第70話連合艦隊の終焉14
そろそろ終わりが・・見えます?
最後の攻撃は、突如としてやって来た。
「敵機直上!」
「なに!」
「撃て!」
榛名上空に突如として敵機が現れ、緩降下爆撃を仕掛けてきたのである。
榛名の対空砲が、ありったけの力を出して撃ちまくる。だが被弾により大きくその火力を減じていた、榛名が防ぐことはできなかった。
「撃ちまくれ!」
右舷側の砲もなんとか艦を守ろうと、艦を真っ赤に染めて、撃ちまくる。
だが、左舷からくる敵には威嚇ほどの効果もなかった。
「これで終わりだ!」
徹底的に不意打ちにこだわった甲斐があったぜ。
上手く連中が気を抜いたときに、攻撃を仕掛けられたな。
「まだ、右舷側は無傷なのか。」
右舷側から、撃ち上げられる曳光弾が作る光の幕を見て、そう呟いていた。
ある種幻想的な光景であったが、それを気にしてる暇はない。
今は、今は幻想的な光景を作り出したやつに、引導を渡すのが先決だ。
「付いてきてるか?」
「 大丈夫ですよ。」
「このまま突っ込むぞ!」
「いけますよ!」
「彼奴を沈めた、戦功は俺が貰ってやるぜ!」
「総員対衝撃態勢取れ!」
艦長が、艦内にいる者に対し言った。
「拙いですね。ようやく浸水を食い止められ始めたというのに。」
「ああ、まさか奇襲をこの段階で仕掛けてくるような、頭の切れる奴がいたとはな。正直言って意外だった。これは、俺の油断だ。」
艦長が一気に言い切った。
「艦長のせいではありません!全ては、油断して見張りを怠っていた、自分等見張り員の責任です!」
「今は、責任問題を持ち出すな!艦の保全に全力を尽くせ!」
「了解です!」
「行けーーー!」
俺は叫びながら、目標に突っ込んでいく。
「そろそろです!」
「600」
「撃てー!」
爆弾を放った瞬間には、期待の引き起こしにかかる。
そうしないと、海に突っ込んじまうからな。
「ダメだ!命中する!」
誰かが、そう叫んだ時だった。榛名は今まで、4発の500キロ爆弾の直撃を喰らい、2発の12センチロケット弾も喰らっていた。
そして今、榛名に今日最後の命中弾である5発目の500キロ爆弾が、命中した。
この爆弾は、艦の後部気味のところに命中し、難なく最上甲板の装甲を突き破って、艦内で炸裂した。
それによって、ようやく食い止められつつあった浸水が、再び進行し始めた。
さらには、左舷後部側の対空砲を全滅させたのである。
それによって、もはや左舷側に有効な対空射撃を期待することは、出来なくなってしまった。
「やったぞ!これで奴も終わりだ!」
「やりましたね!」
これで、奴も沈むはずだ。
今まであいつが見せてきた、驚異的な粘りもこれで終わりだ。
「帰還するぞ!」
「そうですね。」
「攻撃は、大成功です!」
第38任務部隊旗艦ミズーリの戦闘指揮所(CIC)に、通信士の喜びに満ちた報告が響いた。
「攻撃は、成功だ!前回のリベンジ成功だ!」
第38任務部隊司令長官ウィリアムハルゼー大将がCICにる、全員に聞こえるように言った。
彼は、攻撃隊が発艦し出撃するのを見送った後、本来の居場所である、CICに戻っていたのだ。
「これで、ジャップの連合艦隊は壊滅しましたね!」
参謀長、ロバートカーニー少将が言った。
「ああ!これであとは、横須賀のナガトだけだぜ!」
「ただ、撃ち漏らしがあるかもしれませんが?」
「いや、戦艦さえ全滅させれば上陸作戦に支障は出ない。だったら、ちっさい目標よりも、大きい目標をぶっ潰したほうがいいだろう?」
「確かに、空母とかが残っていても、我が任務部隊の敵ではないですからね。。」
「そういう事だ。だが、今は一旦後退して補給をしなければ、いかん。」
第38任務部隊は今度重なる出撃によって、燃料や弾薬の残量が心許なくなってきていたのだ。
「注水急げ!艦を水平にさえ保てれば、転覆しなくて済むぞ!」
艦橋からは、すでに転覆してしまっている空母天城が、望見できた。
いくら浅瀬だからといって、転覆するのと着底するのとでは、着底の方が乗員や艦の被害が少なく済むのは、皆わかっていた。
転覆してしまえば、その傾斜によって逃げることが難しくなるからである。
「いいか、ここで浸水を食い止めるんだ!」
そう言って、彼を筆頭に応急班の面々は、機関室の緩んだ隔壁に、補強の角材を押し当て、防水作業に取り掛かった。
そうしなければ、浸水が進み転覆してしまうだろう。
そう皆が思っていたため、全力で作業にあたっていた。
俺らがやらずして、誰がやるんだ!
そういう思いもあった。
榛名の艦内では、乗員総員が自分ができる作業にあたっていた。
「拙いな。ここが踏ん張りどころだが・・・」
「艦長が自信を持たないで、どうするんですか!」
「ああ、そうだな。」
吉村艦長は今日の空襲によって、精神的にかなり参っていた。
「総員聞け!ここが、本艦が転覆するか着底するかの踏ん張りどころだ!水平に艦の傾斜を近づけるんだ!」
艦長の気迫のこもった放送が響く。
「やってやらあ!艦長の期待に応えるんだ!」
応急班の面々から、叫び声が上がった。
まだ榛名は、最後の力を振り絞って浮かんでいた。
第70話完
榛名の命運もここまで?
73話まで書き終わってますが、おそらくそこで終わります
呉空襲編が
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