することにすれば、良いのではないですか?」
「そういう考え方もあるな。」
伊400の修理完了後、艦に慣れるために5日の訓練期間を設けていたのだが、それを1日だが減らしては、どうかという提案だったのだ。
「だが、乗員が艦に慣れきれるかに不安が残るな。
工期を短縮するよりは、現実的だとは思うが。」
彼らが、こんな事を考えているのは、中部太平洋から北太平洋にかけて日本軍が、殲滅されていたからである。
今日本軍が占領しているのは、シンガポールを含めた印度支那と大陸方面だけだったのだ。
だから、いつシンガポールに敵が襲来しても、おかしくない状況だったのだ。
「ただ、敵が来ないということも、考えられると思いますが。」
佐伯中佐が言った。
「どういう事だ?」
「敵は、比島やサイパン沖縄とすでに本土に直接攻撃を掛けるのに十分な基地を持っていますし、現に本土空襲を実行しています。ですから、驚異度の低いシンガポールにわざわざ来ないのではないですか?日本が降伏すればそれで手にがいるんですから、無用な損害を出しには来ないのでは無いですかね。」
「確かに、シンガポールを取っても取らなくても、戦局に影響は無いからな。無用な損害は避けてくるか。トラックのように。」
日本軍がソロモン諸島で一大拠点として使用おり、守備兵力も大きかったたトラック島を、米軍はスルーしエニウェトク環礁に向かったことからもわかる。
この作戦では、防御の厚いトラック島の後方基地を占領することによって、物資の輸送を切断することによって、無力化することを狙ったのである。
この作戦によって、ソロモン諸島での日本軍は存在しないも同様になってしまった。
なぜなら、物資がないため偵察すらも行えなかったからである。
第75話完
今回は、伊400の修理の話でした
これからどうなるのか?
主役は、何になるのか?
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